米津玄師『ごめんね』歌詞の意味と考察~『UNDERTALE』 違いを乗り越える友情

米津玄師ごめんねundertale

バカみたいな夢を 笑わないで聞いてほしい
日が暮れる前に 話しておきたい

君みたいに優しく なりたいだけ
祈る声は激しく あと少しだけ
心の底から触れ合うまで
君と繋がっていたいだけ

泣き噦るだけじゃ 何もないとわかったから
傷つけたことを 謝りに行こう

いつまでも近くに いてほしいだけ
さよならが言えなくて 恐ろしいだけ
溢れる光に手が震えたって
君となら強くなれるだけ

君みたいに優しく なりたいだけ
祈る声は激しく あと少しだけ
心の底から触れ合うまで
君と繋がっていたいだけ

怯えてばかりで 恥ずかしくなるよ
そこから見ていてね 大丈夫 ありがとう

米津玄師の『ごめんね』は、2018年10月31日に発売された『Flamingo/TEEAGE RIOT』のカップリング曲です。

『ごめんね』には、米津玄師らしい尖ったところがなく、おおらかで親しみやすい曲調が印象に残ります。

誰もが一緒に歌えるような、ライブで全員が合唱するような曲で、歌詞が描いているのは、多様性を認め合い互いの違いを乗り越えて行く「友情」です。

今回は、米津玄師の新しい境地を示し、ライブの新たな定番曲になるであろう『ごめんね』の歌詞を考察します。

『ごめんね』は『UNDERTALE』のイメージソング

『ごめんね』は、ゲーム『UNDERTALE』に触発されて作られた曲であることを、米津玄師自身が語っており、その経緯(いきさつ)は、ネットラジオで聞くことができます。

「『UNDERTALE』っていうゲームがあって、それをやってたんですけど、それがめちゃくちゃ面白いゲームで、でもこれはネタバレ厳禁みたいなゲームなので、あんましゃべんない方がいいんですけど」

「それがあまりにも面白いもんだから、自分で勝手にイメージソングみたいなものを作っちゃって、それが3曲目の『ごめんね』」

米津玄師 F/T RADIOより引用

「ニンゲン」と「モンスター」のふれあいや戦いを通して、プレイヤーが成長して行く『UNDERTALE』は、「誰も死ななくていいやさしいRPG」として、高い評価を得ている名作ゲームです。

2015年の発表以来数多くの受賞歴があり、星野源も、影響を受けたゲームとして『UNDERTALE』を紹介しています。

『UNDERTALE』のイメージソングだと言う『ごめんね』ですが、歌詞の意味を細かく探るとゲームのネタバレに繋がるため、以下の考察では歌詞の細かい解釈はせずに、あえて大きく広く考察します。

自分たちとは異質な存在「モンスター」への共感

米津玄師は、人と違う外見やコミュニケーションの難しさから、生きづらさを感じていたことを、繰り返し語っています。

「あるキャラクターのこと思いながら、ずっと作った曲なんですけど、そのキャラクターは、やっぱ俺にすごい似ている部分があって、混沌としたものを宿しているキャラクターであって、そいつと自分を照らし合わせながら、いつもこうタイアップソングとか作っているときと同じ感覚なんですけど」

米津玄師 F/T RADIOより引用

米津玄師は『UNDERTALE』の「あるキャラクター」に、自分が似ていると語りますが、その「あるキャラクター」が「モンスター」なのか、「ニンゲン」だったものなのかは、ネタバレを避けるために、ここでは解釈は示しません。

ただ、米津玄師が自分と重ね合わせたキャラクターが何ものであれ、米津玄師は、悩みや苦しみや生きづらさを抱えた存在に共感し、励ましと労(いたわ)りの気持ちを、歌詞に込めて歌います。

変化する自分とマイノリティへの変わらない想い

『ごめんね』の制作にあたって、米津玄師は、ライブで観客が一体になって盛りあがる場面を考えたことも語っています。

「作ってるときにも、すっとライブのことを考えながら作りました。あそこまでライブのことを考えながら作ったのって初めてで、サビって言っていいのかどうかわかんないんですけど、コーラスが広く、ライブ会場でみんながオーオーってやってくれたらすごく気持ちいい空間になるんだろうなと」

「そういうことを考えながら音楽を作れるようになったんだなあという、そういうものが自分の頭の中から自然にでてくるようになったっていうのは、大きな変化なんだろうなと」

米津玄師 F/T RADIOより引用

米津玄師の表現の荒々しく尖ったところや、奇矯なところは、自身のの生きづらさや苦しみを撥ね除けるために必要なものでした。

しかし、CMタイアップ曲やドラマ主題歌などの制作を通して、遠いはずだった「まとも」な世間と接近し、『Lemon』が大きく広く受け入れられたことで、米津玄師は変わりました。

シングルA面の『Flamingo』は、その変化を自覚して過去を総括し、新たなステージに進む決意を示した曲です。

新たなステージに立った米津玄師は、学生が肩を組んで歌うような曲も作れてしまう自分を認めて、さらに前に進みます。

「昔のことを懐かしんだりもするんですけどね、自分の。昔楽しかったなとか思って、その時のように生きられたら、また幸せなんだろうなと思うこともあるんですけど、でもどうあがいても時間は前に流れて行くものであって、その流れにしたがって自分を作りかえて行かなければならない」

「どんどんどんどん時間の流れって加速して行ってると思うんですけど、それに合わせてあたふたしながら、自分を作りかえていかなければならない。そうやって作りかえていくことによってでしか自分を保てない側面があって、保てないって言うとネガティブな言葉になるかもしれないけれども、それによってしか表現できない美しさっていうのがあると思う」

「これから先、どういう人生が待ち受けているのかわからないですけど、わからないなりになんかこう、グズグズしながら、グシャグシャしながら、傷つきながら生きていくのが、美しいんだろうなって思いますね」

米津玄師 F/T RADIOより引用

曲調の大きな変化は、昔からのファンを戸惑わせているかもしれないことを認めながら、米津玄師は、より美しいものを創造するために、自分を作りかえることの必要性と決意を語っています。
しかし、米津玄師は、変化しながらも普通ではない存在への共感を捨てません。そして、みっともないものたちの、つらい生き方を肯定します。

より広く世間に受け入れられる作品を作りながらも、根底にある想いには、マイノリティへの共感と、異質なもの同士が認め合って平和に共存することへの願いが、変わらずに貫かれています。

異質なもの同士が認め合う「友情」が希望を繋ぐ

ここからは、『UNDERTALE』のネタバレにならないように、ざっくりと歌詞を見て行きます。

バカみたいな夢を 笑わないで聞いてほしい
日が暮れる前に 話しておきたい

君みたいに優しく なりたいだけ
祈る声は激しく あと少しだけ
心の底から触れ合うまで
君と繋がっていたいだけ

泣き噦るだけじゃ 何もないとわかったから
傷つけたことを 謝りに行こう

「バカみたいな夢」とは、異質なものが多様性を認め合って、争わず平和に共存して行くことです。

その願いを、「日が暮れる前に」物語が終わる前に、伝えなければならない。

「君」は一番親しい存在なのに、戦うこともあったし、まだわかり合えてはいない。

でも、「君」のようになりたい。「あと少しだけ」一緒にいたい。

そうして「心の底から触れ合」えば、わかり合えるはず。

「泣き噦(じゃく)

だけじゃ」後悔するだけじゃ、何も変わらない。

戦って「傷つけたことを謝り」和解しよう。

いつまでも近くに いてほしいだけ
さよならが言えなくて 恐ろしいだけ
溢れる光に手が震えたって
君となら強くなれるだけ

「いつまでも近くにいて欲しい」いつまでも友達で、兄弟でいて欲しい。

「さよなら」が言えないのは、別れが「恐ろしい」から。

自分という存在やその悪い行いは、「溢れる光」である愛に、消されてしまうかも知れない。

でも、物語の結末がどうであれ、「君」と一緒なら、自分は変わって強くなれる。

怯えてばかりで 恥ずかしくなるよ
そこから見ていてね 大丈夫 ありがとう

「怯えてばかりで」何もせず隠れていた過去が、恥ずかしい。

けれども、今では「君」が「そこ」にいることがわかっているし、繋がりも取り戻した。

ハッピーエンドで終わらないかも知れないけれど、自分たちも世界も、きっと「大丈夫」。

終わりに

『ごめんね』は、傷つけ合ったり争ったりしながらも、それを成長の糧にして進んで行く、若者たちの友情を歌った曲です。

異質なものを排除しようとして、差別や戦闘が繰り返される、現実のどうしようもなさは、至るところで、毎日のように目にします。

しかし、それを乗り越えようとする「祈りの声は激しく」、米津玄師もまた祈りと共に、異質なもの同士が多様性を認め合い、友達として共存する「夢」を語ります。

奇をてらわない大きく広く届く曲調で、友情を歌った『ごめんね』は、米津玄師の進化を示す重要な1曲です。

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