宇多田ヒカル『花束を君に』歌詞の意味・考察と解説

普段からメイクしない君が薄化粧した朝
始まりと終わりの狭間で
忘れぬ約束した

花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
真実にはならないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く
ただ楽しいことばかりだったら
愛なんて知らずに済んだのにな

花束を君に贈ろう
言いたいこと 言いたいこと
きっと山ほどあるけど
神様しか知らないまま
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

両手でも抱えきれない
眩い風景の数々をありがとう

世界中が雨の日も
君の笑顔が僕の太陽だったよ
今は伝わらなくても
真実には変わりないさ
抱きしめてよ、たった一度 さよならの前に

花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
君を讃えるには足りないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

はじめに

2016年に発売された宇多田ヒカルの配信限定シングル『花束を君に』。

NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の主題歌として起用されたことでも話題になりました。

2016年に音楽活動を本格的に再開させた宇多田ヒカルの復帰作でもあり、復帰を望んでいた
多くのファンにとっては待望のシングルです。

そんな背景を持つ『花束を君に』ですが、果たして歌詞はどのようなものなのでしょうか。
早速歌詞考察を行います。

歌詞考察

薄化粧をする理由とは

普段からメイクしない君が薄化粧した朝
始まりと終わりの狭間で
忘れぬ約束した

一番Aメロです。

「普段からメイクしない君が薄化粧した朝」という
いつもと違う朝の描写から始まる『花束を君に』。

「君」が薄化粧をする理由とはなんでしょうか。
正解は死化粧であると予想されます。

後に出てくる「涙色の花束」という悲しいことが起こったことを連想される歌詞からも
わかりますが、『花束を君に』は葬式で亡き人物を振り返っている歌なのです。

そしてその人物とは2013年に自ら命を絶った宇多田ヒカルの母、藤圭子だと考えられます。

2012年に『桜流し』を発表してから2016年に『花束を君に』を発表するまで
宇多田ヒカルは目立った音楽活動はありませんでした。

自分の思いを昇華するためにもこの4年間で起こった母の死を題材に
『花束を君に』を作曲したのだと推察できるのです。

さまざまな思いを込めて花束を

花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
真実にはならないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

一番サビです。

先述したように『花束を君に』は母の死を題材に扱った歌。

ここで描かれるのは葬儀の際に花束をたむけているその瞬間だと考えられます。

「どんな言葉並べても 真実にはならないから」「今日は送ろう 涙色の花束を君に」
と、もう言葉を発することのない母の前では何を言っても届かないから、
その思いは今たむける花束に込めようと歌うのです。

「涙色の花束」という歌詞から、涙しながら亡き母に対して万感の思いを込め、
花束をたむける宇多田ヒカルの姿が目に浮かぶようです。

愛を知らなければ悲しみもない

毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く
ただ楽しいことばかりだったら
愛なんて知らずに済んだのにな

二番Aメロです。

ここで描かれるのは母との思い出を振り返る宇多田ヒカルの姿です。

「毎日の人知れぬ苦労や淋しみ」とは母が自分に対してこれまでしてくれた
さまざまなことを指すのでしょう。

そして、もしそういったことがなく「ただ楽しいことばかりだったら
愛なんて知らずに済んだのにな」と続けます。

これは母が自分を育てるためにしてくれた苦労などを知ることなく、ただ楽しい
思い出だけであれば、その裏にある愛情に気づくことは無かったという意味だと考えられます。

通常であればその愛情に感謝を述べる歌詞が綴られそうなものですが、
ここでは「愛なんて知らずに済んだのにな」とあります。

これは母の死というショッキングな出来事を前にして、こんな悲しい思いをするのであれば
母に関する思いは全て忘れ去りたいという思いからくるものでしょう。

一見するとひどく思える歌詞が逆説的に愛情の深さを表しています。

これまでの思い出を振り返って思うことは

花束を君に贈ろう
言いたいこと 言いたいこと
きっと山ほどあるけど
神様しか知らないまま
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

両手でも抱えきれない
眩い風景の数々をありがとう

世界中が雨の日も
君の笑顔が僕の太陽だったよ
今は伝わらなくても
真実には変わりないさ
抱きしめてよ、たった一度 さよならの前に

花束を君に贈ろう
愛しい人 愛しい人
どんな言葉並べても
君を讃えるには足りないから
今日は贈ろう 涙色の花束を君に

二番サビ〜大サビです。

「両手でも数えきれない 眩い風景の数々をありがとう」という
シンプルながら力強いメッセージが目を引きます。
この部分が歌われる際はリズムが変化し、音楽的にも特徴的です。

二番Aメロで「愛なんて知らずに済んだのにな」と母のことを忘れたいと思わせる歌詞が
綴られましたが、最終的にはやはりただ感謝の思いを伝えたいと感じるようになったのでしょう。

続く歌詞も「世界中が雨の日も 君の笑顔が僕の太陽だったよ」「愛しい人 愛しい人」
と非常に直接的な愛情を感じる歌詞が続きます。

そして「君を讃えるには足りないから 今日は贈ろう 涙色の花束を君に」とさまざまな思い
を綴った後に、その思いを込めて亡き母に花束を送る情景が描写され、
『花束を君に』は幕を閉じるのです。

終わりに

今回は宇多田ヒカルの復帰作である『花束を君に』を特集しました。

その歌詞はただ単純に感謝や愛だけでなく、その愛の深さからもう母のことを忘れたい
と思わせる内容な歌詞が並んでいたり、非常に考えさせられる内容です。

しかし、楽曲全体の雰囲気は非常に優しげなもので聞いているだけで癒される名曲です。

そのメロディの柔らかさ、歌詞の深さどちらも味わいながら
『花束を君に』を聞いてみてください。

8 件のコメント

  • とと姉ちゃんは録画してズーとみてました。
    そのときのこの歌が、最近やたら思い出すようになりまして。
    歌詞を探していたら、このSugar&Salt Musicに出会いました。
    はじめ、「死に化粧」の一言に えーーー と驚きました。
    何で?
    読んでいくうちにその意味がわかりました。
    実は、私の母も93歳で、今年の6月に亡くなりました。
    そう思うと、この曲が最近頭に浮かんで、歌いたくなった意味も
    わかるような気がしてきました。
    もう一度、この歌を聴いてみると、涙が出てきて・・・
    このSugar&Salt Musicに会えて良かったです。
    ありがとうございました。感謝です。

    • なかちゃんさんコメントに感謝します。
      辛い経験をされましたね。
      しばらく悲しみが癒えないかもしれません。
      気持ちに余裕のない時にも当サイトを褒めて
      下さり胸打たれました。
      これからもたくさんの名曲に出会うことと思います。
      その中でなかちゃんさんの悲しみが少しでも和らぐ
      ことを願っています。。

      これからもSugar&Salt Musicを宜しく
      お願いします!

  • 仮に宇多田さん本人であるとして、になぜ「僕の太陽だったよ」なんでしょうかね。
    そこが一番しっくりこない。

    • れのんさんコメント有難うございます。

      注目してくださったフレーズの前に「世界中が雨の日」
      もと述べられています。
      これは世界が愛のない冷え切った状態になっていても
      母は太陽のように自分を愛しあたたかさをくれたという
      描写と考えられます。
      「だったよ」という過去形の表現から感謝を伴う回想
      だと理解できます。

      これからも頑張って執筆させて頂きますので応援よろしく
      お願いします♪

  • 宇多田ヒカルのデビューからのファンでいる私はこの花束を君にという歌詞にすぐに理解しておりました。令和2年3月29日午前11時26分父親が急性心臓死にて亡くなりました。喪主となり喪主挨拶の際、脳裏に流れていたのがこの歌詞でした。このSugar&Salt Musicに会えて良かったです。どうもありがとうございました。

    • thomasさんコメント有難うございます。
      辛い思い出でしたね。。
      急性ということで予期せぬ出来事にご家族も
      深い悲しみに直面しましたね。胸が痛みます。

      喪主は筆者も経験ありますが頭が真っ白になったり
      涙が止まらなかったのを思い出しました。
      感謝の言葉で結んで下さり感無量です。

      これからもSugar&Salt Musicを宜しく
      お願いします!

  • 妻が宇多田ヒカルのファンで私がジョギングする時に時々借りて聞いておりました。その妻が今から1年半前に病気で亡くなり何度かこの曲を聞くたびに思っていたのですがやはりそうだったのですね。まだ日が浅いので花を手向けるシーンは思い出したくないのですがこの曲を聞くと今でも涙が出てきます。ヒカルさんのお母さんも私はファンでレコードも持ってました。みんな辛い思いを乗り越えて頑張ってるのにまだめそめそしてる私は情けないですね。こういう事を書くサイトではないかも知れませんがお許しください。

    • よしさんコメント有難うございます。
      最愛の人を亡くされた心痛が伝わってきました。。
      経験によってフレーズの重みがこれほどまでに違ってくるとは
      と思わされましたよ。。
      若輩が何を偉そうにと思われるかもしれませんが、時間をかけて
      辛さと向き合っているよしさんを情けない人とは見れませんよ。
      このコメントを見るたくさんの人が感化を受け、前に進む力に
      なることを願っています。

      これからもSugar&Salt Musicを宜しく
      お願いします!

  • コメントを残す