Neru『東京テディベア』歌詞・意味考察~劣等感が作り上げたツギハギ人形~

父さん母さん 今までごめん
膝を震わせ 親指しゃぶる
兄さん姉さん それじゃあまたね
冴えない靴の 踵潰した

 
見え張ったサイズで 型紙を取る
何だっていいのさ 代わりになれば

 
愛されたいと 口を零した
もっと丈夫な ハサミで
顔を切り取るのさ

 
全智全能の言葉を ほら聞かせてよ
脳みそ以外 もういらないと
why not, I don’t know
近未来創造 明日の傷創 ただ揺らしてよ
縫い目の隙間を埋めておくれ

 
皆さんさようなら 先生お元気で
高なった胸に   涎が垂れる

 
正直者は何を見る? 正直者は馬鹿を見る!
正直者は何を見る? 正直者は馬鹿を見る!

 
あー、これじゃまだ足りないよ
もっと大きな ミシンで 心貫くのさ

 
全智全能の言葉を ほら聞かせてよ
脳みそ以外 もういらないと
why not, I don’t know
近未来創造 明日の傷創 ただ揺らしてよ
縫い目の隙間を埋めておくれ

 
もう何も無いよ 何も無いよ 引き剥がされて
糸屑の 海へと この細胞も
そうボクいないよ ボクいないよ 投げ捨てられて
帰る場所すら何処にも 無いんだよ

 
存在証明。 あー、shut up ウソだらけの体
完成したいよ ズルしたいよ 今、解答を
変われないの? 飼われたいの?
何も無い? こんなのボクじゃない!
縫い目は解けて引き千切れた

 
煮え立ったデイズで 命火を裁つ
誰だっていいのさ 代わりになれば

はじめに

2011年12月21日リリースの1stシングルで
アルバム「小生劇場」及び「世界征服」に収録
されている楽曲です。

音源・MVともにハイクオリティで未だ高い人気を誇る
『東京テディベア』はなんと発売から半年間でミリオン
達成を成し遂げた名曲です。

歌詞全体に劣等感や若さ故の衝動的行動が感じられ
特に十代に絶妙なイメージを植え付けたのではないで
しょうか。

それではさっそく『東京テディベア』の
ダーク&ディープな歌詞の世界を考察して
いきましょう。

タイトル『東京テディベア』の意味

東京は冷え切った関係や殺伐とした環境を表現する曲の
舞台になりやすいと言える。テディベアは通常は人気の高い
ぬいぐるみを指します。

テディベアはゲームや映画でも切り裂かれる描写が多く見られます。
『東京テディベア』では文字通りのぬいぐるみとして
また描写として登場します。

存在意義の無い家庭環境

父さん母さん 今までごめん
膝を震わせ 親指しゃぶる
兄さん姉さん それじゃあまたね
冴えない靴の 踵潰した

見え張ったサイズで 型紙を取る
何だっていいのさ 代わりになれば

様々なMVから主人公が十代くらいの少年として
描き出されています。

少年はなんらかの強い劣等感を抱いています。
それは自身で築いていったものというより
両親からの愛情の欠如から生まれるものです。

そんな少年は両親にとって自分の存在が大変
煩わしいのだと判断し心の中で謝罪します。

家庭内で自分の存在意義が無いことを自覚すると
恐怖で膝が震えてきます。
心理学では指をしゃぶる原因の一つに
寂しさがあげられているようです。
少年は親指をしゃぶることで寂しさを紛わせようと
必死であることが理解できます。

自分の存在意義がここにはないと判断した少年は
大事にしていたテディベアと共に家を出ます。
「冴えない靴の踵」を潰した点からその行為が
衝動的であったことが読み取れます。

少年はもっと必要とされる人間になりたいと願い
自分を大きく見せようと考えます。
そのことが「見え張ったサイズで 型紙を取る」
というフレーズからはっきりわかります。

少年は背伸びをして明るくみせようとしたり
気を使ったりすることで存在意義を得ることを
思いついたのかもしれません。

愛されない本来の自分を捨てることができれば方法は
どうでもよいとさえ思えたのでしょう。
「何だっていいのさ 代わりになれば」という
フレーズからそのことが理解できます。

自己願望と“整形”

愛されたいと 口を零した
もっと丈夫な ハサミで
顔を切り取るのさ

誰にでもいいから「愛されたい」と
思わず口から本音が零れおちます。

そのためには断固たる行動が必要だと少年は
判断します。

ここで「ハサミで顔を切り取る」というフレーズから
整形を連想する方も多いようです。
確かに後述のフレーズから少年が自身の容姿に満足
していないことをうかがわせる箇所があります。

しかし顔は文字通りの意味だけではなく
生き方や自分の一部を表現する場合があります。
裏の顔があるというように別の自分や生き方を
広義的に伝える表現です。

少年は劣等感を抱かせる自分の何かを切り取り
下向きな生き方や消極的な気持ちを“整形”して
いきます。

自分のすべてを埋める存在への渇望

全智全能の言葉を ほら聞かせてよ
脳みそ以外 もういらないと
why not, I don’t know
近未来創造 明日の傷創 ただ揺らしてよ
縫い目の隙間を埋めておくれ

少年は空を見上げ崇高な存在に助けを求めます。
神かあるいはそれに近しい存在でしょう。
そのことが凡人には決して語ることのできない
「全智全能の言葉」を聞かせてよという願いに
現れています。

少年は自分の意志は強く持っていたい反面で
自分の外見をあまりよく思ってはいないようです。
ですから考えるために必要な「脳みそ以外もういらない」と
判断します。

その理由が自分でもはっきりとはわからないことを
「why not, I don’t know」と英語で表現しています。

過去の希望的観測がことごとく打ち破られてきたことが
少年の脳裏にちらつきます。
近い将来に両親から愛される自分を想像しても
明日には冷たい現実を両親から突きつけられ傷つく
自分が居たことです。

この耐え難い苦しみや自身の劣等感からくる孤独を
誰かの愛で埋めてくれるよう願います。

別の環境でさえ得られない存在意義

皆さんさようなら 先生お元気で
高なった胸に 涎(よだれ)が垂れる

正直者は何を見る? 正直者は馬鹿を見る!
正直者は何を見る? 正直者は馬鹿を見る!

あー、これじゃまだ足りないよ
もっと大きな ミシンで 心貫くのさ

少年は家庭という環境で得られなかった存在意義を
学校という環境で見出そうと試みます。

自分と年齢の近い生徒ならわかりあえる、
人生経験のある先生ならすべてを理解してくれると
考えたのでしょう。
しかし現実は酷く違っていました。

少年は周囲から避けられいじめを受けたのかもしれません。
先生は止めたり話を聴いたりはしなかったのでしょう。

いくらかの期待で「高鳴った胸」には涎のように
汚くこべりついてなかなか取れない悪感情が芽生えました。

人は頑張って変わろうとすればきっと愛される
という正直さを真っ向から否定するようになります。

少年の心にこの信念が根強く植え付けられます。

それでも自分にもっと大きな変化が必要なのかとも
感じています。
心という内面も体という外面もすべて一新する
決意を貫きます。

繰り返される“整形”が生み出した別人

もう何も無いよ 何も無いよ 引き剥がされて
糸屑の 海へと この細胞も
そうボクいないよ ボクいないよ 投げ捨てられて
帰る場所すら何処にも 無いんだよ

少年は自分を一新するために様々な努力を払ったのでしょう。
文字通りの整形ですべてのパーツを変えました。
本来の自分らしさをすべて捨てて人気の誰かになろうと
努めました。
流行りの服も着てみたりと尽くせる手はすべて尽くしました。

ふと気づくと個性や外見を含む自分らしさが皆無であることに
気がつきます。
自分が大事にしているテディベアが「糸屑」になり
原型をとどめていないかのようでした。

整形した外見は戻せませんし過去の自分らしさなど
忘れてしまって思い出せません。
今の自分を受け入れて愛してくれる存在は家庭にも
学校にも居なくなってしまいました。
少年に帰る場所はもう残されていませんでした。

身をもって創作したレプリカ

存在証明。 あー、shut up ウソだらけの体
完成したいよ ズルしたいよ 今、解答を
変われないの? 飼われたいの?
何も無い? こんなのボクじゃない!
縫い目は解けて引き千切れた

少年は一新した自分を見つめこれが求めていた
「存在証明」だと自分に言い聞かせます。
整った容姿に着飾った自分もその点に同意するよう
少年を急かすかのようです。

そのすべてに対して少年はうるさいと一喝します。
「shut up」という表現から理解できますね。

外見だけきらびやかで内面の強さを伴わない
「ウソだらけの体」に少年は嫌気がさしてきます。

強烈な自己否定に走り顔や体を傷つけ初めます。
さらに押さえつけていた感情すべてが自分の心の中で
はじけて暴れ出します。
あたかもテディベアの縫い目が解けて引き千切れ
中の綿が出てくるかのようでした。

自分=テディベア

煮え立ったデイズで 命火を裁つ
誰だっていいのさ 代わりになれば

存在意義を見いだせず自己否定に走った少年が
最後に取った選択は存在することをやめることでした。

愛情不足の冷ややかな日々は少年の生きる希望の火を
消すのに十分過ぎたのです。

少年の行為をとどめる者はいませんでした。

少年は死ぬ前に自分の大事にしているテディベアを
自分の代わりとして存在させることにします。

「誰だっていいのさ 代わりになれば」という表現は
両親や学校の先生や生徒に対する冷ややかな嫌味なので
しょう。

同時に自分と命の無いテディベアが同等の価値であることを
認めています。

愛情が示されないと自尊心も消失することを物語っています。

こうして劣等感を抱いてツギハギ人形となった人生に
終止符が打たれることになりました。

まとめ

随所に考察の仕方が分かれる歌詞がちりばめられています。
登場する少年がどんなものに劣等感を抱いているのか
によって考察の進め方が大きく変わってきます。
鍵となるテディベアの立ち位置や描写の理解の仕方も分かれる
要素となるでしょう。

いくつもの選択肢があるということは
味わい深い曲であり何度聴いても楽しめるということですね。

劣等感が全くない人は少ないと思いますので
多くの方が共感したのだと感じます。

次々にミリオンを叩き出しているNeruさんですが
今後の活躍にも期待して注目していきたいと思います。

6 件のコメント

    • 煌月 みず☪︎ *.さん簡潔なコメント有難うございます!

      これからもSugar&Salt Musicを宜しく
      お願いします!

  • 凄くわかりやすかったです!応援してます。これからも頑張ってください!!

    • seina@(*’ω’*)さんコメント有難うございます。
      お褒めの言葉を頂き嬉しく思います!
      筆者の大好きなボカロPと楽曲です♪
      これからも一緒に音楽ライフを満喫しましょうね☆

  • なんだかかなシーですね,,
    でもこれで、強く生きなきゃ❗という気持ちが現れました、
    12才ながら、精神的にも、色々あり、自殺を考えてました。
    でも気持ちを今日から前向きにしたいと思います!
    ありがとうございます❗

    • アームズ強いよさんコメント有難うございます。
      気持ちを暗くしてしまったのなら申し訳ありません;
      でも続く部分を読んでホッとした面もありました。
      筆者のつたない文章がアームズ強いよさんの胸に届いて
      良かった、、生きる希望となって良かった、、
      自殺を考えるなと無責任なことは言えません。
      でもこれだけは言わせて欲しい、、
      筆者もこのコメント見て頑張ろうって思いました。
      「だから一緒に頑張って生きて行こう!」

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