煮ル果実『キルマー』歌詞の意味を考察・解釈

かつて深窓の少女は無自覚モーション
痛い位に溢れた狂気を吸って
凄惨な修羅場で一糸も二糸も纏わず
熟れる 獲る 得る 煩悶

下賎の面から遥々 韜晦(とうかい)
外連 面被 備えた令嬢のvirgin
群衆は目をつけ矢鱈滅多ら
耽溺して選り択り抜く

先見の明は低迷だ
嘆願の甲斐なくhooligan
煽情が明滅 酩酊
奪って去って嗤う

今が生涯 最の底辺だって憂いたくなるよな
都合良く天網なんか存在しないやって
判明したのよ 隷従 隷従
はいはいこれが運命だって
吐き捨てる分からず屋
そこに愛は無い 愛は無いと 喚いていた
破られたベルベットロープ

宵 ふらふら嘆いて歩いていた
救いなど無いと解っていた
全てを悟ってしまいそうだった
御伽噺みたい だって 観客様は
さぞ楽しいでしょうね 五月蝿い
『熱が潰えるまで仕様がないから観ててやる』

制裁も毒牙も畏れぬ馬と鹿に
付ける薬餌は無い

爛々騒ぐ有象無象すり抜けて
淡々放つ言動
救いのない
渇いた眼には業火が咲いた
そうね さよなら

今が生涯 最の底辺だって憂いたくなるよな
都合良く天網なんか存在しないやって
判明したのよ 隷従 隷従
安全策は無い この地獄から
抜け出したいのさ
此処に愛は無い 愛は無いと 願っていた
少女は舞った

『仕様がない』ってもう一回ぐらい
言わせてやるよ なあ
卦体な衝動 見抜けないで
油断 クランベリーに溺れる
不埒なhooligan
はいはい何も問題ないわって 吐き捨てる少女が
故に愛は無い 愛は無いと
悟って歌う
断ち切るわベルベットロープ

戻らないベルベットロープ

歌詞考察の前に

『キルマー』とは2019年11月22日にネット上で公開された楽曲です。
人気ボカロP煮ル果実さんの作品であり、歌詞や世界観が話題を呼んでいます。

動画再生回数は公開から数時間で10万を超える人気ナンバーです。

前作『紗痲(しゃま)』を episode 1 とし動画コメント欄には「Trilogy」つまり「三部作」であるとの予告がなされていました。

ですから今回は前作『紗痲』と比較しながら考察を進めていきたいと思います。
『紗痲』の詳しい内容は下記の考察記事をご覧ください。


煮ル果実『紗痲』歌詞の意味を考察・解釈

2019.12.03

煮ル果実さんの映像が毎回1本の映画のようであり、ストーリーや登場人物への考察は多岐に渡ります。

動画コメント欄は感想と並ぶほどの考察コメントが集まっており、作品に対する注目度の高さがうかがえます。

曲調はハイテンポで軽快なメロディーで構成されています。
物語の躍動感や興奮を忠実に伝える音使いだと感じました。

今回は登場人物と前作比較を終えてから歌詞考察を始めていきたいと思います。

~登場人物~

・Hanna Mosco(Kalmia)
今作と前作のヒロイン。ピンクの長髪、赤眼、2本の角。
※角や長い髪、変わった目の色を持つ部族で常に人目を避けて生きてきた。
“Kalmia”はGuiから与えられた名前。

・Armis
看守の1人であるピンクの3つ編み女性。赤眼。2本の角。両目の下にホクロ。
Livaraよりも前にアラクランに捕えられガイ仕えている。密かにガイに好意を寄せている。

・Gui Oakes
組織“Alacran”(アラクラン) の頭。黄眼。
※「アラクラン」(スペイン語で蠍―さそり―)

・Livara
(前作のclay pool )
今作と前作に登場。看守の1人。白髪の3つ編みの女性(後に解説)緑眼。

・Ron
Guiの手下。赤眼。ボスであるGuiの指示で動いている。
大雑把な性格故にガイに怒られる。

(※上記情報はWOOMAさんインスタグラムより追記)

以上の5人がメインとなって物語が展開されていきます。

続いて時間軸について考察を述べたいと思います。

今作『キルマー』は物語の最初であり、前作『紗痲』へと続いていくのだと筆者は解釈しました。

以下のようにストーリーの流れを組み立ててみました。

―幼少期―

幼い頃、Hanna Mosco(以下Hannaと表記)とLivaraに該当する人物は同じ教会に居たと考えらえられます。

舞台となる街の治安は悪く、蠍の刺青が入ったマフィアが女性や子供、そして角や赤眼を狙っていました。
まだ幼かった2人は教会に匿われていたのでしょう。

―教会襲撃から監禁―

ある時、Gui率いるアラクランが教会に押し入りHannaたちを襲います。
この時、Guiの銃によってHannaの姉と思われる人物が撃たれて殺されます。

姉と推測したのは、庇うという勇敢な行動と母というには歳の差が無かった点を根拠にしています。

Ronに捉えられたHannaはGuiの処分を待つ間、牢屋に監禁されます。
その時の見張りはLivaraとArmisでした。

Armisはこの時の襲撃かそれ以前かは定かではありませんが、Guiの下で看守の役割を強要されていたものと考えられます。

Guiの中で瞳の色や性別でランク付けがされていたようにも感じます。
とりわけ赤目の女性は虐げの対象になっているのでしょう。
しかし容姿が美しければ利用するという考えも映像から理解できます。

後にHannaはGuiに性関係を強要されます(ベッドシーン)
この時、彼女の足には蠍の刺青が入れられたのだと解釈しました。

例えるならワンピースのアーロンがナミの肩に仲間の証となる刺青を掘ったようにです。

この時かどうかは定かではありませんが、冒頭で述べたように彼女はGuiによってKalmiaと命名されました。

そうした点を含めて看守の1人であるArmisはHannaを妬むようになります。

―Gui殺害―

ある時、Guiは権力者たちを集めてパーティーを催します。
この日の夜はあらゆる野望が渦巻く一夜となります。

Hannaに妬みを抱くArmisは毒入りワインを彼女に手渡し殺害しようと企てます。

しかしそれに気づいたLivaraがHannaに耳打ちしそれを伝えます。
同時に毒を権力者たちに飲ませること、そして剣を渡すから毒を注いでGuiを殺害するようにも伝えたものと思われます。

剣を手にしたHannaは言われた通りに行動しGuiを剣で殺害します。
剣を手にして堂々とパーティー会場を歩けたのはすでに毒入りの酒が効力を発揮していたからだと考えられます(最初は眠気から?)

ここまでが今作『キルマー』のストーリーであると筆者は考えます。

そしてGuiを殺した罪で刑務所に送られ、そこでの生活を描いたのが前作 『紗痲』 なのだと思います。

映像の最後に囚人服の彼女が映るのと同時に名前が変わります。
それはこの時点で彼女がkalmiaとして生きていることを示唆しているのでしょう。

煮ル果実さんの1stアルバム「NOMAN」の曲順からも時系列を判断できると思いました。

2曲目に「キルマー」そして3曲目に「紗痲」となっています。

他にも映像から気づいた点があるのですが、それは歌詞考察をしながら話していきたいと思います。

タイトル『キルマー』とは

筆者は「Kalmia」を並び替えて「Kilmaa」としたのだと解釈しました。
この並び替えから今作と前作を入れ替えて考えるという発想を聴き手に連想させたのではないかと解釈しました。

上記の解釈に加えて「kill」を織り込んだ可能性もありますし、それ以外の考えも包含されているかもしれません。

『キルマー』歌詞の意味

少女の面影

かつて深窓の少女は無自覚モーション
痛い位に溢れた狂気を吸って
凄惨な修羅場で一糸も二糸も纏わず
熟れる 獲る 得る 煩悶

ここではHannaの過去と現在について語られています。

「かつて深窓の少女」とはどういう意味でしょうか。

「深窓」汚れを知らない状態、また大切にされたことを意味する用語です。
しかし「かつて」と過去形になっています。

幸せな時期はほんの一瞬だったのでしょう。
幼少期からいじめが始まり、Guiに捉えられてからは「修羅場」と表現されるように過酷な環境下に身を置くことになります。

「一糸も二糸も纏わず」とは彼女が身を守るものが何一つない状態を、さらには文字通り裸の状態を指しているのだと考えられます。

長い年、上記のような環境下に身を置いた彼女は「煩悶(はんもん)」つまり心を痛め苦しめました。

今作や前作のフラッシュバックからLivaraとされる人物も彼女のごく僅かな幸せだった時期、そして幼少期の辛さを目にしてきたのだと考えられます。

大人たちの餌食

下賎の面から遥々 韜晦(とうかい)
外連 面被 備えた令嬢のvirgin
群衆は目をつけ矢鱈滅多ら
耽溺して選り択り抜く

先見の明は低迷だ
嘆願の甲斐なくhooligan
煽情が明滅 酩酊
奪って去って嗤う

ここでは組織や権力者たちの目的や非道さについて綴られています。

彼らは「下賤」つまり下劣で汚い存在です。
権力を握る令嬢に至っても「韜晦」つまり立場を隠して汚いことを行ないます。

「外連」「面被」も類似した意味を持っています。

前述にも触れましたが、彼らは「赤眼」「角」など珍しいものに目がないようです。

また組織は容姿の美しい女性に性行為を強要したりオークションに出したりしているようです。

映像ではHannaのナンバーが「6」に見えましたが、前作のナンバーが「9」となっており、今回も見方を逆にすれば「9」であり共通点が生まれます。
彼女につけられたオークションナンバーなのかもしれません。

「hooligan」とは「ならずもの」のことです。

ならずものには虐げられた人の嘆願など耳に入らないのです。
虐げらる人には「先見の明は低迷」つまり未来の予想すらつかないのでしょう。

破られた「境界線」

今が生涯 最の底辺だって憂いたくなるよな
都合良く天網なんか存在しないやって
判明したのよ 隷従 隷従
はいはいこれが運命だって
吐き捨てる分からず屋
そこに愛は無い 愛は無いと 喚いていた
破られたベルベットロープ

歌詞全体で筆者が特に注目したいフレーズが「ベルベットロープ」です。

思うに煮ル果実さんはジャネット・ジャクソンの『The Velvet Rope』を意識しているのだと推測しました。

彼女はベルベットロープを「人の心の中にある境界線」としていました。
今作でも同様の意味でこのフレーズが用いられていると解釈しました。

この部分での歌詞ではHannaの感情が吐露されています。
彼女は今が人生における最低最悪の時期なのだと言い聞かせています。

そして隷従の立場で「愛」は存在しないのだと確信します。
自分の中に愛の感情は入ってこないものとし、自分と他者との間に「ベルベットロープ」つまり境界線を設けたのでしょう。

しかしそれが「破られた」というのは興味深い表現です。

筆者が考えるにGuiと一夜を共にしたHannaは不本意ながら「愛」を彼に抱いてしまったのかもしれません。

実の姉を殺し現在も酷く扱う人物に自身の境界線を破られてしまったと感じたのでしょう。

Guiも幾らかの愛をHannaに抱いたものと思われます。
なぜなら彼女がGuiにトドメを指すのを躊躇った点、そして殺される寸前に見せたGuiの表情からそれらを理解できます。

今作では「憎しみ」と同時に「愛」を表現していると解釈しました。

憎悪の種火

『熱が潰えるまで仕様がないから観ててやる』

このフレーズはGuiが述べたものと考えられます。
「熱」とはHannaが感じる復讐の炎のことなのだと思います。

「潰える」とは計画や企みがくずれてダメになることを意味しています。
ですから復讐の意志が完全になくなるまでGuiがいたぶることを示唆しているのでしょう。

映像に一瞬表示された「I’ll take care of you until you die」は訳すと「死ぬまで面倒みてやるよ」という意味になります。

このフレーズの「死ぬ」という言葉が種火となりHannaの薄れゆく復讐心を再点火することになります。

映像では「die?」と彼女が返答すると同時に姉が殺害される光景がフラッシュバックしていました。

彼女の決心

断ち切るわベルベットロープ

戻らないベルベットロープ

最後にも「ベルベッドロープ」が用いられています。
こっちがタイトルなのではと錯覚してしまうほどです。

「断ち切る」「戻らない」といった表現からHannaの中にある境界線がさまざまな分野に対して用いられていることを理解できます。

Guiを殺害してからの流れから「人を殺めてはいけない」という境界線を断ち切っています。

また「誰かを愛せない」という境界線も断ち切ったことでしょう。
これは自分を守ってくれたLivaraに愛を幾らか感じたと思われるからです。

さらに「戻らない」とは修羅場とも思える環境で自分がもうけた境界線は意味をなさないという意味なのでしょう。

いずれにせよマフィアのボスと権力者たちを手に掛けてしまった彼女はあとには戻れないでしょう。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
Hannaの苦境の下で沸き起こったさまざまな感情を見ることができました。

憎しみの中で咲いた僅かな愛、それを奪うときの複雑な感情なども歌詞から伝わってきたと思います。

前作の説明にもなってしまうのですが、登場人物の紹介でLivaraを女性とした点や前作で登場したclay poolと同一人物と考えた理由を最後に話したいと思います。

まず1つにどちらの作品でもHannaの幼少期を知っておりフラッシュバックしている点が挙げられます。

また前作では彼女と何度か接点があることを歌詞が暗示しているからです。
動画コメント欄には登場人物紹介にclay poolの名前が無いので今作には登場していないという見方があります。

確かにそうした見方もできるでしょう。
しかし筆者はLivaraが後に名前を変えて刑務所に潜入したのだと解釈しました。

可能性は薄いのですが、次のような作品例もあります。

アレクサンドル・デュマ・ペールの小説『三銃士』を始めとする『ダルタニャン物語』に登場する架空の人物「アラミス」世を忍ぶ仮の名前であり、作中では本人自身によって本名が明かされることはなかったとされています。

さらにアニメ三銃士ではアラミスが男装して後に女性であることが発覚します。
この点は史実に基づいていませんが、発想はこうした点から来ているのかなと予想しました。

女性として考えた理由は、前作で胸にさらし(包帯)を巻いて男性のように振る舞っていた点、脱走時には胸があった点を根拠にしています。

この過程に基づくと前作で女性同士がキスしたことになります。
この点でも筆者はジャネット・ジャクソンに感化を受けたのではないかと予想しました。

彼女も作品の中で同性愛をテーマにしていました。
ですから今作でLivaraは俄かにHannaへの愛を感じながらも抑制していたのでしょう。

しかし後にHanna(Kalmia)からキスされたときにはさらに彼女を意識することになったものと思われます。

かなり複雑に絡み合った作品でしたが、その奥深さと世界観は確かに多くの人たちを魅了するものでした。

まだまだ解明できていない点も多いと思います。
映像や歌詞から気づかれた点や個人的な考察をコメントしていただけたら幸いです。

煮ル果実さんの三部作目に期待し今後の活動にも注目していきたいと思います。

素敵な作品をありがとうございました。

4 件のコメント

  • とても興味深く読ませていただきました!前作のクレイとアルミスが同一人物っぽいのは私もとても思ったのですが、今作との表情の違いでどうしても同じ人物に思えなくて…個人的にはアルミスの娘がクレイなのかな?と思いました。アルミスはハンナが少女の頃から既に成人女性のようでしたが、紗痲のクレイはかなり若く見えました。あと髪質?も違うのかなぁ、と。でも最後の筆者様の「アルミス」という名前の考察を読んで「ああ、たしかに」とも思いました。次回作で明らかになるのでしょうか…次回作は紗痲の後に続く話が来ると思います。キルマーの最後カーミラの衣装がどんどん変わっていく場面で、脱獄後髪の少し伸びた黒コートの彼女がいましたので…長文大変失礼いたしました。楽しく拝読させて頂きました。ありがとうございます!

    • 匿名さんたくさんのコメント有難うございます。
      登場人物の成長要素を組み入れて考察を提供して下さり
      感謝します!
      確かに幼少期やキルマーからしゃままでの時間がどれだけ
      経過したかによって考察も変わってきますね。
      外見で判断すると別人ルートが浮上しますよね。
      そちらで進めた場合もいろいろ面白い考察ができますね♪

      三部作目でどんな物語が展開されるのか非常に楽しみです!

      これからもSugar&Salt Musicを宜しく
      お願いします!

  • とても楽しく読ませていただきました!
    リベラとアルミスについてですが、
    白髪の三つ編みの子がリベラ
    ピンク髪の三つ編みの子がアルミス
    ではないのでしょうか?

    • 匿名さんコメント有難うございます。
      確かにインスタグラムで明確な情報が提示されていましたね。
      貴重な情報お有難うございました!

      追記、修正させて頂きました。

      これからもSugar&Salt Musicを宜しく
      お願いします!

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