スピッツ『ありがとさん』歌詞の意味を考察・解釈

君と過ごした日々は
やや短いかもしれないが
どんなに美しい宝より
尊いと言える

お揃いの大きいマグで
薄い紅茶を飲みながら
似たようで違う夢の話
ぶつけあったね

あれもこれも2人で
見ようって思ってた
こんなに早くさよなら
まだ寒いけど

ホロリ涙には
含まれていないもの
せめて声にして投げるよ
ありがとさん

謎の不機嫌それすら
今は愛しく
省みれば愚かで
恥ずかしいけど

いつか常識的な形を
失ったら
そんときゃ化けてでも
届けよう
ありがとさん

ホロリ涙には
含まれていないもの
せめて声にして投げるよ
ありがとさん

君と過ごした日々は
やや短いかもしれないが
どんなに美しい宝より
尊いと言える

はじめに

『ありがとさん』とは2019年10月3日にネット上で公開された楽曲です。
同年10月9日リリースされる 16th Album『見っけ』 に収録されています。
動画再生回数は公開から2日で20万を超える人気ぶりを見せています。
さっそく動画コメント欄にも1,300を超えるコメントが集まっています。

上記アルバムには、連続テレビ小説「なつぞら」主題歌「優しいあの子」やNTT
東日本「あなたの夢は、みんなの夢」篇CM楽曲「見っけ」も収録されており、
ファンを含め大勢の方が注目しています。

さて今作MVの内容や曲調はどのような構成になっているのでしょうか。

MV開始には誰もいない部屋に電車が通る音が響き渡っています。
それもつかの間、メンバーの演奏が開始され哀愁と情緒が漂います。
「ぎゅっと狭い部屋で演奏したい」というメンバーのリクエストからアパートの
一室
で撮影されたようです。

今作MVの監督を務めたTHREE IS A MAGIC NUMBER Inc.の北山大介さんは次
のようなコメントを寄せています。

北山大介 コメント

今回のありがとさんのMVは「ぎゅっと狭い部屋で演奏したい」というメン
バーのみなさんのリクエストから企画がスタート。
学生時代の友人宅に上がりこんで、レコードを聴きまくっていた、あの頃。
思春期に誰もが体験した(しましたよね?)大きな音でロックを聴いてると
親にドアをガンガンノックされて「うるさい!」と怒られ、盛り上がってる
のに下の部屋のおばあちゃんがタイミング悪く、お茶とお菓子を持ってく
る、あの昭和な、なんかカッコつけきれない世界観の中、大人になったロッ
クバンドが全開で演奏する。そんなビデオにしました。室内の撮影でもよく
靴を履いたままだったりしますが、その辺りも友人宅なのでちゃんと靴を脱
いで上がってたり(田村さんはスリッパ履いてるし…)。
令和になっても、スピッツはスピッツらしいそんなMVになっているのでは
ないかと思います。

https://natalie.mu/music/news/350006  ナタリーより

上記コメントからも初期スピッツを連想するような懐かしさを感じると共に、彼らの変わらない魅力を噛みしめることが出来るナンバーだと理解できますね。

曲進行に関してもスローリーなA,Bメロから一転して刻みつけるようなサビが強
烈なインパクトを残します。
是非その点にも注目しながらメロディーを楽しんで下さい。

それではさっそく気になる歌詞の考察を始めていくことにしましょう。

タイトル『ありがとさん』とは

歌詞全体を考慮するとこれは友人あるいは大切な人への感謝だと理解できます。
撮影された場所が友人宅と言うコメントもあり、もしかすると友人に向けられた
感謝の言葉なのかもしれません。

歌詞でも涙には含まれていないというヒントが綴られていました。
心の内奥に潜んでいた感情がタイトルの六文字で表されたのだと筆者は解釈しま
した。

『ありがとさん』歌詞の意味

君と語り合った日々

君と過ごした日々は
やや短いかもしれないが
どんなに美しい宝より
尊いと言える

お揃いの大きいマグで
薄い紅茶を飲みながら
似たようで違う夢の話
ぶつけあったね

今回は一人の男性主人公を主軸とし「君」を同性の友人として
考察を進めていきたいと思います。

主人公は昔、友人と過ごした日々を回想し懐かしんでいるようです。
子供の頃だったからでしょうか、濃いのが飲めず「薄い紅茶」を嗜んで
いる様子が目に浮かぶようです。

紅茶を啜りながら主人公と友人はそれぞれ自分の夢について語り出します。
「ぶつけあった」という表現から「夢についての意見を出し合った」もしくは
相手と自分の夢が違い過ぎてある種の「否定のし合い」があったのかもしれま
せん。

子供の頃であれば自分と違う考えを受け入れることが出来ず、「おかしい」とか
「自分の方が」と主張する場合がありますね。
そうしたものすべてひっくるめて今では笑える良い思い出なのでしょう。

それぞれの道を行く

あれもこれも2人で
見ようって思ってた
こんなに早くさよなら
まだ寒いけど

ここでは主人公と友人がそれぞれの異なる人生を
歩んで行ったことを示唆しているようです。

夢は違えど二人でどんな出来事も一緒に見たいと
考えていたのでしょう。
特に若い頃であれば「全部一緒がいい」と共存意
識も高いことと思います。

それでも高校卒業、あるいは二十歳過ぎてからで
しょうか、「こんなに早くさよなら」と歌詞は続
きます。

「まだ寒い」とは大人になった今でも友人が側に
いない人生は、何かが違うと感じていたからかも
しれません。
それだけ友人の存在は心温まるものだったのです。

君の見た涙―ありがとさん

ホロリ涙には
含まれていないもの
せめて声にして投げるよ
ありがとさん

君と過ごした日々は
やや短いかもしれないが
どんなに美しい宝より
尊いと言える

若かりし頃に主人公と友人は別々の人生を歩んだようです。
これは物理的な距離も離れていったように感じます。
すぐには逢えない距離でなければこんなに寂しがることは
ないのではと筆者は考えたからです。

別れの際に主人公は小さな涙を友人に見せたようです。
「自分は男だし、えんえん人前で泣くものではない」と意地
を張ったのかもしれません。

それでも彼は今となってある感情が友人に対して込み上げて
きたようです。
それは友人への「感謝」でした。

別れの際には涙をこらえるので必死だったのでしょう。
そして「涙」には寂しいの気持ちが込められていましたが、
感謝は含める余裕がなかったのでしょう。

大人になった今、主人公は友人に感謝を言葉にして伝えたくて
仕方がなくなったようです。

歌詞を見ると「君と過ごした日々」について「やや短い」とい
う意味深なフレーズが使われています。

これは友人と過ごした日々が文字通り短い、もしくは友人との
日々が大人になってからの日々と比較して短い
という意味なの
かもしれません。

いずれにせよ主人公にとってそれはかけがえのないもの、尊い
日々だったのです。

彼は長くも短いとも言える回想の中で「ありがとさん」と呟い
たことでしょう。
もしかするとそれは、いつの日か久々に逢う友人に対して述べ
る時の練習なのかもしれませんね。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
友人との語らいは何度想像しても楽しく心温まる思いがしますね。
大人になってから「感謝の念」が湧き上がってくることってあり
ますよね。

筆者も今回の考察からそういった気持ちが湧き上がってきたら、
躊躇うことなく対象者に伝えなければという気持ちになりました。

「ありがとう」ではなく「ありがとさん」という軽い表現から
主人公の照れ隠しのような一面を感じることができました。

ゆったりとそしてまったりとした気分で楽曲を楽しむことができ、
筆者自身スピッツへの感謝で満たされています(笑)

スピッツの今後の活動と次回作に期待し注目していきたいと思い
ます。

素敵な作品をありがとさ、ありがとうございました(笑)

2 件のコメント

  • 拝読させて頂きました。

    筆者さんは同性の友人を想定していましたが、私の解釈を僭越ながらお話しさせてください。

    お揃いのマグカップ=仲良く同棲 薄い紅茶=1つのティーパックで2杯いれたところから 「ぎゅっと狭い」アパートの一室で質素な生活ながらも2人で仲睦まじく暮らしてるシーンを思い浮かべました。 同じ価値観でないと、長く付き合うことは男女においては難しいことで、食い違いに少し危機を感じながら、お互いの思いをぶつけ合い軌道修正して同じ夢(未来の2人)を見ていきたいという必死さが感じられました。大きなマグカップは、長らく語り合うのに良いサイズ感ですね。
     
    春になったらあそこへ行こう。春になったらこの映画を見に行こう。春になったら……  暖房器具もままならない狭いアパートの一室で、2人は身を寄せ合いながら温かな春を待ち望んでいたのかもしれません。
    でも、ふいに訪れた別れ。2人には温かな春は訪れることはなかった。「こんなにも早くさよなら」ただの男女間のもつれではなく、もしかしたら彼女は事故かなにかで死を迎えたのかもしれません。

    2人で過ごした時間が全て尊くて、いとおしくて、1人部屋に残された彼には辛く寒い空間が想像できます。感情のままに生きる女性特有の「謎の不機嫌」 2人はその度に衝突し、彼女を理解できずに、あがいた自分も今では懐かしく、苦笑いしてるかもしれません。

    いつか常識的な形を失っても化けてでも届けよう=自分の死  前文撤回で彼女は生きてるかもですが、2人で過ごした時間への感謝をどうしても伝えたい気持ちが伝わります。

    「ありがとさん」
    彼女が方言でいつもありがとさんと言ってて、あえて彼女に寄せて「ありがとさん」と言ったのかもしれませんが、筆者さんが言うように照れ隠しかなと思いました。男性は言葉が足らないと、常々思っているのでw 2人の関係の擦れにも感情的な女性と、言葉足らずな男性の姿が浮き出ているように感じます。

    どこか懐かしい古びたアパートの一室での男女。スピッツの描きそうな画です。

    長々とスミマセン。初めてしっかり解釈を文章にしてみました。一つ一つ想像して読み膨らませていくの楽しいですね‼ スピッツはとても分かりやすく情景も描きやすいですが、ハイペースにいろいろな曲を解釈していく筆者さんには本当に頭が下がります。足を向けて眠れません(嘘)

    これからの作品にも期待してます🍀
    本当に長々と……失礼しました‼

    • りりさん感想有難うございます。
      同棲した男女の考察たいへん興味深く読ませていただきました。
      フレーズの背景も示してくださり感謝します。
      筆者への配慮と気遣いにも胸打たれています。

      これからもSSMを宜しくお願いします。

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