じん『カゲロウデイズ』歌詞の意味を考察・解釈~カゲロウプロジェクトの発端となった伝説の名曲を読み解く~

8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することも無いから君と駄弁(だべ)っていた
「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
君はふてぶてしくつぶやいた
あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
バッと通ったトラックが君を轢きずって鳴き叫ぶ
血飛沫(しぶき)の色、君の香りと混ざり合ってむせ返った
嘘みたいな陽炎(かげろう)が「嘘じゃないぞ」って嗤(わら)ってる
夏の水色、かき回すような蝉の音に全て眩んだ
目を覚ました時計の針が鳴り響くベッドで
今は何時?
8月14日の午前12時過ぎ位を指す
やけに煩(うるさ)い蝉の声覚えていた
でもさぁ、少し不思議だな。
同じ公園で昨日見た夢を思い出した
「もう今日は帰ろうか」道に抜けた時
周りの人は皆上を見上げ口を開けていた
落下してきた鉄柱が君を貫いて突き刺さる
劈(つんざ)く悲鳴と風鈴の音が木々の隙間で空廻り
ワザとらしい陽炎が「夢じゃないぞ」って嗤ってる
眩む視界に君の横顔、笑っているような気がした
何度世界が眩んでも陽炎が嗤って奪い去る。
繰り返して何十年。もうとっくに気が付いていたろ。
こんなよくある話なら結末はきっと1つだけ。
繰り返した夏の日の向こう。
バッと押しのけ飛び込んだ、瞬間トラックにぶち当たる
血飛沫の色、君の瞳と軋(きし)む体に乱反射して
文句ありげな陽炎に「ざまぁみろよ」って笑ったら
実によく在る夏の日のこと。 そんな何かがここで終わった。
目を覚ました8月14日のベッドの上
少女はただ
「またダメだったよ」と一人
猫を抱きかかえてた

はじめに

2011年9月30日にネット投稿され爆発的な人気を得た楽曲である。
以降、2012年1月16日にミリオン達成し現在では1,000万を超える
動画再生でボカロ界の伝説となった名曲です。

ボカロ界では知らない人の方が少ない『カゲロウプロジェクト』ですが
この『カゲロウデイズ』が発端となっています。
2014年4月に『カゲロウプロジェクト』は「メカクシティーアクターズ」
というタイトルでアニメ化されました。
このアニメが『カゲロウデイズ』の登場人物を理解する助けになります。

自然の敵Pことじんさんの第3作目となる曲ですが
この一曲を軸に壮大なスケールのプロジェクトが構成され
音楽だけでなく書籍や映画にまで影響を与えることになりました。

じんさんは何度も聴きたくなる中毒性を含む独特の歌詞が得意です。
曲調は異世界のような不思議な世界観を表現したものが多いように
感じます。

特に今回考える『カゲロウデイズ』は曲が進行するたびに
胸の奥でざわつきや焦りを感じる内容となっています。

それでは歌詞の考察・解釈を初めていきましょう。

歌詞の意味を理解したあなたはもう『カゲロウデイズ』の
世界から抜け出せなくなっていることでしょう。

タイトル『カゲロウデイズ』の意味

「カゲロウ」は自然現象の「陽炎」のことです。
現れては消える幻の比喩として用いられることがあります。

「デイズ」は「日々」を意味しますから
一日ではなく何日かの出来事を扱っていることが理解できます。

実際に歌詞中には日付がフレーズとして登場し
日記のような進行になっています。

『カゲロウデイズ』MVからもわかるのですが
二人の男女が主役として描かれているのがわかります。

そして猫と主人公に付きまとう陽炎が登場します。

これらの関係を理解することで歌詞本来の意味を
把握することが可能になります。


『カゲロウデイズ』歌詞の意味

夏のしらべ~恐怖の序章~

8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することも無いから君と駄弁(だべ)っていた

まず『カゲロウデイズ』では二人の主役が登場します。
前述でも取り上げたアニメ「メカクシティーアクターズ」と
MVを比較して名前などを知ることができます。

雨宮響也(通称ヒビヤ※この記事でも以降ヒビヤと表記)という
男性が主人公となり様々な事件に巻き込まれていきます。

朝比奈日和(通称ヒヨリ※この記事でも以降ヒヨリと表記)という
女性がヒロインとなりヒビヤと同じく事件に巻き込まれてしまいます。

歌詞冒頭のフレーズから8月15日の午後12時半くらいの
出来事を題材にしていることがわかります。

太陽の日差し照りつける猛暑だったのでしょう。
ヒビヤとヒヨリは特に予定もなくただ
何気ない会話を楽しんでいました。

二人ともこんな日常がこの先もずっと変わらず
続くものだと思っていました。


惨劇の招き猫

「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
君はふてぶてしくつぶやいた
あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
バッと通ったトラックが君を轢きずって鳴き叫ぶ
血飛沫(しぶき)の色、君の香りと混ざり合ってむせ返った
嘘みたいな陽炎(かげろう)が「嘘じゃないぞ」って嗤(わら)ってる
夏の水色、かき回すような蝉の音に全て眩んだ

ヒヨリは夏の日差しや暑さが嫌いなようです。
肌も白く焼けたりするのも気になるのでしょう。
猫を撫でながらそんなぼやきを口にします。

そうこうしているうちにヒヨリの撫でていた猫が
急に走り出します。
ヒヨリは逃げる猫を追いかけ道路に飛び出します。
信号機は真っ赤に染まった赤でした。

間の悪いことにやってきたトラックがヒヨリの身体と
重なります。
トラックからは急ブレーキのキィー!という悲鳴と
ヒヨリを引きずる不快な音色が聞こえてきます。

その光景を目視していたヒビヤは信号機の赤よりも
はるかに色濃いヒヨリの流した血と、さっきまで
自分の近くで香っていたヒヨリのほのかな香りが
相まってむせ返ります。

そして不意に現れた陽炎が意地悪く「嘘じゃないぞ」と
主人公に現実を受け入れるように囁き姿を消しました。
まさに現れては消える陽炎です。

意識が朦朧としてきたヒビヤはその場に倒れ込んだのでしょう。
夏の水色の空を見上げながら耳障りな蝉の音に意識がかき乱されます。
ヒビヤの目に映るすべての光景は徐々に眩んでいきました。

刹那の安堵~終わらない日々の始まり~

目を覚ました時計の針が鳴り響くベッドで
今は何時?
8月14日の午前12時過ぎ位を指す
やけに煩(うるさ)い蝉の声覚えていた
意識を取り戻したヒビヤは自宅のベッドにいました。
まだぼーっとした頭で時計をふとみると
ヒヨリが事故に遭う一日前に戻っていたのです。ヒビヤは少し安堵すると同時に不安を覚えます。
昨日までのすべてを夢で片付けるにはあまりに
安直且つ短絡的であるからです。

それを証拠づけるようにヒビヤの耳には
事件が起きた日の耳障りな蝉の声が
べっとりと纏わりついていたのです。


終わらない惨劇の中で

でもさぁ、少し不思議だな。
同じ公園で昨日見た夢を思い出した
「もう今日は帰ろうか」道に抜けた時
周りの人は皆上を見上げ口を開けていた
落下してきた鉄柱が君を貫いて突き刺さる
劈(つんざ)く悲鳴と風鈴の音が木々の隙間で空廻り
ワザとらしい陽炎が「夢じゃないぞ」って嗤ってる
眩む視界に君の横顔、笑っているような気がした
何度世界が眩んでも陽炎が嗤って奪い去る。
繰り返して何十年。もうとっくに気が付いていたろ。
こんなよくある話なら結末はきっと1つだけ。
繰り返した夏の日の向こう。
いつものようにヒビヤはヒヨリと一日を過ごしています。
昨夜の出来事と平和な今日を重ねながら不思議に思います。しかしヒビヤの不思議というふわふわした感覚は突然
カタチを変えていきました。

昨日と同じ公園に景色、そしてヒヨリの変わらない笑顔や
気だるそうな素振りがヒビヤに危機感という鋭い感覚を
持たせたのです。

これ以上時間を共に過ごせばまたヒヨリが危険に遭うかも
しれないと考えたヒビヤは「もう今日は帰ろうか」と
切り出します。

公園を出ると何人かの人たちが群がっていることに気づきます。
皆揃って口をだらしなくあけ上空を見上げているようです。

ヒビヤもヒヨリもなんだろうねと首をかしげていたのでしょう。
その疑問の答えはヒヨリの身を持って回答されました。

上空から降ってきた鉄柱がヒヨリの身体を貫通します。
鉄柱がヒヨリの身体と交差する時の不快極まりない音と
風に吹かれる風鈴と木々のざわめきが雑音となり
ヒビヤの耳に届きます。

驚愕して立ち尽くすヒビヤをあざ笑うかのように
またしても不意に現れた陽炎が「夢じゃないぞ」と
いじわるく語ります。

この時点で「ワザとらしく」とあるので
ヒビヤは正体不明の陽炎が惨劇の原因なのではと
疑い始めたと思われます。

それから何十年も経過してヒビヤの疑惑が確信に変わります。
陽炎が惨劇の首謀者であの手この手を尽くしてヒヨリの
命を奪っていると断定します。

ここまでの設定や構図からアニメ「シュタインズゲート」を
連想された方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

タイムリープやヒロイン救出の試みに何度も失敗する点が
類似しているからでしょう。

しかし歴史を振り返ると1935年1月に発売された
「ドグラ・マグラ」という小説にも「無限ループ」の
概念があり以降多くの書籍や音楽などで用いられて
きたことがわかります。

余談はさておきヒビヤは何十年も繰り返されてきた
惨劇の最中、ある解決策を思いつきます。
正確に述べるともっと前に思いついていたのかもしれません。
「もうとっくに気が付いていたろ」とあるからです。

その解決策とはヒヨリが惨劇に遭う時に自分が身代りになる
ことでした。
気がついていたものの勇気が持てなかったのでしょう。

幕を閉じる少年、幕を開ける少女

バッと押しのけ飛び込んだ、瞬間トラックにぶち当たる
血飛沫の色、君の瞳と軋(きし)む体に乱反射して
文句ありげな陽炎に「ざまぁみろよ」って笑ったら
実によく在る夏の日のこと。 そんな何かがここで終わった。
目を覚ました8月14日のベッドの上
少女はただ
「またダメだったよ」と一人
猫を抱きかかえてた
思い立った計画を実行に移すヒビヤは
以前のように猫を追いかけ飛び出すヒヨリを
押しのけ道路に飛びこみました。全身に走る言葉にできないほどの激痛と血しぶきの中で
ヒビヤはあっけにとられたヒヨリの瞳とその奥で悔しがる陽炎を
見ました。

死ぬ間際にヒビヤが口にした一言は痛いでも
死にたくないでもなく「ざまぁみろよ」でした。

ヒビヤは自分の命と引き換えに陽炎の挑戦に勝利
したのです。
したように見えたのです。

歌詞中の最後のフレーズがその勝利の余韻が一過性の
ものに過ぎなかったことを示唆しています。

最後の部分だけはヒヨリの視点で書き出されています。
ヒヨリは自宅のベッドでヒビヤと同じように
無限ループに逆らえないことを実感していました。

永遠に続く真夏と惨劇は二人の前に
苦渋の選択を残します。

ヒヨリを助けずに過し自分が傷つく選択と
ヒヨリの身代りとなりその為にヒヨリが傷つく選択です。

ハッピーエンドを知らないこの上演会の
幕が引かれることはないでしょう。

終わらないバッドエンド、

それが『カゲロウデイズ』なのですから。

まとめ

ボカロには珍しい一つの理解しやすいストーリー構成となっています。
現在はアニメ、マンガ、小説など幅広く表現されている
『カゲロウデイズ』の人気はとどまるところを知りませんね。

私たちの日常にも会社や学校で
繰り返される終わらないとも思える辛い出来事が
あるかもしれません。

その中でもヒビヤのように解決策を見出す勇気を
与えられるような気がします。

じんさんの今後の活動や新プロジェクトに大いなる期待を
抱いて注目していきます。