サカナクション『新宝島』歌詞の意味・考察と解説


次と その次と その次と線を引き続けた
次の目的地を描くんだ
宝島

このまま君を連れて行くと
丁寧に描くと
揺れたり震えたりした線で
丁寧に描く
と決めていたよ

次も その次も その次もまだ目的地じゃない
夢の景色を探すんだ
宝島

このまま君を連れて行くと
丁寧に歌うと
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌う
と決めてたけど

このまま君を連れて行くよ
丁寧に描くよ
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌うよ

それでも君を連れて行くよ
揺れたり震えたりした線で
描くよ
君の歌を


はじめに


2015年に発売されたサカナクションの11枚目のシングル、『新宝島』。
ベースの草刈愛美の産休によりおよそ一年間の休止期間を経て発表されたこの曲。
漫画家を目指す二人の青年を描いた映画「バクマン。」の映画音楽として起用されたことでも大いに話題になりましたが、その歌詞はどのようなものなのでしょうか。

歌詞考察


宝島とは


次と その次と その次と線を引き続けた
次の目的地を描くんだ
宝島


一番Aメロです。
まず「宝島」という言葉を解説いたしましょう。
これは手塚治虫が1947年に発表した単行本「新宝島」のことです。
言わずもがなではありますが曲のタイトルにもなっています。
サカナクションのボーカル、山口一郎がインタビューで下記のように語っていることからも手塚治虫の「新宝島」のことを指しているのは明らかです。

主題歌のタイトルは、戦後日本マンガの出発点と言われる手塚治虫さんのマンガの題名から借りたもの。いまの日本の音楽シーンにとって、新宝島ってどんな存在になるのか・・・。漫画史の礎となるパイオニア的な存在と、音楽との接点を探りながら、生まれた楽曲です。

引用:https://woman.excite.co.jp/article/lifestyle/rid_Cinemacafe_34763/


上記のインタビューにあるように「新宝島」は戦後日本マンガの出発点と称される傑作
そんな作品を目的地とし「次と その次とその次と 線を引き続けた」とひたすら線を引く、つまりマンガを描いているという情景がここでは描写されています。
先述したようにこの曲は二人の青年が漫画家を目指す姿を描く映画「バクマン。」の映画音楽。
そんな映画の内容に合わせてこの曲の主人公は漫画家を目指す青年です。

その道は険しく


このまま君を連れて行くと
丁寧に描くと
揺れたり震えたりした線で
丁寧に描く
と決めていたよ


一番サビです。
ここで歌われるのは漫画家を目指す、ということの厳しさです。
当然ですが漫画家にはシナリオ力、画力、想像力など様々な能力が必要です。
そしてそれらすべてを高い水準で併せ持っていたとしても、時代に合わないものであるなど運が悪ければヒット作に恵まれない、そもそもデビューできないと言ったこともよくある話。
そんな一か八かの賭けを『新宝島』の主人公は行なっているのです。
また「このまま君を連れて行くと」とあるように漫画家として大成して養いたい恋人もいるのでしょう。
恋人を養いたい気持ち、そして漫画家という職業の難しさ。
それらがプレッシャーとなり「揺れたり震えたりした線」として表れるのです。
しかし、主人公はそれでも「丁寧に描くと決めていたよ」とあくまでも志高く漫画家を目指しているということがわかります。

新宝島にたどり着くまで


次も その次も その次もまだ目的地じゃない
夢の景色を探すんだ
宝島


二番Aメロです。
一番では様々な重圧にもめげず、漫画家を目指す主人公のストイックな姿が描かれました。
このパートで歌われるのもそんな主人公の漫画に打ち込む姿です。
「次も その次も その次も まだ目的地じゃない」と着実に前に進んではいるけれどまだまだ目的地にたどり着けていない様子が描写されています。
この様子だと漫画家デビューもしくはすでに連載を持っていたりもするのでしょうか。
しかし、主人公の目的地はあくまで手塚治虫の「新宝島」。
日本漫画史の原点と呼ばれるあの傑作に比肩する作品を描くまで漫画家人生は終われないということが歌われます。
「夢の景色を探すんだ」という部分に主人公の気迫が伝わってきますね。


主人公と山口一郎の思いがリンクして


このまま君を連れて行くと
丁寧に歌うと
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌う
と決めてたけど

このまま君を連れて行くよ
丁寧に描くよ
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌うよ

それでも君を連れて行くよ
揺れたり震えたりした線で
描くよ
君の歌を


二番サビ〜大サビです。
一番サビと大きく異なる点は「丁寧に歌うよ」という歌詞が登場する点です。
この曲の主人公は「新宝島」に並ぶ傑作を世に残そうとする青年。
それであれば一番サビのように「丁寧に描く」という歌詞が妥当なはずです。
これは一体誰の言葉なのでしょうか。
答えはサカナクションのボーカル、山口一郎の言葉であると考えられます。
今でこそ押しも押されもせぬトップアーティストとなったサカナクションですが売れるまでには大変な苦労がありました。
あるインタビューで山口一郎は「一度はミュージシャンの夢を諦め 写真家を志したこともあった」と語っているほどです。
しかし、それでもめげずに音楽活動を目指してきたからこそ日本有数の人気バンドとしての今があるのです。
ストイックに漫画家を目指す青年を描くにつれ、アーティストとしての自分の思いも吐露したくなったのでしょうか。
「このまま君をつれて行くよ 丁寧に描くよ」「揺れたり震えたりしたって 丁寧に歌うよ」とこの曲の主人公と山口一郎が立て続けにその思いを語る部分はそれぞれのアーティストとしての矜持が感じられ、胸が熱くなります。

おわりに


今回はサカナクションの『新宝島』の歌詞を考察いたしました。
結果、この曲ではストイックに漫画家を目指す青年の姿、そして山口一郎のアーティストとしての思いが描写されていることがわかりました。
何か一つ、熱心に打ち込める何かをもつ人間たちの姿というのは美しいものだなと思います。

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