luz『ヴィクター』歌詞の意味を考察・解釈

頭が痛むんだって 夜が締め付けてまだ寝れないの
局所の麻酔だって 効かないし ねえ先生もっと頂戴
この頭を割ってプラスのドライバーで
脳味噌まで弄(いじく)ってください
嫌なことは全部 ネジを外しちゃって それでも辛いって

ねえどうしてなの?
 
化け物が僕等を見ている 愛想を振りかざして 君のいる方へ
戯言が耳の中に響く
眩む様な眼差しが身を刺した「愛して恋して堪(たま)らないの」
私一人のモノにして 貴方、闇へ囁く
眦(まなじり)に誘われ辿り着いた 後悔の狭間で座り込んでいろ
虚無と愛憎のランデブー 誰か憂いをどうか止めて
 
マツカサで見てみろって 君に言われてみてもしょうがないや
背伸びをしているのって聞かないで 迸(ほとばし)る意識崩壊
確かめて営んだ正義を 継ぎ接ぎでは駄目なんだって 君のいない夜更け
また明日この夜で逢える? 夢にまで現れ姿消した

追いかけた先に希望なんてないな
喉と心落とせばいい 君はそれで喜ぶ?
回り道見失った余の目当て
杞憂のマインド 暗くて見えない
妄想と現実のシンパシー 神よ明かりを今灯せ
 
あの日も風は静かに貴方の髪を靡(なび)かせて
その眼に全部奪われる骨折る過去も
殺された
フラフラと彷徨う街のどこか
悲しみも下(くた)びれてしまった
 
眩む様な眼差しを受け止めた 指を刺せばほらカウンターもろキマんだ
涙流して乞えばいい 陥穽(かんせい) 霧に呑まれる
眼を覚ませアナーキーな化け物共 夜中の三時はもう寝る時間だ
心が痛まないようにまた 君と朝まで眠らせて
それではおやすみ


はじめに

『ヴィクター』とは2019年4月27日にネット上で公開された楽曲です。
今作はめいちゃん初のボカロ公開となっており動画制作をりゅーせーさんが
担当しています。
りゅーせーさんは大人気「脱法ロック」のイラストと映像を担当してました。

今回めいちゃん自身のコメントが次のように語られていましたので引用します。

「なんとなくお酒を呑んで酔っ払って起きたらこの曲の歌詞が出来てました笑 

悩み事とか辛いことは誰にでもあると思うのですが、それを捻くれて乗り越えてはいけないと思います。色々な目線でこの曲を書いてみました。たくさん聴きどころポイントがあるので是非何回も聞いていただけたら嬉しいです!」


https://natalie.mu/music/news/328989  音楽ナタリーより

上記コメントを見る限り「勢い」で出来上がったようですね(笑)
それでもさまざまな角度から物事を捉えた作品でありメロディラインにも
多数の聴きどころを用意してくれているのがわかりますね。

今作の曲調はハイテンポでアグレッシブなロックサウンドに仕上がってい
ます。
イントロのカッティングがメインとなったリフは一度耳にしたら忘れられ
ない格好良さがあります。

歌い手のluzさんの中広域の声も味わい深く動画コメント欄での評価も高い
です。
しゃくりと歯切れの良さがハイテンポなメロディの中でも魅惑の香りをしっ
かりと残留させていました。

MVに関しては一人の男性が登場しており怪しげな実験室または手術室のよう
な場所にいるのを観察できます。
彼は身体の各部位を実験また手術されているようです。
歌詞から自らの意志でそうしていることが読み取れます。

それではさっそく歌詞の考察を始めていきたいと思います。

タイトル『ヴィクター』とは

『ヴィクター』とは「優勝者、勝利者、征服者」を意味する
英単語「victor」に由来しています。

大会社「日本ビクター」もこの単語を由来としているようですね。
事業で勝利するという意味合いが込められているのでしょう。

しかし今作の歌詞全体を考慮して考えると「優勝者、勝利者」
という概念が伝わって来ないような気がします。

MVに出てきた主人公の男性が大切だった彼女に感情を征服さ
れていく様子も歌詞の前半で読み取ることができると思います。
また後半では彼女がなんらかの理由で居なくなることも把握で
きると思います。

彼女を失った後、彼は虚無感や孤独に征服されていったに違い
ありません。
ですから彼が征服者になるのではなく「外的要因に征服されて
いく」様を描いた歌詞なのだと解釈しました。


『ヴィクター』歌詞の意味

苦痛からの解放を乞う

頭が痛むんだって 夜が締め付けてまだ寝れないの
局所の麻酔だって 効かないし ねえ先生もっと頂戴
この頭を割ってプラスのドライバーで
脳味噌まで弄(いじく)ってください
嫌なことは全部 ネジを外しちゃって それでも辛いって
ねえどうしてなの?

今作では物語が時系列通りに進行しておらず、
この部分は辛い時期を経験した後の出来事を
描いているようです。

歌詞冒頭では主人公の男性が辛い経験を通して
受けた症状を医者である先生に訴えているよう
です。

彼は夜になると激しい頭痛に悩まされ不眠が続
いている様子です。
局所麻酔も効かないほどの激痛なのでいっその
こと脳を手術して欲しいと願い出ています。

彼も自分なりに努力を払ったようです。
「脳から嫌なことを取り外す」かのように一生
懸命忘れようと努力しました。
それでも症状は緩和されません。

彼は苦痛からの解放を求めていますが改善は見
込めないようです。


現れて消えた君

化け物が僕等を見ている 愛想を振りかざして 君のいる方へ
戯言が耳の中に響く
眩む様な眼差しが身を刺した「愛して恋して堪(たま)らないの」
私一人のモノにして 貴方、闇へ囁く
眦(まなじり)に誘われ辿り着いた 後悔の狭間で座り込んでいろ
虚無と愛憎のランデブー 誰か憂いをどうか止めて
 
マツカサで見てみろって 君に言われてみてもしょうがないや
背伸びをしているのって聞かないで 迸(ほとばし)る意識崩壊
確かめて営んだ正義を 継ぎ接ぎでは駄目なんだって 君のいない夜更け
また明日この夜で逢える? 夢にまで現れ姿消した

ここでの「化け物」を筆者は「死」だと理解しました。
死は僕等、つまり主人公の男性と「君」で表される男性
にとって大切な存在である女性を見つめているようでした。

死は「愛想を振りかざして 君のいる方へ」と向かい彼女
を奪っていったようです。

彼は彼女の眩む様な眼差しが身を刺したことを思い出したの
かもしれません。
「愛して恋して堪(たま)らないの 私一人のモノにして 貴方」
過去に言われた言葉が脳内に優しくこだまします。

続く歌詞では「眦」つまり目の後ろの部分に触れ、彼の怒りの感
情や後悔、虚無と愛憎が混じり合っている様子が列挙されていま
す。
これだけの複雑な感情が彼の一つの心の中で渦巻いていました。

彼はぐしゃぐしゃの心を整理しようとする過程で彼女の回想を始
めたようです。
一つ、また一つと彼女の言葉が頭の中に湧き上がってきます。

「マツカサで見る」とはどういう意味でしょうか。
「マツカサ」は「まつぼっくり」のことでこちらの方が馴染のあ
る呼び名なかもしれません。

マツカサには鱗片と呼ばれる部分がありそれが主軸に螺旋状に重
なってつき、印象的な形を作っています。
つまりマツカサで見るとは「物事を螺旋状に見る、複数の物事を
重ねて見る」ことを描写しているように思えます。

この点から彼女が考え深く視野の広い人物であったことが伺い知
れます。
彼もそんな点に惹かれたのかもしれませんね。

そして彼女の「背伸びしてるの?」という問いに彼が「聞かない
で」と返答している点からも彼が異性の前で良く見せたがる性質
だという点も理解できますね。

彼は毎夜、彼女にもう一度逢うことを切望しています。
しかし夢に姿を現しては消える彼女を両手で抱きしめることはで
きませんでした。
代わりに朝に彼が抱きせめているのは虚しさと孤独だったのです。

昔は君に、今は虚無と孤独に

あの日も風は静かに貴方の髪を靡(なび)かせて
その眼に全部奪われる骨折る過去も
殺された
フラフラと彷徨う街のどこか
悲しみも下(くた)びれてしまった
 
眩む様な眼差しを受け止めた 指を刺せばほらカウンターもろキマんだ
涙流して乞えばいい 陥穽(かんせい) 霧に呑まれる
眼を覚ませアナーキーな化け物共 夜中の三時はもう寝る時間だ
心が痛まないようにまた 君と朝まで眠らせて
それではおやすみ

「あの日」という言葉から彼が彼女との出来事を
回想していることが理解できます。
風に髪をなびかせる彼女の眼を見ただけで彼はそ
れまでの人生の苦痛を忘れてしまいました。

悲しみもくたびれるほどに彼女に征服されてしま
っていたのです。
彼女が生きていた間は彼女こそ彼にとっての征服
者ヴィクターだったのでしょう。

しかし彼女がいなくなり頭も心も虚無と孤独に苛
まれるようになるとそれらが彼の征服者ヴィクタ
ーになったに違いありません。

上記の虚無と孤独は「アナーキーな化け物共」と
して表現されているのだと思います。
アナーキーとは「無秩序」という意味です。
際限なく彼を悩ませているのでピッタリな表現です。

彼はこれ以上、心が痛まないようにと夢の中の彼女
と寄り添うことを願って瞳を閉じます。

彼が安眠できたことを指し示すフレーズはありませ
ん。
しかし、彼女の夢を見ることで幾らかの虚無感と孤
独は征服できるのかもしれません。

そうだとしたら彼女亡き後も、依然として夢の中で
は彼女が彼にとっての征服者ヴィクターであり続け
ているといっても過言ではありません。

まとめ

非常に難解な歌詞だと皆さんも感じたことでしょう。
歌詞構成や綴り方も特殊で謎多きフレーズも多々あり
ましたね。

考察記事もなく筆者の独創的な思考で物語を展開しま
したが、皆さんの考察はいかがだったでしょうか。

一つの考え方として受け取っていただけたら幸いです。
本考察がヴィクターをいっそう味わい深く感じれる助
けになれたのであれば嬉しいです。

愛する人との決別は心痛であり不眠になります(え?)
なくなったら困ると思っていた脳さえ今だけは機能停
止を願うというような気持ちにもなるかもしれません。

その点を今作の主人公も脳の手術というフレーズで表
していたのかもしれませんね。

歌い手のluzさん、作り手のめいちゃん、格好良いイラ
ストを提供してくれたりゅーせーさん有難うございま
した。

みなさんの今後の活動と次回作に期待し注目していき
たいと思います。