椎名林檎&櫻井敦司『駆け落ち者』歌詞の意味を考察・解釈

ああ透明になる 追っ手を撒いて
さあいよいよ突破口通過しようか
正反対の番同士ついに実体を匿い合っている
お前は深い緑色をして 確か私は荒い紫色して
自由は欲しくない ずっと奪っていて欲しい
そう元来完成しているの


ああ鮮明になる 暫定ターゲット
さあいよいよ大気圏脱出しようか
正反対の番同士とうに特性を失い切っている
お前は深い海底へ ±私は荒い山頂を埋めて
余裕は欲しくない もっと塞いでて欲しい
ね丁度いいだろう 全然余ってないだろう
そう本来完成しているの
酸性と塩基性らしい


pHはななのままむすび付くまま


迷って欲しくない ずっと選んでいて欲しい
依存し合っていて やっと補完し合っていて
もう生涯完成しているの
宣言したい


ハロー真空地帯!グッバイ世界!


はじめに

『駆け落ち者』とは2019年5月2日にネット配信された楽曲です。
V系の先駆者であり女王である椎名林檎さんと1980年代に人気を炸裂させた
BUCK-TICKのボーカリスト 櫻井敦司さんの夢のコラボが実現しました。

ネットでは「なぜこの二人が?」という疑問の声もささやかれていましたが
その答えは本日放送されたミュージックステーションで椎名林檎さんによって
明らかにされました。

「アルバムに危険な場面を描きたくて、危なっかしい表現をするにはこの方
しかいないと思って(笑)」とコメントされていました。
このコメントに櫻井敦司さんは「なぜ僕なのかと最初わからなかったんです
けども、、、」と言葉を返していました。

それでも続くコメントには今作が生まれるに至った訳も語られていました。
「林檎さんから櫻井さんをイメージして曲を作りましたというメッセージを
頂いたので、、、光栄に思いました」と笑顔でコメントしていました。

本記事の表題に映るお二人の立ち絵も「女王」と「魔王」のタッグという強
烈なインパクトを与える仕上がりになっていますね。
櫻井敦司さんを想う椎名林檎さんの熱い歌詞はどのように仕上がっているの
でしょうか。

気になる歌詞をさっそく読み解いていきたいと思います。

タイトル『駆け落ち者』とは

タイトルから異彩を放っていますね(汗)
「駆け落ち」とは「親から結婚の許可を得ることができない男女が、結婚や同棲
をするためにひそかに一緒に逃げ隠れすること」を指しています。

今作の歌詞全体を考慮すると無論、歌い手のお二人が駆け落ちする話ではないの
だということが理解できます。

念頭におきたい点としては駆け落ちの意味する「許可を得ることができない=認
められない」という状態を自分たちに当てはめているという点です。

今やビッグアーティストとして実力を認められているお二人ですが、ブレイク前
は誰とも異なる方向性と音楽性に周囲から受け入れられない時期もあったようで
す。
お二人のキャラも万民受けするようなものではなかったのでしょう。

そんなお二人が「他者の受け入れを意識せずに互いを認め合い尊重し合う」とい
う点が今作の根幹を成すのだと筆者は考えました。


『駆け落ち者』歌詞の意味

個性と無個性

ああ透明になる 追っ手を撒いて
さあいよいよ突破口通過しようか
正反対の番同士ついに実体を匿い合っている
お前は深い緑色をして 確か私は荒い紫色して
自由は欲しくない ずっと奪っていて欲しい
そう元来完成しているの

ここでは三色の色が登場しています。
「透明」「深い緑」「荒い紫」です。
そして「お前」と呼んで「深い緑」で
表現しているのは櫻井敦司さんでしょう。

対して「私」と称し「荒い紫」で表現し
ているのは椎名林檎さんでしょう。

筆者は気になり色相環図を調べました。
そして2色の性質について理解できたこと
が2つありました。

1つは「緑」も「紫」も「中性色」である
という点です。
もう1つは「緑」と「紫」は「補色」の関
係にあるという点です。

補色とは正反対でありながら互いの色を最
も際立たせる色の組み合わせでありファッ
ションにおいても重視される点です。

さらに補色は二種の色の光を適当な割合で
混ぜると白色光になり、その一方の色のこ
とを指します。

この点から歌い手のお二人が正反対な性格
でありながら深い関係にあり互いを際立た
せる存在であることを表現しているのだと
解釈できます。

さて歌詞冒頭で述べられている「追って」
とは自分たちを認めようとしない「他者」
を指すのだと思われます。

椎名林檎さんも櫻井敦司さんも「他者」か
ら反対されないように「透明」つまり「無
個性」でいようと思った時期があったので
しょうか。

二人は「自由」つまり他者が作り出す偽り
の自由を欲したりはしません。
そして「自分たちが願う本当の自由」は
最初から自分たちの内にあると認めます。

緑と紫はまさに「個性」の象徴でありこの
2色が他者によって染められることは決して
ないのでしょう。


過不足ない生き方

ああ鮮明になる 暫定ターゲット
さあいよいよ大気圏脱出しようか
正反対の番同士とうに特性を失い切っている
お前は深い海底へ ±私は荒い山頂を埋めて
余裕は欲しくない もっと塞いでて欲しい
ね丁度いいだろう 全然余ってないだろう
そう本来完成しているの
酸性と塩基性らしい

pHはななのままむすび付くまま

ここの歌詞では大きく分けて2つの要点に言及して
います。
1つは「椎名林檎さんと櫻井敦司さんの生き方が正
反対」であるということです。

2つめは「その生き方に過不足を感じていない」と
いうことです。

その点が「海底と山頂」の対比、+-の記号、「全
然余っていない」というフレーズから理解できます。
これらはすべて「過不足ない状態」を表現している
ように筆者は感じました。

歌詞の最後に自分たちは最初から完成しており他者
から余分な要素を加えられることも奪われることも
必要ないことを述べているのです。

さらにph(ペーハー)7を用いて二人が「中性」で
あることを再度強調しています。
酸性でもアルカリでもない属性を持つことを自分た
ちに重ね合わせている点に作詞の技量を感じます。

個性の共存―永遠のサンクチュアリ

迷って欲しくない ずっと選んでいて欲しい
依存し合っていて やっと補完し合っていて
もう生涯完成しているの
宣言したい

ハロー真空地帯!グッバイ世界!

ここで椎名林檎さんは櫻井敦司さんに「自分のような
個性派」をいつでも受け入れて欲しい、そして生き方
を迷うのではなく「選びとって欲しい」と願っている
ように筆者は感じました。

容姿や能力面でも2以上のお二人であると感じるので
すが、個性の強い人たちにとっては0.5の自分と0.5の
相手でようやく1でやってける感覚があるのでしょうか。

だとすればたいへん謙虚な考え方であり尊敬できると
思います。

歌詞の最後に突如として現れる「真空地帯」とはなん
でしょうか。

それは2018年にデビュー20周年を迎えた椎名林檎さ
んが同年5月17日に行った全国ホールツアー「椎名林
檎と彼奴等の居る真空地帯-AIRPOCKET-」からとら
れたものでした。

その時の自分とライブメンバーを自分の最高の思い出
として受け入れ大事にしていく気持ちが歌詞で示され
たのだと思いました。
彼女にとってライブこそが永遠のサンクチュアリです。

無個性な人たちをまとめて「世界」と表現し、彼らに
手を振り「グッバイ」と一蹴しているようにも感じま
した。

椎名林檎さんにとって櫻井敦司さんの存在はとても貴
重であると同時にお互いの生き方が重なり合うことは
決してないのでしょう。

正反対でありながらお互いを際立たせるなんとも言え
ない愛憎模様は筆者を含め多くの人たちに理解できな
い次元なのかもしれませんね。

まとめ

椎名林檎さんの櫻井敦司さんに対するラブコールとし
て捉えることができたと思います。
それでも一般的に知られているラブコールとはかなり
違って表現されていましたね。

自分たちがいかに個性的であるかを色彩や化学で例証
している点やはっきりと「必要だ」と言わない点から
もそう言えます。

それでも「好き」とか「愛してる」という言葉を超越
した思い入れを歌詞全体から感じることができました。

これは筆者の個人的な推測なのですがお二人の音楽に
おける派手な衣装やアグレッシブでインパクトのある
プレイスタイルの背後にはセンチメンタルな部分が隠
されているのかもしれませんね(あくまでも推測)

なにはともあれ奥深くそれでいて印象に残る歌詞と鮮
烈な歌声に感謝したいと思います。

お二人の今後の活動と次回作に期待し注目していきた
いと思います。