須田景凪『はるどなり』歌詞の意味を考察・解釈

深く吸い込んだ 冷えた空気を
あなたに見つけて欲しいと願った

次第に心は形を変える
誰も傷付けない事を望んで

熱を持つ白の呼吸が
幽かに射し込む光が
偽りなく届けば良い

あなたの目が泳ぐ
思わず息が止まる
花弁がひとひら窓辺で踊る
優しく手が触れる
少し唇を噛む
昨日よりも深く呼吸をしていた

互いの気配を持ち寄る程
身動きは取れず寝苦しくなった

乾いた季節に中てられては
またしな垂れ 日は暮れる

擦れた記憶の眺めも
春隣を待つ期待も
今、有りのままの言葉で

あなたの背が垂れる
つられて胸が詰まる
寒い夜はただ寄り添いたい
当てなく歩は進む
あまりに時は過ぎる
些細な毒など覚えていられない

温い体温の隣で
酷い晴天に囚われ
確かな晩翠に見入る

甘い運命は恐ろしい
全てを優しく映してしまうから

あなたの目が泳ぐ
思わず息が止まる
花弁がひとひら窓辺で踊る
優しく手が触れる
少し唇を噛む
昨日よりも深く
誰より近くで
春を舞う姿で呼吸をしていた

歌詞考察の前に

人気アーティストである須田景凪さんの作品『はるどなり』が2020年1月24日に配信リリースされました。
同年1月9日に TOKYO FM『LOVE CONNECTION』にて同曲のフルが初オンエアされ注目されています。

また同曲はフジテレビ系『アライブ がん専門医のカルテ』主題歌として書き下ろされました。

上記ドラマは2人1人が生涯かかると言われている国民病「がん」をテーマにしたメディカル・ヒューマン・ストーリーです。

本作は日本のドラマでは初めて本格的な腫瘍内科にスポットをあてた完全オリジナル作品となっています。
医療現場の新たな一面を忠実に描き出した新世代ドラマとなっています。

そんなドラマタイアップとなる主題歌について須田景凪さんからコメントが寄せられていましたのでご紹介します。

◆ 須田景凪  コメント

今回、ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』の主題歌を担当させて頂きました。 自分の中にある命への価値観とリンクする描写が多々あり、ゆっくり丁寧に制作しました。 冷たくも温かい物語に添う楽曲になったと思います。 ドラマと共に楽しんで頂けたら嬉しいです。 「はるどなり」宜しくお願いします。

https://www.fujitv.co.jp/alive/introduction/index.html

重要な点となるのは「命への価値観」でしょうか。
がんは命を奪う痛ましい病気であり患者にとっても医療に携わる者にとっても胸を痛める存在です。

ドラマには救えなかった命、及ばなかった力、届かぬ願いなど冷たい部分もあります。
しかし「いま、誰かのために強く生きたい」との強く温かな願いを医療チームが持っていること、命に対して前向きな姿勢も観察できます。

そのような点を考慮に入れて今作が生み出されたのだと筆者は感じました。

曲調はどのような仕上がりになっていたでしょうか。

イントロのフェードインが仄暗い穴の奥から水が流れてくるような印象を持ちました。
どこか不気味でしかし何かを期待させるような不思議な感覚に包まれました。

それは命の「儚さ」と「尊さ」を両方伝えていたのかもしれません。
命があっという間に奪われてしまう不気味さ、命が救えるかもしれないという期待がイントロだけでイメージすることができました。

続くピアノも和音メインで構成されておりテクニカルやメロディアスな要素が省かれていました。
これからも「命」の重さをひしひしと実感することができました。

サビで加わるオーケストラはこれまで複雑だった気持ちが高揚し希望に満ち溢れる様子を表現しているようでした。

そんな素晴らしいメロディーにどんな歌詞が寄り添っているのでしょうか。
さっそく気になるタイトルと歌詞の考察を始めていきましょう。

タイトル『はるどなり』とは

タイトルに関して明確なコメントがされていましたので注目してみましょう。

タイトルは“春がすぐそこまで来ていること”を意味する言葉「春隣」のことで、壮大でビビッドでありながら聴く人全ての痛みに寄り添うような楽曲になっている。

https://www.fujitv-view.jp/article/post-34517/

ですからタイトル『はるどなり』春がもうすぐそこまで来ていることを表す「春隣」のことであると理解できます。

「春隣」とはいつ頃を指して用いられる用語なのでしょうか。
多くの場合まだ寒さが残る2月下旬を指して用いられます。

ポカポカした春爛漫な季節ではないことを念頭に置きたいと思います。

冬の冷たさも春の温かさも同時に感じる時期は、まさに冷たさと温かさを描いたドラマにぴったりのタイトルだと理解できます。

須田景凪『はるどなり』歌詞の意味

患者の想い

深く吸い込んだ 冷えた空気を
あなたに見つけて欲しいと願った

次第に心は形を変える
誰も傷付けない事を望んで

今回は一人の患者(性別を限定しない)を主軸に考察を進めていきたいと思います。

歌詞全体は一人の患者視点で綴られていると感じました。
「あなた」と表現されているのは医師(腫瘍内科医や消化器外科医など)として考えました。

患者が吸い込んだ「冷えた空気」とはなんでしょうか。
それはがんに対する「不安や恐れまだ孤独」を指すものと思われます。

「あなたに見つけて欲しい」という願いは「気持ちに感情移入して欲しい」という意味だと考えられます。

もちろん家族にも寄り添って貰いたいという想いもありますが、実際に手術にあたる医者に自分を理解してもらいたいと願うのは当然のことですね。

続く部分の「次第に心は形を変える 誰も傷付けない事を望んで」というフレーズはがん患者のリアルな声を反映しているようです。

実際に医療記録を幾つかのサイトから確認し患者の生の声や医師の見解を調査しました。

そこから次のような点が明らかになりました。

・患者は家族を心配させたくないあるいは傷つけたくないと考える

・家族は「第二の患者」

誰しも自分の病気のことで家族を煩わせたくはないと考えるものです。
筆者の知人にも隠しきれないほど状態が悪化するまで家族に言えなかった人もいました。

実際問題としてがん治療は無限とも思えるほどに時間とお金がかかります。
家族の気遣いや配慮が限界に達して倒れてしまうというケースもあります。

そうした点を考慮して「次第に心は形を変える 誰も傷付けない事を望んで」 というフレーズを考えると胸が締め付けられます。

がんと闘う患者が自分のためにすべてを投げうち体力また精神的に疲弊するのを見て「もういいよ ありがとう」というところを想像してしまいました。

余談ですが筆者の親しかった人が何人も数年の間にがんで亡くなりました。
妻を亡くした夫は「妻に子供のために使って欲しいから、、そう言われた」と喪失感を抱きながら語っていました。

死の淵に立たされた時の心境の変化や家族優先を決断する想いは本人にしかわからないでしょう。

生の証

熱を持つ白の呼吸が
幽かに射し込む光が
偽りなく届けば良い

ここでは患者の状態と希望が描かれています。

「熱を持つ白の呼吸」とは人が生きる証の1つを描写しています。
体温があることや呼吸をしている限り「幽(かす)かに」ですが希望の光が差します。

「偽りなく届けば良い」とは患者が感じる「生きたい」という願いや希望周囲の人や天にまで届いて欲しいと思っているのだと解釈しました。

こうした希望があるからこそ、完治が難しいと告げられた後も患者の家族は「どんな状況でさえ生きていて欲しい」と願ってしまうのです。
同時に「ずっと苦しむのを見ていられない」という気持ちも湧き上がってくるので複雑です。

不安と期待の中で春隣り待つ

乾いた季節に中てられては
またしな垂れ 日は暮れる

擦れた記憶の眺めも
春隣を待つ期待も
今、有りのままの言葉で

ここでは複雑な心境を抱きながらも状態が良くなることを希望する患者の様子が綴られています。

「乾いた季節」とは潤っていない日々、がんと診断され幸福感を感じれなくなった時期を指していると思われます。

「中(あ)てられて」とは「毒などのために身体が害を受ける」ことを意味します。
まさにがんによって奪われた幸せ奪われた日々が心身共に蝕んで行く様子を伝えています。

「しな垂れる」とは力なく何かに寄り添う状態を指します。
気力がなくなっていくのを感じながら日が暮れるということを伝えています。

「擦れた記憶の眺め」とは患者の遠い昔の記憶のことであり意識が朦朧とし始めていることを表現しているようです。
それでも鮮明に覚えていようと必死に努力していることも同時に伝わってきます。

「春隣を待つ期待」という表現はとても考えさせられます。
なぜ「春を待つ」ではないのでしょうか。

これは患者にとっての「春」つまり「完治などを含む望ましい状態」がまだ遠いことを伝えているように解釈しました。

もしかすると検査結果を待つ間、また「様子をみましょう」と言われたときのことを扱っているのかもしれません。

続く部分には上記の気持ちすべてを「今、有りのままの言葉」で伝えたいと患者が願っていることを理解できます。

前述の家族に黙っていようという心境を打ち消す形となり、本音は身近な人に伝えたいんだという点が強調されているように感じます。

昨日よりも「生きたい」

あなたの目が泳ぐ
思わず息が止まる
花弁がひとひら窓辺で踊る
優しく手が触れる
少し唇を噛む
昨日よりも深く
誰より近くで
春を舞う姿で呼吸をしていた

「あなたの目が泳ぐ」とは医師の心が動揺している様子を伝えています。

完治の見込みがないことが発覚した医師がそれを伝えるのを躊躇っているところを想定して綴られているのかもしれません。

動揺を見て取った患者は「思わず息が止まる」かのように感じ「なにか言いづらいことがある」ということを悟ったのでしょう。

続く部分の「花弁がひとひら窓辺で踊る」とは患者の「命の日数」を描写しているようです。

患者と共に医師も命の花の様子と変化を目の当たりにしています。
医師は患者に少しでも寄り添いたいと願い「優しく手」を差し伸べます。
言葉の面で医療の面でそうしていきます。

「少し唇を噛む」とはどんな心理状態を表しているのでしょうか。
それは「悔しさや憤りをこらえる」時にそのようなしぐさをします。

「なぜ自分が」「もっと生きていたい」「やり残したことが」そんな気持ちがそのようにさせたのかもしれません。

「昨日よりも深く」とは歌詞全体の中で最も力強い表現に感じました。
患者の昨日よりも「生きていたい」と強く願っていることが呼吸に表れていると解釈しました。

「誰より近くで 春を舞う姿で呼吸をしていた」の部分は医師が患者に対して思ったことを述べているように見受けられます。

医師は誰よりも間近に患者と接し観察して病気と共闘してきました。
患者は「春を舞う桜の花びら」のように美しく生き続けたことを語っているようです。

ここでの描写には「命の儚さ」が強調されているようには思えません。
力強く咲き誇った結果として舞っていると表現されていると解釈しました。

患者と医師が同じ空間で同じ空気を吸い今日を生きる。
それは2人にしか理解できない絆を育んだに違いありません。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
題材が「がん」だったので暗い面が全体的に多くなってしまいました。
執筆終わりにもう少し明るい内容に調整できなかったのかと反省しました。

それでも自身の歌詞から受けた印象を大切にありのまま記述させて頂きました。

「あなた」を家族にすることで別の解釈も出来ると思います。
病気と戦う人の気持ちに完全に寄り添うことはできませんが、今作が出来るだけ多くの患者さんの心を温めることを願って止みません。

須田景凪さんの奥深く温かみ感じる歌声はとても魅力的でした。
命の鼓動と気持ちの変化が声と共に伝達されてきました。

今後の活動と次回作に期待し注目していきたいと思います。
命への認識を新たにする素敵な作品をありがとうございました。

2 件のコメント

  • 私は末期のがん患者です。ドラマは自分が使っている抗がん剤の名前がでてきたりして、二話から見れなくなりました。主題歌だけは、ダウンロードして1日に何回も聞いています。まさしく歌詞の内容が、私の気持ち通りです。
    今年のオリンピックを観る事が目標でしたが、来年では叶いません。残念です。

    • クリスのママさんコメント有難うございます。
      コメントをお読みして、、しばらくタイプが止まってしまいました。

      来年が無いと言う現状、命の尊さと儚さ、病気の罪深さなどが頭を
      巡っていました。
      そして大変な状況下でこのサイトを閲覧して下さりコメントまで下さったこと、
      その事実が、、その事実が筆者の胸を突き刺し心を打ちました。。

      筆者には恩返しをすることができません。
      ただコメントをくださったこと、ご自身の経験を話して下さったことに
      感謝を述べることしかできません。
      本当に有難うございます!
      そして命ある限り日々への感謝とベストを尽くすことを決意します。。

      これからもSugar&Salt Musicを宜しく
      お願いします!

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