まふまふ『ノンタイトル』歌詞の意味を考察・解釈

朝をこぼした木組みの隙間
風の抜け道 春色の空
君の寝言がつぶやくすべてで
今日が始まるみたいな

蜘蛛の巣張った戸棚を開けて
カビ生えかけのライ麦のパン
かばんに詰めてどこかへ行こうか
君の知らない街

道行くだけで台詞もなければ
撮り直しもないワンシーン
どのカメラにもこぼれた世界に
台本も監督も何もない
ただの居場所のひとつもない
それがボクの映画か

失ったものなんて数えなくていいよ
ボクら理由無しに生まれたノンタイトル
何も気にしないで泣きじゃくっていいよ
誰も君の声なんて聞いちゃいないさ

たまらず石を投げた湖面に
君は笑っておどけてみせる
例えば怪しい色した実を口にしても
誰も怒らないでしょ?

瓦礫の花を紡いだボートで
君とふたりの逃避行
ボクらを祝うケーキはないけど
ああ こんな果物ナイフで そんな盗んだブーケも
君を飾れるんだなあ

エンディングは期待通りなんてあるわけないさ
泣いた2分ちょっと ゴミ捨て場のタイトル
明日灰になって吹き飛ばされようと
誰か泣いてくれるなんて思っちゃいないよ

ねえ
どこか遠くへ逃げようよ ここじゃないどこか遠くへ
もう広角のレンズにだって 映らないどこか遠くへ
そして最後に寝る前に 鳴り止まぬ銃の中で
君の両目に映りこんだ それだけでいいなあ

君は泣かないで 泣かないでいいよ
終わり2分前のエンドロールにタイトル
それは誰一人も覚えていないような
きっと在り来たりだった物語

失ったものなんて数えなくていいよ
ボクは理由無しに生まれたノンタイトル
何も気にしないで泣きじゃくっていいよ
誰もボクのことなんて知りやしない

これは君とボクだけの 名もなきタイトル

歌詞考察の前に

人気アーティストであるまふまふさんの楽曲『ノンタイトル』MVが2020年2月14日にネット上で公開されました。
動画再生回数は公開から僅か1週間で80万を超える人気ナンバーとなりました。

今作で筆者が注目したい点は以下の通りです。

・少年少女の背景

・『ノンタイトル』の意味

・損失に対する見方

この3点をメインにMVや歌詞全体を紐解いていきたいと思います。

今作についてまふまふさん自身が次のようにコメントしていました。

失ったものなんて数えなくていいよ どうも まふまふです 描かれない人生を書きました

https://www.youtube.com/watch?v=oh5swa7mI30

このコメントを見て筆者は「損失に対する見方」を今作から模索しようと考えました。

MVを通して見た方であれば笑えるハッピーエンドではなかったと感じるでしょう。
しかし今作は失ったものに注目するのではなく、得たものに焦点が合わせられた積極的な歌詞に仕上がっています。

曲調からもその点が理解できます。
イントロから跳ねるように奏でられるピアノは気分が高揚します。
だからこそMV後半の展開に意表を突かれた方も多いと思います。
その後も曲はマイナーテイストな要素を一切含まず進行していきます。

それではさっそく気になるタイトルや歌詞の考察を始めていきましょう。

タイトル『ノンタイトル』とは

タイトルには次の意味が含まれます。

・ 選手権保持者がその選手権をかけない

・題名・件名がない(無題)←この意味はno titleが適切だが

この意味をMVや歌詞に照らして考えると次のように言い直すことができます。

・二人はそれまでの立場と存在意義を捨てた

・2人の物語は言葉では表現できず誰にも知られることはない

通常ドラマや映画などでは多くの人に物語の趣旨を伝えるためにタイトルが設定されます。
しかしMVの二人はそうすることを望みません。

筆者の見立てでは少年は貧しく盗みを働いて生活しており、少女はお城か裕福な家庭で育ち色々なしがらみからの開放を求めて家出したと解釈しています。

ですから2人の歩みは堂々と公表できるようなものではなく密かになされる必要があります。

なにより2人は人生で始めて噛み締める喜びと自由に名前をつけることができません。

そうした点がタイトルには包含されているのだと思いました。

『ノンタイトル』歌詞の意味

貧しさに差す一筋の光

朝をこぼした木組みの隙間
風の抜け道 春色の空
君の寝言がつぶやくすべてで
今日が始まるみたいな

蜘蛛の巣張った戸棚を開けて
カビ生えかけのライ麦のパン
かばんに詰めてどこかへ行こうか
君の知らない街

今回はMVに登場する少年少女を主軸に考察を進めていきたいと思います。

2人は一つ屋根の下で生活しており今日も共に朝を迎えます。
「木組み」と「ライ麦のパン」というワードから舞台がドイツかフランス方面なのかなと勝手に想像しました。

窓から漏れる朝日が目にしみますが2人には心地よさも与えたことでしょう。
それは2人で一緒に過ごせる1日のスタートを知らせるものだったからです。
お互いにとって2人で過ごせるということ自体が希望の光であり、朝日より心地よいものだったでしょう。

続く部分を見ると2人の生活水準が読み取れます。

「蜘蛛の巣張った戸棚を開けて カビ生えかけのライ麦のパン」

MVでも電気のつかない暗い部屋にボロボロの棚が置かれていました。
2人の生活がとても貧しいことが読み取れます。

さらに注目したいのが次の点です。

・戸棚に蜘蛛の巣が張っている

・パンにカビが生えかけている

上記の2点は2人が管理の行き届かない空き家のような場所を隠れ家にしていること、戸棚のパンはストックであったことを示しています。

少年は普段パンを2人分盗んで空腹を満たしていたのでしょう。
盗んだパンは戸棚にストックされており、それが底をついたように見えました。

こうした点は2人のその日暮らし感を忠実に表現しています。

題名の無い物語

道行くだけで台詞もなければ
撮り直しもないワンシーン
どのカメラにもこぼれた世界に
台本も監督も何もない
ただの居場所のひとつもない
それがボクの映画か

失ったものなんて数えなくていいよ
ボクら理由無しに生まれたノンタイトル
何も気にしないで泣きじゃくっていいよ
誰も君の声なんて聞いちゃいないさ

この部分では少年少女が2人だけの時間をいかに貴重なものとしているかが綴られています。

2人は特別な言葉のやり取りがなくても道行くだけで幸福でした。
そうした時間は撮り直しできないつまり巻き戻せない貴重な時間です。

周囲には誰もおらず2人の人生に注目する人もいません。
上記の点を踏まえて「どのカメラにもこぼれた」とは誰の目にも留まらないまた注目されないという意味だと解釈できます。

台本や監督がないという点は2人の出会いに「必然性や設定がない」という考えを伝えているように思えます。

少年は歌詞の中で「失ったものなんて数えなくていいよ」と積極的な意見を口にしています。
彼は彼女と自分自身に向けてその台詞を述べたと考えられます。

そうであれば2人の失ったものとはなんでしょうか。

もしかすると少年は奴隷のように売られ家族から引き離され当然受けるべき自由や保護のような権利を失ったのかもしれません。

少女に関しては綺麗な格好から裕福な家庭で育ったのだと予想できます。
親の束縛に耐えかねて家出を決意したのだと考えました。
そう仮定すると裕福さや将来約束されていたであろうさまざまなものを失ったと言えます。

上記のものすべてを忘れて今の2人の幸せと自由に焦点を合わせることを彼は勧めていたのだと解釈しました。
同時に過去に失ったものを数えるのではなく現在の得ているものを数えるよう励ましているようにも感じます。

「ボクら理由無しに生まれたノンタイトル」とはどういう意味でしょうか。
ここは前向きな見方に加えやや皮肉めいた表現であると筆者は感じました。

少年は少女に「親から勝手な存在理由や価値を植えつけられる必要なんてない」というニュアンスで励ましたのかもしれません。
誰も自分の人生に勝手に命名すべきでないという考えも読み取れます。

しかし自分の生い立ちに関して「自分の存在理由もないし誰からも期待されてない」という点も暗示しているようにも思えます。

「何も気にしないで泣きじゃくっていいよ 誰も君の声なんて聞いちゃいないさ」という部分は一見すると消極的な台詞にも思えます。

しかし彼女を大事に思う彼の立場からすると「ここには誰もいないのだから人目を気にせず泣いて吐き出そう」という慰めだと理解できます。

「外」の世界

たまらず石を投げた湖面に
君は笑っておどけてみせる
例えば怪しい色した実を口にしても
誰も怒らないでしょ?

瓦礫の花を紡いだボートで
君とふたりの逃避行
ボクらを祝うケーキはないけど
ああ こんな果物ナイフで そんな盗んだブーケも
君を飾れるんだなあ

この部分は少女の背景を一層明確にしています。
前述で少女が裕福な家庭またお城という仮定を筆者はたてました。
その理由はこの部分の歌詞にあります。

少女は湖面に石が投げ入れられた時の「ぱしゃっ」という音や広がる波紋に笑顔やおどけたそぶりを見せています。
こうしたごく普通の出来事を珍しがっているのは彼女が家から外出できない状況にあったことをイメージさせます。

「怪しい色した実を口にしても誰も怒らない」というフレーズからも彼女が格式高い家の生まれであることを示唆しているようです。

続く部分に登場する「ケーキ」「ナイフ」「ブーケ」「結婚」を連想させます。

今作は2月14日バレンタインに合わせて公開されています。
ルーツとは異なりますが、昨今では一般的にその日は「男女が愛を誓う日」と理解されています。

ですからMVの少年少女もそれぞれの家族や境遇また生い立ちを後にして2人の愛を誓い合っています。

少年が用意したものは全て盗んだものであり肝心のケーキもありません。
それでもあるもので満足すること、すべて揃っていなくても相手を喜ばせることができることを彼は実感しています。

逃走の果てに

ねえ
どこか遠くへ逃げようよ ここじゃないどこか遠くへ
もう広角のレンズにだって 映らないどこか遠くへ
そして最後に寝る前に 鳴り止まぬ銃の中で
君の両目に映りこんだ それだけでいいなあ

君は泣かないで 泣かないでいいよ
終わり2分前のエンドロールにタイトル
それは誰一人も覚えていないような
きっと在り来たりだった物語

ここでは2人が「逃げる必要性がある」ことを強調しています。

それぞれどんな理由があるのか考えてみました。

少年は生きるために盗みを働き続けた結果、犯罪者として追われるようになったのでしょう。

少女は家出したと仮定すると家族や召使いあるいは警察などから追われる身となっていたのでしょう。

2人は生涯を通じて逃走劇を完走したいと強く願ったことでしょう。
しかし物語にピリオドを打つようにして銃声が鳴り響きます。

MVでは銃弾が2発撃たれていたので少年を追う者が少女を共犯者として見たのではないかと考えました。

銃の矛先に気づいた少年は少女を突き飛ばし救いました。
しかし2発の銃弾が少年の身体を貫き命を落とします。

興味深いのが歌詞の「終わり2分前のエンドロール」という表現です。
この部分が歌われる段階で楽曲の残り時間は1分弱しかないのです。

少年が「本心では最後まで少女と結末を2人で見届けたいと思うも、実際には彼女1人になってしまう」という事実を表現したのかもしれません。
言い換えるならば「死に際の1分は目撃できるが自分が死んだ後の1分は彼女しか見ることが出来ない結末が待っている」という意味なのかもしれません。

いずれにせよ楽曲の残り時間や人数に重ねた巧妙な意図があるように感じました。

少年が歌詞の随所で2人の関係を尊いものに感じると同時に儚いものに感じている点がなんとも切なく胸を打ちます。

世界のどこかには彼らと同じ題名のつけられない物語がたくさん転がっているのかもしれません。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
筆者もイントロと序盤の展開から「まったりハッピーエンド」なんだなと心落ち着かせて聴いていました。

しかし蜘蛛の巣張った棚やカビパンあたりから胸騒ぎがし始めました。
そして頭の中はロミオの青い空だったりアラジンだったり忙しくなり最後の結末で「ずーん」ってなりました(涙)

それでも相手のことを思いやって「泣きじゃくっていいよ」「泣かないでいいよ」と言える少年の利他的な愛には感銘を受けました。

今作についてはいろいろな考察があるみたいで、少女は目や耳が不自由なのではないかという興味深い説もありましたね。

皆さんの考察や世界観も自由にコメント欄にて伝えてください♪

まふまふさんの相変わらずハイトーンな美声と愛と切なさが充満した世界観に魅了されました。

今後の活動に期待し注目して、、、ってのがいつものシメなのですが。。
出来るだけ野菜、肉、魚とか食べてハードスケジュールの合間に頑張って寝てください(涙)

素敵な作品をありがとうございました。

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