星野源『さらしもの』 (feat. PUNPEE) 歌詞の意味を考察・解釈

生まれて独りステージに立って
フィナーレまでは残り何公演
人差し指の隣の指はまだ仕舞っておいて
また後世

この輝きは僕のじゃなくて
世の光映してるだけで
身の丈じゃないプライドは君にあげる受け取って
捨てといて

滑稽なさらしものの歌
あたりみりゃ 一面のエキストラ
だけど君のその世界じゃ
僕も雇われたエキストラだっけ

イヤモニで閉じこもって
また自分のせい(・・)って気づいてる
でもそこにすら君はいた
もしかすると孤独は一人ではないって…

いえる!

Starting off with you and I
さらしものだけの 愛があるだろう
まだ変わらない 怠けた朝が
歩みを照らしだすまま

さらしものだよばかのうた
語りき埼玉のツァラトゥストラ
ぼっちの足元の先は
ほぼほぼ 道すらなかった

ふと振り返ると ぞろぞろと
後ろつけ楽そう有象無象
はてな別の方 道のない進む小僧
凡人の黒ぶち 偉大な暇人

あらお悩みですか
君だってそうじゃん
同じムジナ
交わりだした

「なんてことない」なんてことない!…けど
形のない何かで交われる
君の体をWi-Fiが通り抜け 道草で腹を満たす
またその場所に君はいた
もしかすると孤独は一人ではないって…

みえる!

Starting off with you and I
さらしものだけの 夢があるだろう
まだ変わらない 怠けた朝が
歩みを照らしだす

Starting off with you and I
さらしものだけの 愛があるだろう
まだ変わらない 怠けた朝が
歩みを照らしだすまま

歌詞考察の前に

『さらしもの』とは2019年10月13日にネット上で公開された楽曲です。
同年10月14日リリースされた EP『Same Thing』に収録されています。
動画再生回数は公開から3週間経過した現在で180万を超える大人気ナンバーです。

それもそのはず、今作では星野源さん初ラップが披露されファンの間で注目されています。
ラッパーのPUNPEEさんをフィーチャリングゲストに迎え共に歌っています。

大ヒットとなった前作「恋」「ドラえもん」が長年話題となり、星野源さんのイメージとして定着したように感じます。
そのイメージを持つ人たちからすると今作は意外性100%だったと思います。

しかし俳優・音楽家・文筆家など幅広く活動されてきた星野源さんのことを考えると、他ジャンルにトライすることに筆者はなんら違和感を感じません。
動画コメント欄でも意外性より魅力が上回ったことや、より一層好きになったという人も多く見受けられました。

今作の曲調とMVはどのような構成になっているのでしょうか。

MVでは落ち着いた雰囲気の一室が映し出されます。
レコードが回され、Jazz調に奏でられたピアノが流れ出します。
スタッカートに合わせて星野源さんとPUNPEEさんが身体揺らして踊ります。

部屋の様子や二人のやり取りから、気心しれた友人と語り合っているように筆者は感じました。
今までに見たことないくらい星野源さんがゆったりとして楽しそうに見えました。

そんな様子が歌詞全体にも表現されていることに気づきました。
彼のこれまで歌ってきたことや、今も感じている心情を汲み取りながら、歌詞考察をしていきたいと思います。

タイトル『さらしもの』とは

タイトルは「晒し者」と表記され「人前で恥をかく人」を指します。
昔から犯罪者は家族や隣人の前で罰を受けさらされました。
日常においては、大勢の目の前で失敗したり、多数派の意見に逆行した結果、多くの人たちから批難や中傷を浴びせられることも該当します。

星野源さんは過去作品においてヒーローの孤独や自身の不安などを打ち明けています。
ある番組では音楽をやめてしまいたくなったこともあるとコメントしていました。

ですから彼の視点からすると、アーティストとしてまたスターとしての孤独と、それを大勢の人たちの前でさらけだすという意味合いをタイトルに込めたのだと考えました。

基本的に注目されたアーティストが自身の本音をさらけだすのはタブーとされています。
評判低下や週刊誌の的にされることもよくあるからです。

しかし今作の歌詞を見ると、可能な範囲で星野源さんがPUNPEEさんと手を取り合って本音を語っているように筆者は感じました。

『さらしもの』歌詞の意味

座ったままの中指

生まれて独りステージに立って
フィナーレまでは残り何公演
人差し指の隣の指はまだ仕舞っておいて
また後世

今回の考察では星野源さんを主人公として進めていきたいと思います。

彼は埼玉県浦和市生まれ、川口市育ちのアーティストです。
2000年10月から2015年までインストゥルメンタルバンド「SAKEROCK」のリーダーとして音楽活動をしていました。

解散してからはずっと独りで活動してきました。
しかし注目したいのは歌詞冒頭で「生まれて独りステージに立って」と表現されています。

これは彼が文字通り1人でステージに立った時のこと、もしくは生まれてからずっと人生というステージで孤独を感じてきたという点を示唆しているのかもしれません。

「独り」という表現のしかたから孤独を筆者は連想したからです。

「人指し指の隣の指」とはなんと興味深い表現なのでしょうか。
考えられる指は2本あります。

・親指
・中指

さらにこの2本を限定するためのヒントとなるのが続くフレーズの「まだ仕舞っておいて」です。

親指を立てる場合、good(良い)を印象付けるサインとなります。
ファンの前で問題なく出来るサインと言えるので仕舞う必要はありませんね。

対して中指を立てるのは相手への挑戦・挑発を意味するサインとなります。
ファンの前でいかなる理由があっても、控えなければならないでしょう。

ですから「人指し指の隣の指」は「中指」だと解釈できます。

簡単に言うと星野源さんの音楽活動における孤独や不安、自分の思うようにいかないことに対する愚痴を表に出すことを描写していると考えられます。

しかし彼は立場上、すでにかなりの人気を得ており、音楽以外にも幅広い活動を
していました。

ですから後先考えた結果、中指を立たせることをやめる、つまり愚痴や本音を言
うのを控えたことを理解できます。
そうするとまた孤独になり、座らせた中指の不満が溜まっていったと思います。

照らされる者

この輝きは僕のじゃなくて
世の光映してるだけで
身の丈じゃないプライドは君にあげる受け取って
捨てといて

この部分では星野源さんが謙虚に自身の功績について振り返っているように思えます。
彼はこれまでにあらゆる分野で数多くの賞を獲得してこられました。

・2009年 SAKEROCKのMV「ホニャララ」で、『SPACE SHOWER Music    Video Awards』のBEST CONCEPTUAL VIDEO賞を受賞。

・CDショップ大賞第3回 入選。

・2011年10月、ソロ名義での2ndアルバム『エピソード』が、オリコン・ウィークリーチャート(2011年10月10日付)で5位を獲得、第4回CDショップ大賞準大賞を受賞。

これだけ並べてみてもかなりの数です。
それでも彼は自身によるものではなく世の中にすでにあった影響力を自身は反映しただけであると述べているようです。

そして自身の中に知らず知らずの内に生まれていた巨大なプライドを「君」という存在に託していきます。
「君」とはいったい誰のことなのでしょうか。

もう一人のさらしもの

イヤモニで閉じこもって
また自分のせい(・・)って気づいてる
でもそこにすら君はいた
もしかすると孤独は一人ではないって…

いえる!

「イヤモニ」とはなんでしょうか。
耳に装着し俗に「返し」と呼ばれる音が流れており、客席のメインスピーカーから出ている音とは別で、自分の声や他の楽器の音などそれぞれの演奏者に最適なバランスで調整された音を聞くことができます。

インイヤーモニターのことでミュージシャンであれば当たり前のように耳に装着しています。
「イヤモニに閉じこもって」とは簡単に言うと「自分の世界に閉じこもって」という意味なのだと思います。

独り殻に閉じこもり、周囲の意見や評価を気にしないで生きて行く様子を表現しているとも考えました。
しかし、そうやって孤独に過ごす間も彼には寄り添ってくれた「君」という存在がいました。

それは今回隣で歌っている「PUNPEEさん」のような仲間のことでしょう。
同じような孤独を背負い、同じ景色を見て来た人がいることに彼はいつしか気づいたのでしょう。

自分の考え方、一番やりたいことは世間と逆行しているかもしれない、これを口にすればさらしものになってしまうと長年考えていたのでしょう。

しかし「君」という存在であれば、話して打ち明けても良いかもしれないと安堵したのだと筆者は解釈しました。

MVと合わせて考えると、友達の部屋に自分が心許した友人と2人だけ。
他には誰もいないその状況で本音を語り合えることを彼は喜んだのでしょう。

歌詞にもその喜びが表現されており、さらしものがもう1人いて、いまなら孤独な自分1人ではないって言えると心から思えたに違いありません。

大事なところ

さらしものだよばかのうた
語りき埼玉のツァラトゥストラ
ぼっちの足元の先は
ほぼほぼ 道すらなかった

ふと振り返ると ぞろぞろと
後ろつけ楽そう有象無象
はてな別の方 道のない進む小僧
凡人の黒ぶち 偉大な暇人

この部分に入る前にMVでは曲がストップします。
レコードの続きを聴くことを勧めるPUNPEEさんは一言「次んところ、いいところ」と口にします。

このやり取りからもこの部分がとても重要な歌詞だと理解できます。
筆者も歌詞を見てすぐに納得しました。

まず懐かしく感じたのが「ばかのうた」です。

「ばかのうた」とは星野源さんの記念すべき1stアルバムです。

「ツァラトゥストラ」とはなんでしょうか。
「ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの著Also sprach Zarathustra(1883年―1885年)の略称で,直訳すれば〈ツァラトゥストラはこう語った〉。

上記から哲学者の作中の考えと自身の考えをリンクしていることが理解できます。

作中で主人公ツァラトゥストラは自身の考えを世の中に伝えようと志します。
しかし彼の教えは大衆には受け入れられず、彼は一人山中にこもってしまいます。
しかし良き理解者との出会いをきっかけにまた教えを広める決意をしました。

主人公ツァラトゥストラの人生が星野源さんの人生と重なる部分があったのでしょう。
PUNPEEさんのような理解者たちに恵まれ自身の殻から出て来られたことに言及しているのだと感じました。

「埼玉のツァラトゥストラ」と表現しているのは彼が埼玉出身であり、そのころから作中主人公と生き方が重なったことを示唆しているのでしょう。

「凡人の黒ぶち 偉大な暇人」とは特徴からもPUNPEEさんのことではないかと思われます。

今作はトップスターを陰で支えてきた理解者の歌、そしてさらしものとさらしものが出会い、さらしものたちになっていく友情の歌であると筆者は解釈します。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
俳優としての明るい役、そして笑顔全開で歌っている歌手としての姿を見ていると信じられない一面に思えたことでしょう。

映像を通じてしかしらない私たちにとっては、スターの苦悩を見て取ることは不可能なのかもしれません。
ですから今作の歌詞を通して、光り輝くスターの陰の部分を見ることができたのはたいへん貴重なのではないでしょうか。

MVの2人のように辛い時に何でも話し合える友に恵まれると幸せですね。
さらに自身が抱える不安や本音、また愚痴を溜めこまないで誰かに話す大切さも感じ取ることができました。

さらしものという強烈なタイトルのなかに優しく温かなものを見た気がします。

星野源さん、そしてPUNPEEさんの今後の活動と次回作に期待し注目していきたいと思います。

心温まる素敵な作品をありがとうございました。

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