Suchmos『VOLT-AGE』歌詞の意味と考察〜新しい世界の平和を願う歌

Suchmos_volt-age

感じ取り合うのさ 漂うリズム 譲れぬイズム
月さびの世界 ひとりで歩く人たちのオペラ

Chanting now 風が吹けば
Show must be going on
四六時中 できるわけじゃない

On the pitch 聞こえるだろう
You’ll never walk alone
Across the space 星の数のように

心つなぐのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
置き去りにする そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
答えを出すのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
弾む星の音 その Heartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side

血を流さぬように 歌おうぜメロディ 自由のメロディ
手に取るのはギター 最新型のセオリー
We never take any arms

心つなぐのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
置き去りにする そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
答えを出すのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
弾む星の音 その Heartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side

Heartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
Heartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side

Chanting now 風が吹けば
Show must be going on
Sunrise blue 褪せたデニムのように

On the pitch 聞こえるだろう
You’ll never walk alone
Across the space 星の数のように

心つなぐのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
答えを出すのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side

Suchmosの『VOLT-AGE』は、2018年のNHKサッカーテーマとして制作され、2018年の第69回紅白歌合戦で演奏された曲です。

ロシアワールドカップに向けて、サッカーテーマとして制作された『VOLT-AGE』ですが、発表当時は、「サッカーの応援ソングには向いていない」という、不評の声もありました。

今回は、2018年第69回紅白歌合戦を前に、今一度、サッカーテーマとしての『VOLT-AGE』の評価を検証し、その歌詞を読み解きます。


選手をリスペクトする『VOLT-AGE』

『VOLT-AGE』は、NHKサッカーテーマの中でも特別な曲です。

ワールドカップイヤーのテーマ曲であり、日本が奇跡的な勝利をあげた、2018年6月19日の日本対コロンビア戦のハーフタイムに披露されて、多くの人の耳に届きました。

しかし、それまでのテーマ曲と違い、気分を高揚させる盛り上がりに欠けると、否定的な声が多くあがったのです。

『VOLT-AGE』の異質さ

歴代のNHKのサッカーテーマは以下のようになります。

  • 2002年 ポルノグラフィティ『Mugen』
  • 2004~07年 倖田來未『奇跡』
  • 2008年 岡本玲『地図にない場所』
  • 2009年 GIRL NEXT DOOR『Wait for you』
  • 2010年 Superfly『タマシイレボリューション』
  • 2011~12年 RADWIMPS『君と羊と青』
  • 2013年 サカナクション『Aoi』
  • 2014~16年 椎名林檎『NIPPON』
  • 2017年 ONE OK ROCK『We are』
  • 2018年 Suchmos『VOLT-AGE』

この中で、ワールドカップイヤーのテーマ曲は、以下の5曲です。

  • ポルノグラフィティ『Mugen』
  • 倖田來未『奇跡
  • Superfly『タマシイレボリューション』
  • 椎名林檎『NIPPON』
  • Suchmos『VOLT-AGE』

時代が近く記憶に残っているSuperflyと椎名林檎の曲には、疾走感があり気分を高揚させる、いかにもスポーツの応援ソング、といった感じがあります。

それに比べると『VOLT-AGE』は、分かりやすくキャッチーなサビもなく、盛り上がりに欠けるように感じられます。

しかし、熱心なサッカーファンである作詞者のYONCEを始めとするSuchmosが目指していたのは、選手と同じ緊張感を持って、私たちが試合に集中できる曲を作りあげることだったと思われます。

実際、海外のリーグ戦まで目を配るサッカーファンからは、『VOLT-AGE』はサッカーのことのことがよくわかっている、サッカー愛を感じさせる曲だと、高評価を得ています。


『VOLT-AGE』は音楽で表現された試合

『VOLT-AGE』は、キリキリと締め付けられるような、緊迫感のあるギターで始まります。緊張感のあるイントロは、これから大事な一戦が始まる、試合前の緊張を表現しています。

これは、世界で戦う選手たちの気持ちを反映したものです。

そして、試合が始まりますが、最初のAメロは、キックオフ直後の探り合いを表現しており、続くBメロで試合は走るように流れ始めます。

それに続くサビは、邦楽で一般的なキャッチーなものではありません。

この分かりやすい盛り上がりに欠けるサビが、多くの批判を招いたのですが、ここで表現されているのは、集中して真剣にゴールを狙う選手達の様子です。

2番目のAメロは、最初のAメロとリズムパターンが変わり、疾走感が表現されて、試合が動いていることを感じさせます。

2番目のサビの後は、長い間奏が挟み込まれますが、得点が決まる試合の様子を、早回しで見ているような雰囲気があります。

次の2番目のBメロは、Aメロと同じように、最初とリズムパターンが変わり、試合が決まり終了に近づいていることを感じさせます。

そして、一般的な曲にはない長いアウトロが、激戦の後の余韻を表現し曲は終わります。

歌詞のテーマは「連帯と平和」

感じ取り合うのさ 漂うリズム 譲れぬイズム
月さびの世界 ひとりで歩く人たちのオペラ

試合に向けて気持ちを高めて行くアンセムの「リズム」と、サッカーに臨む姿勢や考えである「イズム」を、それぞれのチームが「感じ取り合い」ます。

ただ自分が感じるのではなく、お互いに「感じ取り合う」ことに、相手へのリスペクトが込められています。

「月さび」は、めずらしい言葉で、「月」と「寂び」を結びつけた言葉の本来の意味は、夜明け後の明るい空に見える月の弱い輝きの美しさです。

しかし、ここでは、月の美しさではなく、どこか物寂しい雰囲気を表しているようです。

そして、「一人で歩く人たち」は、チームの中にいても戦いの中では自分自身と向き合わなくてはならない孤独な選手であり、その孤独な一人一人が「オペラ」のように壮大で美しい世界を、共に作りあげます。

Chanting now 風が吹けば
Show must be going on
四六時中 できるわけじゃない

On the pitch 聞こえるだろう
You’ll never walk alone
Across the space 星の数のように

チャントは、サッカーの応援で歌われる短いフレーズを繰り返す応援歌のことです。

日本代表であれば「バモニッポン」や「アイーダ」がポピュラーなチャントです。

「風が吹けば」=サッカーシーズンが始まれば、否応(いやおう)なしに試合は続いていきます。

そのなかでもワールドカップでの戦いは、「四六時中」いつでもできるものではありません。

競技場「Pitch」では、「You’ll never walk alone」の歌が聞こえます。

あなたは孤独ではない。

これは、イングランドプレミアリーグのリヴァプールFCのアンセムとして有名な、ジェリー&ザ・ペースメーカーズの代表曲のタイトルですが、あなたは孤独ではないというメッセージは、選手とサポータの連帯を示す言葉であり、また、すべての人に向けられた言葉でもあります。

そして、「space」=世界には、連帯する仲間が「星の数のように」います。


生きている証しHeartbeat

心つなぐのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
置き去りにする そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
答えを出すのは そのHeartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side
弾む星の音 その Heartbeat Heartbeat
The heartbeat by your side

戦いの激しい緊張と興奮で、心臓の鼓動「Heartbeat」が高まります。

心臓の鼓動は、生きていることの証(あか)しです。

そして、私たちは共に生きることで、相手を尊重し思いやる気持ちが生まれ、心と心がつながります。

「The heartbeat by your side」あなたのすぐそばで聞こえる鼓動は、共に生きる仲間が、すぐそばにいることを表します。

仲間は、時に戦う相手にもなり、自分を「置き去りに」して行きます。

しかし、「答えを出す」=結果を出すには、何かをやり遂げるには、仲間の存在が欠かせません。

「弾む星」はサッカーボールであると同時に、ボールのように、私とあなたをつなぐものです。

ともに心をつなぎ「平和」を願う

血を流さぬように 歌おうぜメロディ 自由のメロディ
手に取るのはギター 最新型のセオリー
We never take any arms

サッカーのサポータ同士の衝突や差別、日常の小さな争いから戦争まで、世界では、血の流れない日はありません。

しかし、ここでは争うのではなく、共に「自由のメロディ」を歌おうと呼びかけます。

手に取るのべきなのは、楽器やボールであり、人種や主義や性別などで対立する古い考えを超えた「最新型のセオリー」=新しい物事の捉え方です。

そして、私たちはどんな武器も手に取らない「We never take any arms」と、静かに宣言します。

ここで歌われるメッセージは。サッカーだけではなく、すべての人が武器を持たずに、平和につながることへの願いです。

タイトルでVOLTAGEがVOLT-AGEと、二つの言葉に分けて書かれているのは、これからは自分たちの世代=AGEが、サッカーを始めとするスポーツや音楽の中心になり、引っぱって行くという気持ちを表現したかったからだそうです。

そこには、自分たちの世代から、争いが絶えない古い世界を変えようとする願いが、強く感じとれます。


終わりに

「ボルテージが上がる」という表現は、興奮が高まることや、勝負が白熱することを意味します。

『VOLT-AGE』は、その興奮の高まりを、本当のサッカーのテンポで表現しています。

ロシアワールドカップのアンセムになったThe White Stripesの『Seven Nation Army』や、さまざまなスポーツの応援で歌われるQueenの「We Will Rock You」は、ミドルテンポで同じフレーズを繰り返し、気持ちを高める曲です。

これらの曲は、強く叩きつけるようなビートで、じわじわと相手を追い詰めるような、すごみや威圧感を感じさせますが、『VOLT-AGE』は、海外で応援の定番になっているこれらの曲を意識して作られています。

テレビのサッカーテーマには合わない、と多くの人が感じた『VOLT-AGE』ですが、この曲は、本当にサッカーが好きなYONCEならではの、本格的なサッカーソングです。

そして、そこに込められたメッセージには、武器ではなくボールを手に、お互いを尊重し連帯して平和を築いて行こうという、強い願いが込められています。

https://www.sugar-salt.com/entry/suchmos-voltage/

https://www.sugar-salt.com/entry/suchmos-808/



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