ヨルシカ『盗作』歌詞の意味を考察・解釈

「音楽の切っ掛けは何だっけ。
父の持つレコードだったかな。
音を聞くことは気持ちが良い。
聞くだけなら努力もいらない。

前置きはいいから話そう。
ある時、思い付いたんだ。
この歌が僕の物になれば、この穴は埋まるだろうか。

だから、僕は盗んだ」

嗚呼、まだ足りない。全部足りない。
何一つも満たされない。
このまま一人じゃあ僕は生きられない。
もっと知りたい。愛を知りたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。

「ある時に、街を流れる歌が僕の曲だってことに気が付いた。
売れたなんて当たり前さ。
名作を盗んだものだからさぁ!

彼奴も馬鹿だ。こいつも馬鹿だ。
褒めちぎる奴等は皆馬鹿だ。
群がる烏合の衆、本当の価値なんてわからずに。
まぁ、それは僕も同じか」

嗚呼、何かが足りない。
これだけ盗んだのに少しも満たされない。
上面の言葉一つじゃ満たされない。
愛が知りたい。金が足りない。
この妬みを満たすくらい美しいものを知りたい。

「音楽の切っ掛けが何なのか、今じゃもう忘れちまったが欲じゃないことは覚えてる。
何か綺麗なものだったな。

化けの皮なんていつか剥がれる。
見向きもされない夜が来る。
その時に見られる景色が心底楽しみで。

そうだ。
何一つもなくなって、地位も愛も全部なくなって。
何もかも失った後に見える夜は本当に綺麗だろうから、本当に、本当に綺麗だろうから、

僕は盗んだ」

嗚呼、まだ足りない。もっと書きたい。
こんな詩じゃ満たされない。
君らの罵倒じゃあ僕は満たされない。
まだ知らない愛を書きたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。

まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。僕は足りない。
ずっと足りないものがわからない。
まだ足りない。もっと知りたい。
この身体を溶かすくらい美しい夜を知りたい。

ヨルシカ『盗作』の概要

今回は人気ロックバンドであるヨルシカの楽曲『盗作』の歌詞考察をしていきたいと思います。

今作から伝わってくるメッセージは――

・飢え乾く美的感覚

・価値を付すのは自分

上記の点をメインに考察していきますのでどうぞ最後までお付き合いください。

2020年7月22日に『盗作』のOFFICIAL VIDEOがネット上で公開されました。
公開から僅か2時間で15万を超える動画再生回数を記録しています。

また今作は、同年7月29日リリースとなる ヨルシカ 3rd Full Album「盗作」 の表題曲となっています。

今作について動画説明欄には次のようなコンセプトがコメントされていました。

俺は泥棒である。 往古来今、多様な泥棒が居るが、俺は奴等とは少し違う。 金を盗む訳では無い。骨董品宝石その他価値ある美術の類にも、とんと興味が無い。 俺は、音を盗む泥棒である。 それはメロディかもしれない。装飾音かもしれない。詩かもしれない。コード、リズムトラック、楽器の編成や音の嗜好なのかもしれない。また、何も盗んでいないのかもしれない。この音楽達からそれを見つけるのもいい。糾弾することも許される。 客観的な事実だけなら、現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ。意図的か非意図的かなど心持ちでしかない。メロディのパターンもコード進行も、とうの昔に出尽くしている。 それでも、作品の価値は他者からの評価に依存しない。盗んだ、盗んでないなどはただの情報でしかない。本当の価値はそこにない。ただ一聴して、一見して美しいと思った感覚だけが、君の人生にとっての、その作品の価値を決める。 「盗作品」が作品足り得ないなど、誰が決めたのだろう。 俺は泥棒である。

https://www.youtube.com/watch?v=CS4f3jawFxY

コメントを見ると今作の主人公が比喩的な意味で「泥棒」と呼ばれています。

彼の音楽作品への概念は「何かをあるいは誰かを模倣していない完全オリジナルな作品はない」というものだと考えられます。

さらに「安易に『盗作』とレッテルを貼るのではなく、そこに自身が美しさを見出せるかどうかに価値がある」という考えも抱いているようです。

ですから記事冒頭でも述べたように今作『盗作』では、主人公が「飢え乾く美的感覚」を満たそうとする様子と 「価値を付すのは自分」であるという考えを伝えていると解釈しました。

MVにも注目してみましょう。

一人の男性が主人公となり、彼の音楽への向き合い方が物語り形式で映し出されています。

彼がレコードに触れているシーンや楽器が破壊されていくシーンから、初めて音楽に触れたときの気持ちや、音楽と向き合えなくなっていく様子が伝わってきました。

それではさっそく気になるタイトルや歌詞全体の意味を考察していきましょう。

『盗作』の意味とは

『盗作』とは

「人の作品の全部または一部をそのまま自分のものとして使うこと」

驚きなのがグーグルで 盗作 と打つと本来の意味を説明しているサイトより、ヨルシカ作品が上に来るですね(さすが)

筆者が気になったのは前述のコメントでも述べられていた

「また、何も盗んでいないのかもしれない」という1つの可能性です。

ここから主人公が比喩的な意味の泥棒であり「盗作」も本来の意味だけではないと考えました。

『盗作』本来の意味から次のような彼の概念を読み取れるかもしれません。

「人の作品の全部または一部を自分のものとして使う行為を『盗作』と呼ぶ。
それも結構。だが、大事なのは自分が直向に音楽と向き合い自身の美的感覚を満たせるかどうかである」

筆者はこのような彼の概念をタイトルから感じ取りました。

『盗作』歌詞の意味

最初の盗作

「音楽の切っ掛けは何だっけ。
父の持つレコードだったかな。
音を聞くことは気持ちが良い。
聞くだけなら努力もいらない。

前置きはいいから話そう。
ある時、思い付いたんだ。
この歌が僕の物になれば、この穴は埋まるだろうか。

だから、僕は盗んだ」

歌詞冒頭では、主人公が音楽と出会った頃を回想しています。

回想してすぐに「前置きはいいから話そう」と論題を切り上げています。
しかし、音楽の心地良さや努力なくして楽しめる面を懐かしんで語っています。
論題を切り上げていても彼の中では大切な思い出の1つなのでしょう。

「ある時、思い付いたんだ」

彼が思い付いたのは「盗作」です。
「ある時」と表現されているので最初は純粋に音楽を楽しんだり「自分もオリジナル作品を作りたい」と考えていたかもしれません。

しかし彼の耳に流れる音楽は彼を虜にして魅了していったのでしょう。
彼は次第に流れる音が欲しくなり、その音を自分の音楽に取り入れることを決意したようです(もしくは完全に近いほどに模倣した可能性もある)

すべては「この穴」つまり自身の美的感覚を満たすため。
最初の『盗作』はそれを満たすことができたのでしょうか。。

合わなかったピース―新たな欲求

嗚呼、まだ足りない。全部足りない。
何一つも満たされない。
このまま一人じゃあ僕は生きられない。
もっと知りたい。愛を知りたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。

最初の『盗作』が出来上がり、そこから流れる音を主人公は確かに聴きました。
何度も何度も聴いたことでしょう。

「嗚呼、まだ足りない。全部足りない。」

なぜ――

彼は「何一つも満たされない」心を抱いて苦悩しているようです。
他者から『盗作』とレッテルを貼られるのを覚悟で生み出した作品。。
リスクに見合ったものを彼は得ることができませんでした。

膝と頭を抱え、部屋の隅で熟考に熟考を重ねる彼を容易に想像できます。

そして一つの結論に達します。

「もっと知りたい。愛を知りたい。この心を満たすくらい美しいものを知りたい。」

このフレーズから、彼は「愛」と「美しさ」を関連付けています。
つまり自分が心から愛せない作品は美しくないと感じたのでしょう。

しかしこの結論に到達するや、彼はまたしても考え込んだと思われます。

「愛を知りたい」というフレーズから、彼が「愛とはなんだ」と疑問視しているのを読み取れるからです。

彼は自身の美的感覚を満たす新たなピースとして、単に技術の高い作品というだけでなく「自身が心のそこから愛せる作品」を求めることにしたようです。

盲目の大衆

「ある時に、街を流れる歌が僕の曲だってことに気が付いた。
売れたなんて当たり前さ。
名作を盗んだものだからさぁ!

彼奴も馬鹿だ。こいつも馬鹿だ。
褒めちぎる奴等は皆馬鹿だ。
群がる烏合の衆、本当の価値なんてわからずに。
まぁ、それは僕も同じか」

ここでは主人公と大衆の音楽に対する価値観が比較されているようです。

街では彼の作った曲が流れ、彼はそれに気づきます。

「売れたなんて当たり前さ」という乾いた感想から、彼が「売れる音楽」に対して価値を見出していないことを理解できます。
それは単なる「商業音楽」であり、大衆の心を喜ばせ満足させますが自身はそうではありません。

「群がる烏合の衆、本当の価値なんてわからずに。」

音楽のルーツを辿りもせず「新たな音楽」として受け入れている人たちを念頭に置いたと解釈しました。

しかし「まぁ、それは僕も同じか」と付け加えているように、自身も同じような見方をしていたことを認めていますね。

この時点で彼は本当の価値について、またオリジナルの定義や新たな音楽を制作可能かどうかすらわからなくなっているように見受けられます。

彼の音楽への向き合い方に変化が生じたに違いありません。

金が解決?

嗚呼、何かが足りない。
これだけ盗んだのに少しも満たされない。
上面の言葉一つじゃ満たされない。
愛が知りたい。金が足りない。
この妬みを満たすくらい美しいものを知りたい。

ここでも主人公の心の渇望が綴られています。

しかし注目したいのは次のフレーズです。

「金が足りない」

彼の音楽は街で流されるほど流行しており売れていたはずです。
ですから裕福な生活を維持するだけの金銭はあることでしょう。

フレーズの前にある「愛が知りたい」にヒントがありそうです。

彼は心の底から愛する美しい音楽を追求しています。
一つの可能性としては、自分の求める音楽を作るには「金のかけ方が足りない」と考えたかもしれません。

アーティストが1度は直面すると言われている問題です。
確かに機材やソフトなど有用かつ有能なものを望むなら多額の金が必要になるでしょう。

もう一つの可能性は、彼が「愛をお金で買おうとした」のかもしれません。
愛を知らない人物が至る思考とも言えるでしょう。

いずれにせよ彼の心には「妬み」が渦巻いているようです。

「妬(ねた)み」とは「相手を羨ましく思い、同時に憎らしく思う感情 」です。
前述で考えた可能性が適切なら、彼の周囲には次のような人たちがいたと考えられるでしょう。

・自分より機材や環境に恵まれている人

・大切な人から愛し愛されている人

「妬み」を抱く人は「相手の持っているものと比較して自分の持っているものを無価値だ」と考える傾向があります。

上記の点を加味するとMVの楽器が破壊されるシーンは、彼の妬みによる衝動的行動かつ音楽との向き合い方がわからなくなってしまったと解釈しました。

ピースが作り上げた「虚しさ」

「音楽の切っ掛けが何なのか、今じゃもう忘れちまったが欲じゃないことは覚えてる。
何か綺麗なものだったな。

化けの皮なんていつか剥がれる。
見向きもされない夜が来る。
その時に見られる景色が心底楽しみで。

そうだ。
何一つもなくなって、地位も愛も全部なくなって。
何もかも失った後に見える夜は本当に綺麗だろうから、本当に、本当に綺麗だろうから、

僕は盗んだ」

この部分は主人公が望むもの、つまり「心の穴」という美的感覚を満たすためのピースすべてを集め終わった時期を綴っているようです。

なぜなら「地位も愛も」手に入れている書き出しになっているからです。

彼は長い時の中で自分なりに「必要なもの」を揃えていったのでしょう。
しかし自分が手にした「地位や愛」そして「音楽」美しく思えません。
それらが心に形成していったのは言葉にできない「虚しさ」だったと考えられます。

「何もかも失った後に見える夜は本当に綺麗だろう」と仮定を立てていることからもそのように言えるでしょう。

何もかもを失う、つまり純粋に音楽を好きだった頃に戻るという意味だと解釈しました。
なぜなら前述で「音楽に触れる切っ掛け」を回想しており、その動機が不純ではなかったことにも言及しているからです。

何もかもを失うことを望んだことを綴ったあとに

「僕は盗んだ」と続いています。

これは彼が今まで以上に危ない橋を渡る、つまり「誰の目にも明らかな盗作」を試みようとしていると解釈しました。

音楽の世界で有名になった彼が、何もかもをなくして初心を取り戻すにはこれしかないと彼は考えたのかもしれません。

未だ見ぬ美しい夜

嗚呼、まだ足りない。もっと書きたい。
こんな詩じゃ満たされない。
君らの罵倒じゃあ僕は満たされない。
まだ知らない愛を書きたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。

まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。僕は足りない。
ずっと足りないものがわからない。
まだ足りない。もっと知りたい。
この身体を溶かすくらい美しい夜を知りたい。

歌詞のラストでは主人公の心の渇望がピークに達しています。

彼はありったけの『盗作』を生み出し世に配信していったようです。
現代でいう「パクリ」とあからさまに批難を受ける音楽も制作したのでしょう。

そのような大衆からの批難が「君ら罵倒」で表現されていると解釈しました。

「罵倒」に対し、彼が「僕は満たされない」と語っています。
彼のこうした感受性から「刺激ある人生こそ美しい」と考え出したことを理解できます。

地位や愛を両手で足りないくらい手に入れた有名人でも、スリルを求めて失敗する場合がありますね。

彼はその始まりであり、特殊なケースとして「後先(人生が終わること)を考えて」スリルを求めているように見受けられます。

「美しい夜」

ラストフレーズに含まれるこの夜は「刺激的な人生」を示唆していると解釈しました。

そのような人生を追求した結果が「善」であれ「悪」であれ、彼が美しさと価値を感じるのであれば問題ないのです。

彼の自ら価値を付すという考え、そして美的感覚に重きを置く姿勢は永遠に変わることはないのでしょう。。

まとめ

いかがでしょうか。

歌詞全体にアーティスティックな思考と行動が散りばめられていましたね。

よくアーティストの考えは凡人に理解できないという苦言を耳にします。
しかし筆者は、誰しも周囲に理解し難い脳内テリトリーやプライオリティーなどが存在すると思っています。

人生において何を優先するか、また何に価値を見出すかは人それぞれです。

主人公は色々な方法を模索し、時に人の道を大きく外れたかもしれません。
それでも自身が心の底から「幸せだった」と実感するなら、人生の成功や価値観を他者が図るのは意味のないことかもしれませんね。

『盗作』を通じて普段考えないような観点で物事を見れたような気がします。
ヨルシカの今後の活動と次回作に期待し注目していきたいと思います。

洗練された世界観と引き込まれる楽曲に感謝します。
ありがとうございました。

ここまで記事を読んでくださった皆さんにも感謝します。
ありがとうございました。

コメントを残す