まふまふ『サクリファイス』歌詞の意味を考察・解釈

果てしない悲哀の環状線 奪い合いの連鎖
終幕はどこで見られるだろう

命を預けた天秤は推定無罪を要して
その正義も 猛る勇姿も
不用品となってしまった

―――どうして?―――

この手じゃ そんな小さな心にうまく触れない

歪んだ運命は 幾つもの禁忌の翼
望まれかざした刃が
手のひらを返して罪と成る
それは 辻褄が神に背きだすカルマ
たとえ狂いない未来としても 正鵠に射かける

どうして ボクの名前を呼んでよ

まだ脳裏に焼きつく 憧憬

くだらない夢の続きや あの丘目指して
ボクらは笑えたはずだったのに

疑い 疑われては鍵かける今日だ
爆弾でしか戸を叩けずに
どこかで間違えていたんだ

―――どうして?―――

この手は 奪うことばかりで
あやせもしない

空は青より灰色と記憶した翼
祟り目 奪った代償に
もうボクはボクでいられない
それはかつて名を持った 贖罪と輪廻
以後いかなる幸せでも この手では触れない

どうして 君と会ってしまったの

喉元に焼きつく 硝煙

これだけの苦痛を抱え込んで
生まれた意味などはないと知った
血塗られた今日日を血で洗って
生まれた意味などはないと知った

何ひとつも救えないくせして
十字架ばかりを背負っていこうと
何者にもなれないと知った
処刑台が嗤い 手招いている

歪んだ運命に敗した 仮初の翼
望まれかざした刃が
手のひらを返して罪と成る
それは 辻褄が神に背きだすカルマ
たとえ狂いない未来としても 正鵠に射かける

どうして ボクの名前を呼んでよ

まだ脳裏に焼きつく 憧憬


はじめに

『サクリファイス』とは2019年7月6日にネット上で公開された楽曲です。
TVアニメ「かつて神だった獣たちへ」OP主題歌ともなっています。
動画再生回数は公開から1日で20万を超える人気振りです。
まふまふさんの人気は止まることを知らない勢いで伸びていってますね。

また同年10月16日リリースされる まふまふ新アルバム『神楽色アーティファ
クト』の予約も開始されています。
情報はほぼ未公開ですが恐らく今作もこのアルバムに収録されるものと予測され
ます。

特筆すべきは今回リリースされるアルバムはまふまふさんにとって最高最強の力
作であるということです。
まふまふさん自身のツイッターでコメントがありましたので紹介します。

誕生日の2日前にアルバムを出します!! 過去最多収録曲数で今のボクにできる最強の1枚です!!! これ以上ないものにします。宜しくお願い致します。


https://twitter.com/uni_mafumafu/status  まふまふ twitter より

曲数の多さ、そして自身の用い得るすべての力を注ぎ込んだ魂の一枚となって
いることが理解できます。
このアルバムはファンとしても見過ごすことは出来ないでしょう。

さて今作のタイアップアニメについて少し触れてみたいと思います。

「かつて神だった獣たちへ」とは「めいびい氏」による日本の漫画です。
『別冊少年マガジン』(講談社)にて2014年7月号から連載中となっています。

ストーリー序章ではパトリア大陸で勃発した北部パトリアユニオン南部パトリ
ア連合の10年にわたる内戦が、パトリアユニオンの異形の兵士擬神兵の活躍で和
平に至ってから5年後の世界を描いています。

として凱旋した擬神兵たちは圧倒的すぎる力ゆえに次第に「獣」と蔑まれるよ
うになり、それに違わぬ事件を各地で起こすようになります。

かつて擬神兵ウェアウルフとして擬神兵部隊を指揮したハンク・ヘンリエット
は、「人の心を無くした者は仲間の手で葬る」とする部隊内の取り決めに従い、
暴走する戦友たちを抹殺する「獣狩り」として旅を続けていました。

上記のあらすじからも理解できますが、かつての同志と戦うという辛く切ない
物語なのです。
その世界観がアニメ化されることでよりリアルになり、さらにまふまふさんの
MVと歌詞でスケール感が拡大されていきました。

MVの内容に少し触れてみたいと思います。
例の如く主人公はまふまふさんです(白髪)
そしてもう一人かつての同志しかし現在では敵として描かれている少年(黒髪)
が登場します。

何度かまふまふさんの相方そらるさんかなと思いました(今でも悩んでいます)
しかし今回の考察ではアニメタイアップに寄せていることを考慮してもう1つの
考察を加えて考えたいと思います。
それは闇堕ちしたまふまふさんという解釈です。

なぜこの要素を組み入れたいと思ったかというと、アニメの内容が「神」と称さ
れるまで上り詰めた状態から「獣」にまで成り下がる部分がメインだからです。
勿論かつての同志と戦う部分も多く占めているのですが、それでも白から黒へ染
まって行くダークストーリーが中心だと筆者は考えました。

さらにアニメ主人公「ハンク」の特徴も考慮にいれたいと思いました。
擬神兵部隊用の白いコートとフード姿が特徴で、日中は黒髪の男性の姿をしてお
り疑神兵の力を使えませんが、夜間になると髪が白く変わり膂力と敏捷性に優れ
た人狼の姿に変身できるようになるという点です。

ですから上記を加味して2つの解釈
1.まふまふさんを主人公、そらるさん(のように見える)をかつての同志
2.二人ともまふまふさんで「神」と称される時と「獣」の時とを描いている
という両面を併合して考察していきたいと思います。

タイトル『サクリファイス』とは

「サクリファイス Sacrifice」とは「神への犠牲、生贄、捨て駒」など
さまざまな意味合いを持つ英単語です。
遊戯王が真っ先に脳裏に浮かんだ方は筆者と同じ思考パターンでしょう(笑)

物語の主人公たちの生い立ちや境遇を考えるとまさにこのタイトルは適切です。
「神」と称されるが故に払うことになった多くの犠牲、それはまさにその称号
故に自分たちや仲間が生贄になったと言わざるを得ません。

そして「獣」として扱われるようになってからはまさに捨て駒人生でした。
今作はそんな彼らの辛く悲しく切ない物語を描いています。


『サクリファイス』歌詞の意味

悲哀の環状線

果てしない悲哀の環状線 奪い合いの連鎖
終幕はどこで見られるだろう

命を預けた天秤は推定無罪を要して
その正義も 猛る勇姿も
不用品となってしまった

窮地に追いやられた主人公たちが味わう悲しみの哀歌を
歌詞冒頭で伝えられています。
それを「環状線」という表現を用いて例証しています。

「環状線」には2つの特徴、つまり「放射線状に広がる」
また「円状に周回する」という特徴があります。

主人公たちの抱える悲哀は心の中で放射線状に広がり、
さらにループして消えることはないという意味でしょう。
そして本来あるはずの終着駅が彼らにはないのです。
終わらない悲哀が彼らを酷く苦しめていきます。

歌詞では「正義も 猛る勇姿 も戦いの中で不用品」になっ
てしまうとあります。
これは「命を賭けて戦ったが獣として見下げられる結果」
となったことを指しているのでしょう。


永遠に繰り返される問い

―――どうして?―――

この手じゃ そんな小さな心にうまく触れない

今作の歌詞で「どうして」というフレーズが5回も
繰り返されています。

これは主人公と主人公と対峙するかつての同志の問
いかけであると理解できます。

「なぜ仲間と戦わなければいけない」
「なぜ神と称された自分たちが獣に成り下がらなけ
ればいけない」
そんな自問が永遠に渡って繰り返されるのでした。

気づけば主人公も対峙する者達もお互いの手は力と
血で満たされており小さな命1つ守ることすら叶い
ませんでした。

己に向けられた罪の刃

歪んだ運命は 幾つもの禁忌の翼
望まれかざした刃が
手のひらを返して罪と成る
それは 辻褄が神に背きだすカルマ
たとえ狂いない未来としても 正鵠に射かけ

ここの部分はツイキャスでまふまふさんが少し
説明をしていたので抜粋して書き出しますね。

「望まれかざした刃が手のひらを返して罪と成る」
かつては周囲から望まれていた自分たちの戦い
(敵に向けられていた刃)が今では周囲から疎まれ
獣として扱われ出した(自分たちに向けられた刃)

物語を見ても栄光や称賛を受けていた者たちが、
いつしか罪を背負わされその代償を払わされてい
ます。

身勝手に合された辻褄は神から与えられた宿命の
ように彼らは感じたことでしょう。
決して人間の手では狂いようのない未来でも彼ら
は己の手で未来を切り開いて行くことを決意します。


焼きつく街と憧憬

まだ脳裏に焼きつく 憧憬

くだらない夢の続きや あの丘目指して
ボクらは笑えたはずだったのに

疑い 疑われては鍵かける今日だ
爆弾でしか戸を叩けずに
どこかで間違えていたんだ

憧憬も歌詞中で2回繰り返される重要なフレーズです。
「憧憬」には「あこがれ」という意味があります。
主人公たちはなにに憧れていたのでしょうか。

くだらない夢を同志たちと語り合い「丘」つまり夢や
高見を目指して歩んでいくということでしょう。
もしくはただ笑い合って日々を過ごしたかっただけな
のでしょう。

しかし周囲から、そして互いを疑い合うようになって
からは心に鍵をかける日々に早変わりします。
お互いの心を会話で知ることはもう不可能です。

「爆弾」という強大な破壊力や強硬手段でしか知り得
ないのです。

「爆弾」という表現は主人公ハンクの持つ槍の穂先の
爆薬で構成される対擬神兵用の特注武器「ボンブランス」
に由来するのだと推察できます。

主人公が焼き尽くす街と敵。
そして過去の憧憬だけが焼き付いて離れないのでした。

彼女の存在

どうして 君と会ってしまったの

喉元に焼きつく 硝煙

修羅の道を歩む主人公には心を鬼にする必要がありました。
しかし「君」という存在に出会ってしまい心が揺らぎます。

MVでも何度か登場する少女はアニメヒロインの「ナンシー」
なのだと思います。
シルエットが似ているのと彼女と主人公の関係が裏付けてい
ると考えたからです。

内戦後は特技曹長として暴走する擬神兵を狩る「獣狩り」と
して旅していたハンクはナンシーの父を殺してしまいます。
その時からナンシーにとってハンクは仇の存在になります。
父の仇の理由を知るために彼の旅に同行しているのです。

それはハンクにとって心痛となり複雑極まりない心境になり
ました。
「喉元に焼きつく 硝煙」と表現されているように息苦しく
煩わしいものに思えたに違いありません。

MVでも「歯車」の描写が非常に多かった点に注目できます。
神から獣になった瞬間、それから起きた事件、ナンシーとの
出会い、それらすべてが主人公たちの歯車を少しずつ狂わせ
ていったことを表現しているに違いありません。

主人公が救われるとき、それはナンシーを含め周囲が納得し
自分たちをもう一度価値ある存在として認め受け入れる時な
のかもしれません。

その時まで彼らの暗く惨めで救いようのない戦いは続いて行
くのでした。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
曲調や内容が「忍びのすゝめ」から続いているような気がします。
ハイテンポに非常に重いダークストーリーを添えた作品といった
印象を受けました。

原作をすべて読破し忠実に一つ一つの場面や人物の心情を拾い上
げて歌詞にしているようでした。
曲作りに命を賭けていると言わざるを得ない名曲でした。
なによりまふまふさんがアニメで歌うことに感動しています。

人気に比例して多忙になることは必然です。
どうぞ活躍の合間にしっかり休息されることも筆者は願っています。

今回も素敵な作品をありがとうございました。
次回作とアルバム、そして今後の活動にも期待し注目していきたい
と思います。