サカナクション『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』歌詞の意味・考察と解説


バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心
バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心

月に慣れた僕がなぜ 月に見とれたのはなぜ
歩き出そうとしてたのに 待ってくれって服を掴まれたようだ

バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心
バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心

月に慣れた君がなぜ 月を見ていたのはなぜ
僕の左手に立ち 黙ってる君の顔を思い出したよ

気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色
壁が鳴り痺れるチェロ すぐに忘れてしまうだろう

バッハの旋律をひとりに聴いたせいです こんな心
バッハの旋律をひとりに聴いたせいです こんな心

忘れかけてたのになぜ 忘れられないのはなぜ
歩き始めた二人 笑ってる君を顔を思い出したよ

気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色
壁が鳴り痺れるチェロ すぐに忘れてしまうだろう

気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色
壁が鳴り痺れるチェロ すぐに忘れてしまうだろう


はじめに


2011年に発売されたサカナクションの5枚目のシングル、『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』。
同一のビートが繰り返されるダンスミュージックの様相を呈しながらも、J-POP然としたメロディを感じることが出来るサカナクションのフロントマン、山口一郎のセンスが十二分に発揮されているこの曲。
果たして歌詞はどのようなものなのでしょうか?
早速、歌詞解説とまいりましょう。
なお、この曲は明確にAメロ、Bメロなどパートが分かれておりませんが、歌詞説明を明瞭にするため便宜的にパート分けをして解説を行います。
予めご認識の上、お読みいただけますと幸いです。

歌詞解説


なぜ月に見とれるのか


バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心
バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心

月に慣れた僕がなぜ 月に見とれたのはなぜ
歩き出そうとしてたのに 待ってくれって服を掴まれたようだ

バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心
バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心

月に慣れた君がなぜ 月を見ていたのはなぜ
僕の左手に立ち 黙ってる君の顔を思い出したよ


一番Aメロ〜Bメロです。
繰り返される「バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心」という歌詞。
こんな心、とは一体どのようなものなのでしょうか。
歌詞中には明示されていませんが、ヒントは随所に散りばめられています。
例えば「月に慣れた僕がなぜ 月に見とれたのはなぜ」という部分。
月は日本を代表する文豪、夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したように恋愛のモチーフとしてよく使われるものです。
見慣れてしまったはずの月に何故か見とれてしまうというのは恋をした、ということの比喩表現なのではないでしょうか。
つまりこんな心とは恋をした心のことを指すのですね。
また「月に慣れた君がなぜ 月を見ていたのはなぜ」という歌詞から相手と両思いであることが分かります。
月を見上げながら互いを思う。なんとも素晴らしいシチュエーションですね。
そして照れ隠しからか恋に落ちた理由をこう言い訳するのです。
「バッハの旋律を夜に聴いたせいです」と。
夜に始まる恋を洒脱に表現した名詞です。


難解な詩にみる別れの表現


気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色
壁が鳴り痺れるチェロ すぐに忘れてしまうだろう


一番サビです。
「君の色」「痺れるチェロ」・・・。
一見しただけでは全く意味がわかりません。
しかし、答えを紐解く鍵はやはり歌詞の中にあります。
まず君の色が「部屋に吹くぬるいその色」と言い換えられていることに着目しましょう。
ぬるい、ということからあまりその色の印象が薄いということが分かります。
また、「すぐに忘れてしまうだろう」と続くことからその印象が更新されないことが示唆されています。
これらから「君の色」とは部屋にいる時に思い出す別れてしまった恋人との思い出のことを指すのではないでしょうか。
そして、「壁が鳴り痺れるチェロ」も「すぐに忘れてしまうだろう」という歌詞にかかっていることから、同様に恋人との思い出のことを指しているのではないかと考えられます。
二人の間に何があったのかということまでは分かりませんが、Aメロ〜Bメロのロマンチックな雰囲気からは考えられないような歌詞ですね。


「こんな心」の意味も変わって


バッハの旋律をひとりに聴いたせいです こんな心
バッハの旋律をひとりに聴いたせいです こんな心

忘れかけてたのになぜ 忘れられないのはなぜ
歩き始めた二人 笑ってる君を顔を思い出したよ


二番Aメロ〜Bメロです。
一番では「こんな心」とは恋心を指していました。
しかし、サビで明らかになったようにその恋は既に終わってしまっています。
ここで歌われる「こんな心」とは一体なんでしょうか。
答えは悲しいかな、恋心なのです。
このパートでは「笑った君の顔」を「忘れかけていたのになぜ 忘れられないのはなぜ」と歌われます。
このことからもう別れてしまったけれど、恋心がまだ消えていないために在りし日の恋人の姿を思い出してしまう苦しい胸中を読み取ることができます。
「バッハの旋律を夜に聴いたせいです こんな心」と歌詞自体は全く同じであるにも関わらず、一番とは全く意味が異なっているのが印象的なパートです。


錯綜する思い


気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色
壁が鳴り痺れるチェロ すぐに忘れてしまうだろう

気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色
壁が鳴り痺れるチェロ すぐに忘れてしまうだろう


二番サビです。
歌詞は一番サビと同様。
しかし、二番Aメロ〜Bメロでは恋人との思い出を「忘れられないのはなぜ」とあるのに対して、ここでは「すぐに忘れてしまうだろう」とあります。
この矛盾は恋の難しさ、不条理さを表しているのだと思います。
終わってしまった恋なんて本当は忘れたいけどやはり忘れられないという苦悩。 「忘れてしまうだろう」と仮定の表現であることからも現実には恋心を忘れられていないことは明らかですね。
ちなみに各小節の終わりの言葉はすべて「色」、「チェロ」、「だろう」とすべて語尾が「ろ」で統一されていて言葉の響きの良さも意識されています。
歌詞の内容以外の面でもこだわりを感じさせますね。


おわりに


今回はサカナクションのダンスナンバー『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』の歌詞解説を行いました。
その結果、恋をした際の見事な比喩表現と別れてしまった際の苦しい胸の内の心理描写が綴られていることが明らかになりました。
軽妙なダンスナンバーにあえてこのような歌詞をあてることによりその内容がより際立つ効果が出ているので、ぜひ『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』を聞く際はこの点を注意して聞いてみて下さい。

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