星野源『SUN』歌詞の意味・考察と解釈

Baby 壊れそうな夜が明けて
空は晴れたよう
Ready 頬には小川流れ
鳥は歌い

何か楽しいことが起きるような
幻想が弾ける

君の声を聞かせて
雲をよけ世界照らすような
君の声を聞かせて
遠い所も 雨の中も
すべては思い通り

Ah Ah

Baby その色を変えていけ
星に近づいて
Hey J いつでもただ一人で
歌い踊り

何か 悲しいことが起きるたび
あのスネアが弾ける

君の声を聞かせて
雲をよけ世界照らすような
君の声を聞かせて
遠い所も 雨の中も
すべて同じ陽が

祈り届くなら
安らかな場所にいてよ
僕たちはいつか終わるから
踊る いま

いま

君の声を聞かせて
雲をよけ世界照らすような
君の声を聞かせて
遠い所も 雨だって

君の歌を聴かせて
澄み渡り世界救うような
君の歌を聴かせて
深い闇でも 月の上も
すべては思い通り

Ah Ah

 

2015年に発売された星野源の通算8枚目シングル、『SUN』。ノリやすいキャッチーなメロディーとリズムが特徴的な曲です。カラオケで歌ったことがある人も多いのではないでしょうか。今回はそんな星野源の曲、『SUN』が作られた背景の解説や歌詞の意味を考察致します。

 

『SUN』はバナナマンの日村勇紀に送られた曲

まずはこの曲ができた背景を解説しましょう。星野源はラジオ「金曜JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD」にて2010年から毎年バナナマンの日村勇紀にバースデーソングを送っています。そのクオリティはそれぞれ非常に高く、『SUN』は2014年のバースデーソングが元になった曲なのです。ちなみにラジオにて披露された際のこの曲のサビは「日村近寄るな どこか遠い所に行けよ」というものでした。

 


『SUN』のタイトルの由来

『SUN』の元曲はバナナマンの日村勇紀に送られた曲。このように考えると日村勇紀の「日」からきたタイトルと推察されます。しかし、『SUN』の前シングルのタイトルが『Crazy Crazy/桜の森』であることを考えるとタイトルの由来はそれだけではないといえるのではないでしょうか。なぜなら前シングルが春を象徴する桜をモチーフにしているのに対し、『SUN』は夏を象徴する太陽をモチーフにしているからです。穏やかな春から盛り上がる夏へ・・・。穏やかな前作から変わり、今作は盛り上がる曲だということを象徴するために星野源は『SUN』というタイトルを名付けたのではないかと考えられます。

 

『SUN』のテーマ

前項では『SUN』のタイトルの由来はバナナマンの日村勇紀の「日」、そして春をモチーフにした前作から流れを受けて夏をモチーフにしていることを象徴するためということを解説しました。では、この曲のテーマとはどんなものでしょうか。一言で言うと、悲しみの中で楽しむというものだと思います。この曲はキャッチーな明るい曲調とは対照的に、歌詞はただ明るいだけのものではなく辛いこともあるけれどそれでも楽しんで生きていこう、と背中を押してくれる内容になっているのです。以降、歌詞の意味を考察していきます。

 


森羅万象を用いた高揚の表現

Baby 壊れそうな夜が明けて

空は晴れたよう

Ready 頬には小川流れ

鳥は歌い

何か楽しいことが起きるような

幻想が弾ける

一番のAメロからBメロです。夜、空、小川、鳥。
夜が明け、空は晴れ、鳥が歌う。直接的な感情表現を用いずとも何だか楽しい心持ちになってくるシンプルかつ誰にでも響くわかりやすい歌詞ですね。また「頬には小川流れ」という部分は涙を流している描写に間違いはないですが、「大滝」、「大雨」といったような表現でなく水量の少ない「小川」であることから静かな涙を表しており、悲しみの最中から抜け出した状態であることがわかります。「壊れそうな夜が明けて」という部分からもそのような状態であることが読み取れますね。そしてBメロの「何か楽しいことが起きるような 幻想が弾ける」という歓喜へ向かおうとしている表現に続くのです。

 

大それた表現からみる「君」への愛

君の声を聞かせて

雲をよけ世界照らすような

君の声を聞かせて

遠い所も 雨の中も

すべては思い通り

一番のサビです。サビの歌詞はかなり大げさなことを描写している印象を受けます。「雲をよけ世界照らすような」、「遠い所も雨の中もすべては思い通り」。まるで全知全能の存在を描写しているかのようですね。しかし歌詞の中でそれは「君の声」だと明示されています。もちろん急に世界観がファンタジーになったわけではなく、これは比喩表現。Aメロから続く高揚感の中で発せられる君の声はそれだけ魅力的だ、ということを指し示しているのだと思います。悲しみを抜け出そう、そして楽しむ君は素敵だということを直接的な表現を使わず、かつ真意をしっかりと読み取れる歌詞を書く星野源の作詞能力の高さを感じます。

 


「J」とは何者か

Baby その色を変えていけ

星に近づいて

Hey J いつでもただ一人で

歌い踊り

何か悲しいことが起きるたび

あのスネアが弾ける

 

二番のAメロからBメロです。ここで『SUN』の肝とも言える「Hey J」という歌詞が登場します。一番の歌詞は抽象的な表現が多かった中、特定の人物に語りかけるようなこの歌詞は明らかに異質です。では「J」とは誰のことを指しているのでしょうか。答えはキング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンの事です。星野源は彼を敬愛しており、ライブでもマイケル・ジャクソンを模したパフォーマンスを披露しています。また『SUN』の特設サイトの解説にも下記のように書かれており「J」がマイケル・ジャクソンのことを指していることは間違いなさそうです。

 

「途中、一際声を張り“Hey J”と誰かの名を呼ぶ場面がある。これは星野源の抑えることが出来ないマイケル・ジャクソン愛の衝動的な奔出でもある」

引用 : http://www.hoshinogen.com/special/sun/

 

何故ここでマイケル・ジャクソンのことを歌うのか?その答えは二番のサビで明らかになります。

 

終わりがあるからこそ今を楽しむ

君の声を聞かせて

雲をよけ世界照らすような

君の声を聞かせて

遠い所も 雨の中も

全て同じ陽が

祈り届くなら

安らかな場所にいてよ

僕たちはいつか終わるから

踊る いま

いま

 

二番のサビです。「僕たちはいつか終わるから踊る いま」。サビのこの部分こそ『SUN』で星野源が最も伝えたかったことであり、悲しみの中で楽しむというこの曲のテーマを最もよく表した歌詞だと思います。この部分を歌うとき音が手拍子のみとなり、歌詞を強調するような構成になっていることからも星野源がこのフレーズを特にリスナーに聞いて欲しいという思いを持っていることは明らかです。いつか終わる。つまりいつか死ぬ。このことを星野源が最も伝えたいと考えるに至ったのは自身がくも膜下出血で倒れ、死を意識するほど苦しんだ経験からでしょう。自著、『蘇る変態』では当時の苦しみをこのように綴っています。

 

「今すぐにでもベッドの頭上にある窓から飛び降りたい。早く死んでしまいたい。こんな拷問のような痛みはもうたくさんだ」

引用 : http://news.livedoor.com/article/detail/8914623/

 

そして二番のAメロで「Hey J」とマイケル・ジャクソンに語りかけたのは死を思った際に、敬愛していてかつ既に亡くなってしまった彼に想いを馳せたためだと考えられます。だからこそ「Hey J」と歌う時、星野源は一際声を張り上げるのでしょう。そして「踊る いま」、つまり今を最大限に楽しもうと歌うのです。死線を潜り抜けた星野源だからこそ歌える力強いメッセージですね。そして大サビへと続き『SUN』はクライマックスを迎えます。

 

もっと「君」に楽しんで欲しい

君の声を聞かせて

雲をよけ世界照らすような

君の声を聞かせて

遠い所も 雨だって

君の歌を聴かせて

澄み渡り世界救うような

君の歌を聴かせて

深い闇でも 月の上も

すべては思い通り

 

大サビです。ここで着目すべきなのはこれまで繰り返しサビで用いられた「君の声を聞かせて」という部分が「君の歌を聴かせて」と変化していることでしょう。
「声」から「歌」、そして「聞かせて」から「聴かせて」。
より多く発せられた声は歌と変化し、より深い傾聴は聞を聴へと変化させるのです。

悲しみから抜け出しもっと楽しんで欲しい。そしてそんな君をもっともっと見たい。

そんな思いがこの表現の変化に込められています。
ところで、ここでいう「君」とは果たして誰のことを指すのでしょうか。
特定するような描写がないことからこれは『SUN』を聞くリスナー全員のことを指すと思われます。
この曲中で星野源は悲しいこともあるけれどその中で楽しもうとリスナーに直接語りかけているのです。
聞くたびにキャッチーなリズムに自然と体が動くだけでなく、その強いメッセージ性にはっとさせられる名曲です。

 

最後に

歌詞を考察した結果、『SUN』は深い苦しみの中でもがいた星野源が復活し、苦しみの中でも力強く、楽しく人生を生きるというメッセージをリスナーに語りかける曲であることがわかりました。
このような重いメッセージを曲にする時、一般的にはバラードや弾き語りのような歌詞が聞きやすい曲調や構成が選択されることが多いと思います。
しかし、星野源は悲しみの中で楽しむというテーマを体現するがごとくアップテンポでキャッチーな曲調で私たちにそのメッセージを伝えてくれました。
そんな並々ならぬ星野源の思いと工夫が詰めこまれた『SUN』でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました!