そらる『海中の月を掬う』歌詞の意味を考察・解釈

沈んでく身体がふと見上げた揺蕩う水面に
ガラクタの心を繋ぎ合わせて君の元へと

光も届かない 海底彷徨った 君に会いたかったの
もう顔も不確かで それでもどうして こんなに愛しいの

錆び付いた心臓
鼓動がまだ熱を覚えている

ねえ 君がくれた歌をずっと ここで歌おう
今は君に ただ君にだけ 届いて欲しい
冷たい海に凍える前に身体を抱きしめさせて
溢れる涙止めて欲しい 溺れてしまうから

海に浮かんだ月 掬いあげる勇気すらなかった
軽く握りしめる たったそれだけで消えてしまう気がして

はかなげに揺れてる 薄れる記憶と微笑む君は
今更手を伸ばすけど 残酷に綺麗で 遠すぎて

ねえ 僕はここで月を見上げて歌を歌おう
いつか君に ただ君にだけ 届いて欲しい
約束はもういらないから 僕を照らしていて欲しい
裸足のままで 忘れぬままで 朝の匂いの方へ

ざわめく波の音 ふと見下ろした揺蕩う水面に
淡く光る月が微笑んでいた そんな気がした


はじめに

『海中の月を掬う』とは2019年6月25日にネット上で公開された楽曲です。
同年7月17日リリースのアルバム「ワンダー」に収録されています。
また日本テレビ系「バズリズム02」の7月度オープニングテーマに決定しま
した(7月5日よりオンエア)

初回限定盤Aには今作の他に大人気となった「アンフェイクミー」のMV、な
らびにメイキング映像が収められています。
初回限定盤Bには「そらるが贅沢キャンプに行ってみた」「楓 -cover-」Studio
Sessionが収められておりどちらも魅力的な内容となっています。

さらにお財布に余裕のある方は3形態セットというものも存在しますので是非チ
ェックしてみて下さい。

今作のMVの内容をご紹介したいと思います。
海辺をメインに個性豊かな登場人物たちが現れます。
撮影場所はどうやら筆者の地元である千葉県のどこかの海辺のようです。
また海中を表現したCGが実際に深海にいるような気分にさせてくれます。

実際の海、そしてCGの美しさにそらるさんの美声が加わった贅沢極まり
ない作品を是非ご堪能下さい。

曲調は緩やかで上品なメロディを基調としています。
それはまるで深海魚が真っ暗な海をゆっくりと泳いでいるようです。
視聴している間も視聴後も、とてもリラックスできますよ。

それではさっそく歌詞の考察を始めていくことにしましょう。

タイトル『海中の月を掬う』 とは

「海中」とは字の如く海の中のことを指します。
「月」も空に浮かぶ、そう良く見るアレです(笑)

「掬う」という感じは日常であまり見かけないと思います。
なにかものを「手に取ってすくう」という意味合いがあります。

「海中の月」のイメージとしてはユラユラと揺れている姿でしょう。
それは「脆さ」「不安定さ」を見るものに印象づけます。

歌詞中ではそれを一人の女性に当てはめています。
MVに登場する髪の長い女性です。

登場人物の詳細については続く部分で触れていきます。

タイトルには主人公が失った彼女、もしくは自分から離れていった
彼女を想いの中で求め続ける気持ちや姿を描いたものと思われます。


『海中の月を掬う』歌詞の意味

心の残骸、紡いで

沈んでく身体がふと見上げた揺蕩う水面に
ガラクタの心を繋ぎ合わせて君の元へと

初めにMVの登場人物を紹介します。
・主人公(鬼のような仮面)
・女性(素顔、イカもしくは甲殻類のような仮面)
・子供(鬼の面に長い触手が加わった仮面)
・老人(ドクロの仮面)
・そらるさん(かっこいい通り越して美しい人)

今回は一人の男性主人公を主軸に考察を展開していきます。

彼は歌詞冒頭で比喩を用いて自分の心情を明らかにしています。
「沈んでいく身体」とは好きだった彼女を失ったもしくは離れて
行った事実を受け入れられないことを示唆しているようです。

心が文字通り沈み浮上できない状態であることが理解できます。
「揺蕩う(たゆたう)」とは水面にユラユラと揺れて定まらない
様子を伝える言葉です。
さらに「気持ちが定まらずためらう」という意味合いもあります。

そう、彼は彼女のことを思い続け心が不安定であり身体がばらばら
になりそうなくらいの状態でした。
「ガラクタ」もはや正しく機能しない心を必死に繋ぎ合わせてもう
一度彼女の再会を希望しているのです。

MVでは男性(鬼の仮面)が子供(鬼と長い触手)に助けられて焚火
している様子が描かれていました。
なにかのきっかけで浮上できたという点を浮き彫りにしているのだ
と考えられます。

海底で愛を唄う

光も届かない 海底彷徨った 君に会いたかったの
もう顔も不確かで それでもどうして こんなに愛しいの

錆び付いた心臓
鼓動がまだ熱を覚えている

主人公の心には「光」つまり希望が届きません。
真っ暗な海底を彷徨うかの如く彼は先の見えない明日を独り
過ごしていました。
「君」という光を求めてフラフラと弱々しい足取りで。

「もう顔も不確かで」というフレーズに注目してみましょう。
これは彼が彼女を失ったあるいは彼女が離れていってからだ
いぶ時間が経過していることを示唆しているようです。

それでも彼の想いは彼女を離れられずにいます。
ガラクタで製造された心の古びたエンジンが微かに動くのを
彼は実感していたに違いありません。

冷え切った海底で愛を唄う彼の心にそこに無いはずの「温度」
が存在していました。

MVではモノクロの回想で彼女との日々が演出されていました。


君を救うことも、掬うことも

ねえ 君がくれた歌をずっと ここで歌おう
今は君に ただ君にだけ 届いて欲しい
冷たい海に凍える前に身体を抱きしめさせて
溢れる涙止めて欲しい 溺れてしまうから

海に浮かんだ月 掬いあげる勇気すらなかった
軽く握りしめる たったそれだけで消えてしまう気がして

「君がくれた歌」とは主人公が彼女と付き合っていた頃に
教えて貰った歌、あるいは会話のことだと思われます。
文字通りその時に教わった歌を歌ったのかもしれませんし
「こんな会話したよね」と問いかけたのかもしれません。

しかし彼女のいない空間にそれらを呟いても虚しくこだま
するだけでした。
彼はなにもかも届かないのだと知った時に海中で冷え切った
身体のようになりました。

自分の涙で溺れそうなほど彼の心は悲しみで充満していたの
です。

頭の中に思い浮かべた彼女は「海に浮かんだ月」のように思
えました。
もう一度会って抱きしめたい、そう考えてもその理想は簡単
に握りつぶされてしまうように感じたからです。

そして彼には自分になにか原因があるので彼女は離れていっ
たのだとも考えているのかもしれません。
もう一度、彼女と会った時に自分の接し方で彼女を傷つけて
しまうと心配している歌詞にも捉えられるからです。

MVでは仮面をとった主人公と女性が海辺でダンスを踊って
います。
これは二人の上手くいっていた期間を表現しています。

しかしダンスのあと抱きしめ合った二人でしたが彼女は彼の
前から姿を消して離れていきます。
このシーンはこれから関係を深めようとした矢先に決別した
という事実を裏付けているのだと筆者は解釈しました。


月のように見守っていて

ねえ 僕はここで月を見上げて歌を歌おう
いつか君に ただ君にだけ 届いて欲しい
約束はもういらないから 僕を照らしていて欲しい
裸足のままで 忘れぬままで 朝の匂いの方へ

ざわめく波の音 ふと見下ろした揺蕩う水面に
淡く光る月が微笑んでいた そんな気がした

終盤の歌詞では主人公が彼女との再会を諦めたことを
伝えています。
「僕はここで月を見上げて歌を歌おう」と彼女が月の
ように手の届かない所にいることを認めています。

「約束はもういらない」とはまた会う約束のことです。
「僕を照らしていて」とは自分が強くいられるよう想
いの中で希望になっていて欲しいと願っています。

上記の表現すべてから彼が彼女との再会、そして共に
寄り添って歩んでいくことを望まなくなったことを示
唆しているようです。

それでも彼女に忘れないで欲しいとの強い気持ちはあ
ります。
そしてどこかで、そう月のように自分を見守っていて
欲しいとの願いだけは揺らぐことはありません。

水面に揺れる彼女という月が掬えないと悟ったとき、
皮肉なことに一番綺麗に見えるのでした。。

まとめ

綺麗で壮麗である作品に心が洗われたような感覚を覚えました。
筆者は千葉のどこの海なのかずっと気になっていましたが、しっかり
MVを見ていましたよ(笑)

誰しも真っ暗な海底に自分独りだけ漂うような感覚を抱いたことがあ
るのではないでしょうか。

特に今作では「失恋」「破綻」といった心痛を取り上げていました。
こうした経験をすると心が癒えるまでに長い時間が必要になってくる
かもしれません。

自分と一緒には歩んでいけないと悟ったときに、想いの中でだけでも
一緒にという願いは非常にリアルでした(ぁ、泣いてる)

そらるさんの次回作と今後の活動に期待し注目していきたいと思いま
す。

素敵な歌声、そして目と耳を癒す最高のナンバーを有難うございました。