筋肉少女帯『オカルト』歌詞の意味と考察〜世界が滅びても恋を選ぶ中二病の純情とは〜

筋肉少女帯2018年プロモーション

UMA UFO フライング・ヒューマノイド
隠されしもの オカルト
昔 神さま ランダムに選んだ男に力与えた
オーラ こっくり 念力 大予言
世界を救う奇蹟じゃ
これでこの世の危機を救うのじゃ
使えるのは ただ一度じゃ

地震 戦争 環境破壊と
何止めるかは お任せ
何を止めるも時間はないのじゃ
たった一度 無駄にすな

振りじゃないぞと神さま脅した
使える時は ただ一度
「わかりました」と男は町へと
世界は彼にかかった

だが男は その力を
片想いに使った
キスを願い 叶えた
それで人類滅びた

ああ そんなことに使っちゃ!
Oh! 神さまゴメンね
ああ 世界が終わっちゃう
でも 神さま僕には
あの娘が世界なんだ
ああ さよなら人類 献杯!

な〜お前
もう一度だけチャンスをやろう
今度こそ 戦争を止めたり
天変地異を予言したりに使うのじゃぞ〜

だが男は また奇蹟を
恋のために使った
デートに誘い 海 行った
またも人類は滅びた

ああ そんなことに使っちゃ!
Oh! 神さまゴメンね
ああ 宇宙が終わっちゃう
でも 神さま僕には
この恋こそ宇宙さ
ああ さよなら人類 献杯!
ああ 人ってわかんない
ああ 人ってわかんない
ああ さよなら人類 乾杯!

呆れ果てた神さまは
宇宙消滅ながめて
どしたものかと考え
粘土コネコネ丸めて
新たな生命(いのち)作った
それが今いるこの世界
それが今あるこの宇宙
隠されてきた オカルト

超ベテランの新作アルバムから映画主題歌『オカルト』を考察

2018年10月31日、メジャーデビュー30周年を迎えた筋肉少女帯が、新作アルバム「ザ・シサ」をリリースしました。全ての歌詞を書いているのは、ボーカリストの大槻ケンヂです。

結成36年という、超ベテラン・バンドの新作ですが、このアルバムからは、円熟だとか燻し銀だとか「アラフィフらしい落ち着き」は微塵も感じられません。

オカルト的なものをテーマにした歌詞は、いかにも中二病を引きずった、ダメな男の戯言のようにも聞こえます。

しかし、歌手で作詞家で小説家で、テレビやラジオのパーソナリティも務める、多才で異能の怪人、大槻ケンヂの歌詞には、笑いやガキっぽさの奥に、深い悲しみや純情など、深い感情が隠されています。

今回は、CSファミリー劇場の人気番組の映画化作品で、2019年春公開の「緊急検証!THE MOVIE」の主題歌に決定した『オカルト』を取り上げ、大槻ケンヂの歌詞の世界を、考えてみたいと思います。

『オカルト』は昭和の異常さの象徴

UMA UFO フライング・ヒューマノイド
隠されしもの オカルト
昔 神さま ランダムに選んだ男に力与えた
オーラ こっくり 念力 大予言

1966年生まれの大槻ケンヂが少年時代を過ごした昭和40年・50年代は、現在のすっきり整理されたデジタル化社会とは違い、猥雑で危うい社会でした。

テレビではUFOや宇宙人、スプーン曲げやノストラダムスの大予言など、「オカルト」を扱う番組が、頻繁に放映されていました。

現在とは、異世界のように違う少年時代の昭和の象徴するキーワードとして、「オカルト」という言葉は選ばれているようです。

「UMA」は、ツチノコや河童など、未確認動物を意味する略語です。
「大予言」は、ノストラダムスの大予言のことで、1999年に人類が滅亡するという予言は、昭和の世間を騒がせました。

『オカルト』の世界観と物語

小説家としても高い評価を得ている、大槻ケンヂの歌詞の多くは、小説のように、ひとつの物語になっています。

『オカルト』では、4分17秒の曲の間に人類が2回滅び、神さまは落胆し、それでも気を取り直して3度目の創造でこの世界を作ったという、壮大な物語が繰り広げられます。

冒頭で神さまが語り始める型破りの歌詞

世界を救う奇蹟じゃ
これでこの世の危機を救うのじゃ
使えるのは ただ一度じゃ

地震 戦争 環境破壊と
何止めるかは お任せ
何を止めるも時間はないのじゃ
たった一度 無駄にすな

神さまが語るという歌詞は、なかなかないものです。人類の現状に危機を感じた神さまは、ランダムに選ばれたある男に、世界の危機を救う奇蹟の力を与えます。

奇蹟の力をうまく使わなければ、世界は滅びると、神さまは選んだ男に警告し、男は「わかりました」と、素直に答えます。

しかし、男のとある思いと行動により、「そして世界は救われた」という、ハッピーエンドにはなりません。

奇跡を起こす『オカルト』の力で男がしたかったこととは?

<

だが男は その力を
片想いに使った
キスを願い 叶えた
それで人類滅びた

世界を救う力を与えられた男は、もちろん世界を救うことができます。

さらに、その力を悪用し、莫大な富を得ることや、全ての者を支配することや、あらゆる欲望を叶えることもできたはずです。

世界を、自分の快楽のために存在させ続けることもできたのに、男は、その奇蹟の力を「まさか」ということに使ってしまいます。

「片想いに使った」
「キスを願い 叶えた」
「それで人類滅びた」

片想いのあの娘と、キスをするために、男は奇蹟の力を使ってしまいました。そして、人類を救うことができず、人類は滅びてしまいます。

人類や世界より、片想いのあの娘とキスすることが大事って、大人の判断ではあり得ない感じです。

しかし、この曲の主人公である男には、人類や世界より、自分を好きになってくれない片想いの「あの娘」とキスすることの方が大事でした。

『オカルト』にはまる中二病男の想像力

ああ そんなことに使っちゃ!
Oh! 神さまゴメンね
ああ 世界が終わっちゃう
でも 神さま僕には
あの娘が世界なんだ
ああ さよなら人類 献杯!

キスしたり、デートで海に行ったり、そんな些細なことが、人類や世界の存続より大事だって、それって、まさに中二男子の妄想です。

しかし、そんな男に呆れながらも、神さまは怒りません。「ああ、そんなことに使っちゃ!」と言いながら、また世界を、一から作り始めます。

好きなあの娘とキスすることが、人類全ての命より大事だと思い、奇蹟の力を使ってしまう男を、神さまは、呆れながらも赦してしまいます。それはなぜなのでしょうか。

「献杯」は「乾杯」に似た言葉ですが、使われる場面が違います。
「献杯」は、葬式で使われる言葉で、杯を故人に献げるという意味があります。

「ああ さよなら人類 献杯!」

お葬式をしてくれる人もいない世界で、「献杯!」と言うのは、神さまでも男でもなく、この物語を歌っている大槻ケンヂでしょうか。

『オカルト』の歌詞が本当に伝えたいこと

皮肉に聞こえる「乾杯!」が本当に表したいこと

Oh! 神さまゴメンね
ああ 宇宙が終わっちゃう
でも 神さま僕には
この恋こそ宇宙さ
ああ さよなら人類 献杯!
ああ 人ってわかんない
ああ 人ってわかんない
ああ さよなら人類 乾杯!

「ああ 人ってわかんない」
「ああ さよなら人類 乾杯!」

「献杯!」と歌った大槻ケンヂは、曲の最後で「乾杯!」と歌います。人類が滅びたことに「乾杯!」というのは、大槻ケンヂらしい皮肉に聞こえます。

しかし、この「乾杯!」は、人類に対する悪意ある皮肉ではありません。

世界を救う力を、片想いのあの娘とキスをするために使った男の純情、真っ直ぐな愛情を称えた言葉なのです。

中二病男の愚かな行動が心を揺さぶる

呆れ果てた神さまは
宇宙消滅ながめて
どしたものかと考え
粘土コネコネ丸めて
新たな生命(いのち)作った
それが今いるこの世界
それが今あるこの宇宙
隠されてきた オカルト

そして、「呆れ果てた神さま」は、人類を見捨てることなく、また、新たな生命(いのち)を作ります。

男が人類の救済より、あの娘を選んだことに、神さまは絶望しませんでした。その行動が、純粋な愛と欲望に基づくことを、神さまは分かり、呆れながらも認めたからです。

男は、キスや海でのデートという、中学生のような望みを、奇蹟の力でかなえました。男は、何が重要なのかわからない、ただの愚かなガキです。

しかし、迷いのない真っ直ぐな愛の行動は、どこか私たちの心を、揺り動かします。

まとめ『オカルト』は大人になれない人の思いの純粋さを歌う

筋肉少女帯の『オカルト』は、自分の少年時代にブームだった「オカルト」を手がかりに、少年らしい純情を歌った、ラブソングです。

大槻ケンヂの歌詞や発言は、一見お笑いに思えますが、どの曲もその奥に、人間とその営みに対する深い愛情が込められています。

アルバムタイトル「ザ・シサ」の「シサ」は、他の曲のタイトルになっている、「視差」を意味しているそうです。

「視差」とは、測量で使われる用語ですが、違う視点から見ると、同じものが全く違って見える、という意味でも使われます。

私とあなたでは、同じものが違って見えるけれど、その違いで対立するのではなく、多様な見方で、より良く世界を見よう。アルバム全体からは、そのようなメッセージも感じられます。

ぜひ、アルバムの他の曲もチェックしてみてください。こんな見方もあるのかと、驚かされることでしょう。「ザ・シサ」は聞く価値のある傑作です。

コメントを残す