須田景凪『MOIL』歌詞の意味・解釈

思い出すのは砂を噛む様な
茹だった焦燥と幼い白昼夢の続き

今となってはあの感触も笑えるほど
するり 手からこぼれてしまった

故に永遠に無垢を望み
雲間にまた目が向くのは何故

大人になった 大人になってしまったみたいだ
左様なら 違う世界に交わる 雲にでもなりたい
明日がいつか 記憶になって 些細な言葉になる前に
今、募るこの想いを あなたへと伝えたい

どんな形で
どんな言葉で
どんな明かりで照らせば

「あなた無しでは意味がない」
など感情は盲目だ 尚更また膨らむ欠落

生きていく度 より鮮明に
胸の底で別れが育つ様な気がした

故に懸命に腕を伸ばし
身勝手な光を追うのは何故

大人になった 大人になってしまったみたいだ
左様なら 日々の中で揺蕩う 風にでもなりたい
心がいつか 飾りになって 安い空夢になる前に
今、募るこの想いを あなたへと伝えたい

夕凪に世界が身勝手に沈んでも
もう決して目を逸らしはしないだろう
輪郭は段々と曖昧に変わっていく
その様すら愛していたいんだ

大人になった 大人になってしまったみたいだ
左様なら 違う世界に交わる 雲にでもなりたい
明日がいつか 記憶になって 些細な言葉になる前に
今、募るこの想いを あなたへと伝えたいんだ

どんな形で
どんな言葉で
どんな明かりで照らせば

はじめに

『MOIL』とは2019年8月19日にネット上で公開された楽曲です。
同年8月21日にリリースされた 2nd EP「porte」に収録されています。
また映画「二ノ国」主題歌ともなっており多くの人たちに注目されたナンバー
です。

動画再生回数は公開から10日経過した現在で100万を超え大人気です。

今作について公式サイト特設ページにてインタビューがなされていたのでその
一部をご紹介したいと思います。

―「MOIL」は、映画主題歌としては、どういうものをイメージしていったんでしょうか。

須田景凪さんコメント

映画の主題歌は、観終わった後の余韻と共に流れるものでもあるし、いろんな場所で流れるものでもある。オープニングとエンディングの両方の役割を担うようなイメージがありました。だから、少年マンガみたいなアップテンポの曲も一度書いていたんです。でも、この作品にはあまり相応しくないなと思って。最終的にはミドルテンポの曲になりました。

―歌詞には「大人になった 大人になってしまった」というフレーズがあります。

須田景凪さんコメント
映画には「選択」というテーマもあるんですけれど、主人公たちが大人になってこの物語を振り返ったときに、どう感じているか。そういうイメージから書いていきました。


https://sp.wmg.jp/suda-keina/porte/#INTERVIEW 須田景凪 特設ページより 

上記コメントからも理解できるように映画主題歌ならではの要素を加味して、
頭を捻らせて作成されたんですね。
映画を見終ったあとの余韻、そして多くの場所で視聴されるという2点がミドル
テンポのスケール感ある今作を生み出したことを把握できました。

さて映画タイアップの内容について少し触れて見たいと思います。

映画「二ノ国」あらすじ

『妖怪ウォッチ』シリーズで知られるレベルファイブの同名人気ゲームシリーズ
を、百瀬義行監督がアニメーション映画化したものです。ある事件がきっかけ
で、現実の世界と隣り合わせにある“二ノ国“に迷い込んでしまった少年たちの冒険を描いています。

ストーリーの一部で考察に関係する部分を抜粋して説明したいと思います。

メインキャラクター3人と鍵を握るキャラクター1人が存在します。
・秀才で優しい青年ユウ
・元気溢れるスポーツマンのハル
・ハルの恋人であるコトナ

・異世界「二ノ国」に存在するコトナとそっくりのアーシャ姫

上記の4人が中心軸となって物語が進展していきます。
そしてユウは異世界のアーシャ姫に好意を寄せ大切にしたいと思うようになりま
す。

しかしユウ、ハル、コトナ、アーシャ姫にとって心痛となる掟の存在が知らされ
ることになります。

それはコトナかアーシャ姫のどちらかを犠牲にしなければならないという掟で
す(ざっくり説明なので厳密にいうと違った表現ですが)

どちらかを犠牲にするだけでも悩ましいのですが、別の点でもこの問題が複雑で
ややこしいものになっていきました。
それはハルはコトナを守りたい、しかしユウはアーシャ姫を守りたいという点な
のです。

両者は幼い頃から強い絆で結ばれていました。
しかし「この守るべきものの違い」が2人の友情を引き裂いていきます。

今作ではそのような「葛藤」「悲嘆」などが綴られています。
それではさっそく気になる歌詞の意味を考察していくことにしましょう。

タイトル『MOIL』とは

『MOIL』はさまざまな意味を持つ英単語です。
「コツコツ働く、せっせと働く、コツコツ仕事をする 激しく動き回る、混乱し
た様子で動き回る」といった意味が含まれています。

映画予告だけでも登場するメインキャラクターたちが、休む間もなく飛び回って
大切な人を守ろうとしている様子が映し出されていました。
最後に取り上げたMOILの意味である「混乱した様子で動き回る」は、まさに登
場人物たちの心情にぴったりあった表現でしょう。

特に守るべきものの違うユウとハルは、互いの決定が相手を傷つけることになる
という自覚を持っているので混乱したことでしょう。
守られる側のコトナとアーシャ姫もそれは同じことです。

躍動感のある登場人物に寄り添ったタイトルが設定されたのだと筆者は考えまし
た。

『MOIL』歌詞の意味

消失した面影と幼心

思い出すのは砂を噛む様な
茹だった焦燥と幼い白昼夢の続き

今となってはあの感触も笑えるほど
するり 手からこぼれてしまった

故に永遠に無垢を望み
雲間にまた目が向くのは何故

今回の考察では映画の登場人物であるユウハルを中心に
進めていきたいと思います。

ユウとハルは二人の幼い頃を回想していました。
何を思い出したのでしょうか。

「砂を噛む様な茹だった焦燥と幼い白昼夢の続き」でした。
つまり無味乾燥な日々に苛立っていた日々、そして2人仲良
く過ごしていた日々を同時に思い出していたのです。

若いころの思い出は「苛立ち」と「楽しい」が半分ずつ訪れ
るのでしょうか。
大人になるとどちらかに偏る感じがしますね。

ユウもハルもそうした確かに感じていたはずの感情を忘れて
しまったようです。

何かに熱くなれない、どこか無味乾燥な自分にがっかりして
いる様子が伺えます。
私たちもあまり良くない意味で「おとなになってしまった」
と口にすることがありませんか。

子供の時の高揚感や何があっても楽しめるあの感触は手の中
に残っていないのです。
時間が運び去ってしまったのか、自分の意志で忘れてしまっ
たのか本人も思い出せないでいることがありますね。

ユウとハルも「永遠に無垢を望み」ますがそれは叶いません。

盲目なる者に育つ別れの大樹

「あなた無しでは意味がない」
など感情は盲目だ 尚更また膨らむ欠落

生きていく度 より鮮明に
胸の底で別れが育つ様な気がした

故に懸命に腕を伸ばし
身勝手な光を追うのは何故

「あなた無しでは意味がない」とはユウにとっての
アーシャ姫、ハルにとってのコトナだと解釈しました。
それぞれが「守りたい人」を叫ぶことによって意思表示
をしていました。

上記のアクションは当人が友情関係を保つことより恋愛
感情を優先させたことを示しています(最後の展開は、、)

しかし一人の特別な対象に注力すると友人がなおざりに
なることもユウとハルは承知しています。
自分が盲目になっていることも無論承知しているのです。

それで自分の気持ちの赴くままに行動していると、心の中で
大切な人に別れを告げる準備が整うことも実感しています。
別れの気持ちが芽生え、それはやがて大樹のように育って
大きくなっていったのです。

そうした感情に押しつぶされそうになりながらも、大切な者
に手を伸ばす2人の懸命さに胸打たれるのではないでしょうか。

大人の代償―思いが風化する前に

大人になった 大人になってしまったみたいだ
左様なら 違う世界に交わる 雲にでもなりたい
明日がいつか 記憶になって 些細な言葉になる前に
今、募るこの想いを あなたへと伝えたいんだ

歌詞冒頭では幼き頃について綴られていました。
ここでは「大人になった なってしまった」という
実感について言及されています。

ユウとハルも子供の頃には「仲直り」「譲り合い」
「みんな仲良く」という当たり前の気持ちを持って
いたことでしょう。

しかし大人になって大人の事情が出来た今ではそう
した気持ちは失われてしまったように感じます。

自分たちは正当化によって自分のしたいことを押し
通している、そんな感覚に苛まれていました。

「左様なら」とは二つの意味が含まれていると考え
ました。

1つは読んで字の如く「そのとおりなら」という意味
です。
このフレーズの前の文脈から「大人になってしまった」
事実を受け入れその通りならという意味です。

2つめは「さようなら」と変則的に読む場合です。
この点も前の文脈に関連付けされていますから、大人に
なってしまったことを受け入れ身を引くという意味にな
るかと思います。

どちらも続く部分で「雲になる」ことを望んでいます。
ですから争う必要のない自由に漂う存在になりたいと、
ユウとハルが切望していることを理解できます。

複雑に絡み合う2人、そして守られる側である2人の物
語は今後どのように進展していくのでしょうか。
詳しくは映画をお楽しみに。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
守るべきものの相違が長年続いた友情を引き裂いていく、
そんな物語でした。
皆さんは日常でそういった経験をしたことがありますか。

筆者は、、、自粛したいと思います(苦笑)

歌詞全体はスケール感の大きい映画にぴったりと寄り添う
内容でした。
特に登場人物のことを綿密に観察し感情移入した上で、歌
詞を綴ったことが容易に伝わってきましたね。

ミドルテンポの心にスッと溶け入るメロディも映画の余韻
に寄与するものになったと思いました。

須田景凪さんの今後の活動と次回作に期待し注目していき
たいと思います。

素敵な作品を有難うございました。




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