DECO*27『ネガティブ進化論』歌詞の意味を考察・解釈

「ねえ一緒なんじゃない?」 なんて信じられない
これは面倒くささと好奇心らの病みのバトル
“あなたのことが私は嫌い”
言葉が痛いほど視界をエグる

想定の範囲内 自由なんてもんはない
どうせ届かないから言わないだけ バカにしてさ
秘密があれば私は無敵
流した涙でいい子になれるんだ

死んじゃおっかこのまま なんてネガいも
生きたくってついつい言ってみただけ
どうか「いいよ」なんて答えないで まだ私じゃない

苦しくって昨日を呪う強さ 嬉しくって明日をネガう弱さ
「わかる」って言わないで わからないくせに
ねえ、そうじゃない?

「ねえ一緒なんじゃない?」 なんて信じられない
どこが似ているのか違っているのか教えてほしい
見ないふりがやさしさだとしたら
私の居場所はどこにあるの

冗談の進化論 それは便利なんだろう
雨後晴の血 この命巻き戻し
正しさだけで殴り合うならば 勝ち目はないんだよ
特別などないや

死んじゃおって そもそも生きているのか
嫌になって誰かを悪にしても
なにも変わらないから “変わりたい”だけは叶えたい

「それだけ?」って私を笑うくせに あなただって足りてないとこだらけ
“やめて”って言えたらな 溢れちゃう前に
ねえ、そうじゃない?

死んじゃおっかこのまま なんてネガいも
生きたくってついつい言ってみただけ
どうか「いいよ」なんて答えないで まだ私じゃない

生きたいってネガえばネガうほどに
死にたいって思うこと許してね
いつか私になる “愛したい”になる
ねえ、そうじゃない?
これは妄想じゃない

歌詞考察の前に

人気ボカロPであるDECO*27さんの作品『ネガティブ進化論』MVが2019年12月20日にネット上で公開されました。
動画再生回数は公開から一週間で70万を超える人気ナンバーとなっています。

今作は 梨屋アリエさんによって書かれた「きみの存在を意識する」という本を題材にしています。

梨屋アリエさんは特殊な立場や状況を忠実にそして身近に描くことに長けた方です。
読み始めは「こんなこと実際にあるんだ」と驚嘆するのですが、読み進めていくうちに「身近でも起きているんじゃないか」と実感させられるのです。

楽曲考察にかなり影響するので「きみの存在を意識する」の内容を紹介をしておきたいと思います。

中学2年の石崎ひすいの担任は読書活動に熱心。読んだ冊数を班ごとに競わせるが、ひすいは本を読むのが非常に困難。1冊をなかなか読み切れず、肩身が狭くなる。
同じクラスの猪熊心桜は、提出した読書カードの字が下手で、担任に差し替えられる。国語の追試をパソコンで受けさせてほしいと「合理的配慮」を求める心桜を、担任は否定する。
また、読書記録はプライバシーなので開示したくない、とカードを提出しない入来理幹のことも担任は認めない。理幹は、男か女か区別を求められることにも疑問を感じている。
クラス委員賀川小晴の親友の尾木留美名は教室が臭いと言って別室登校を続けている。彼女は特定の臭いに過剰反応してしまう。辛さをぶつけてくる留美名に対応するストレスで、小晴の調子もくるいだす。
両親と死別し、養育里親の養子になった石崎拓真は、ある日、同い年の姉ひすいと同じ家で暮らしていることをからかわれて──

さまざまな、見えにくい困難を抱える子どもたち。

どうしたらいいか、彼らは葛藤し、何かをつかんでいく。

https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8001051.html

上記を見ると登場人物がそれぞれ「障害」を抱えながら苦悩し奮闘していく内容だと理解できます。

障害にはさまざまなものが含まれ「読み書き」「におい」また「人間関係」など多くのものに登場人物たちは悩まされていきます。

これほど多くのケースについて調査し経験談をまとめ、読み手にわかりやすく提出できるのかと筆者も息を飲んだほどです。

僅か335ページで表現される世界のスケール感に圧倒されまた胸打たれるに違いありません。

今作に関してDECO*27さんご自身が次のようにコメントしていました。

梨屋アリエ先生の「きみの存在を意識する」を読んで自分が感じたことを音にしました。

主人公たちの困難を抱えながらも前を向いて進もうとする姿勢、ネガティブなことも受け止める姿勢が特に印象に残りました。

今回歌詞を書く際、本の世界感を広げつつDECO*27の言葉を盛り込む工程が自分としてもすごく新鮮で、楽しみながら制作することができました。

ぜひ皆さん自身の体験にこの曲を重ねて楽しんでください! 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000140.000031579.html

上記コメントには「主人公たちの困難を抱えながらも前を向いて進もうとする姿勢、ネガティブなことも受け止める姿勢」が印象に残ったとあり、歌詞の中でもその点がよく織り込まれていたと感じます。

今回の考察ではマイナス面だけでなく、主人公たちの奮闘しながら前進していくプラスの面も取り上げていきたいと思います。

それではさっそく気になるタイトルと歌詞の考察を始めていきましょう。

タイトル『ネガティブ進化論』

カタカナ部分のネガティブは英語「negative」のことであり「消極的、否定的」という意味合いを含んでいます。

日常生活でも違和感なく多用される英単語の1つではないでしょうか。
それだけ使用する機会が増えて生活に馴染んできたという現状は、あまり喜ばしくないとも思えますが(この考え方もネガティブ 笑)

歌詞全体や題材となっている本の内容を考慮すると、主に2つの意味があると筆者は考察しました。

・ネガティブは初め1つの小さな感情や違和感だったが、時間の経過と共に形態を変えていった(マイナス方向での見立て)

・主人公たちのネガティブな見方は加速するも、積極的な見方を持とうと奮闘する(プラス方向での見立て)

上記のように「マイナスへの進展」と「プラスへの進展」を主軸に歌詞全体を考察していきたいと思います。

「進化論」とは「生物は不変のものではなく長期間かけて次第に変化してきた、という仮説に基づいた説明や理論」の事です。

進化論には色々な要素が含まれており「1つの種から複数の種が派生する」という考えも見られています。

こうした点を意識して作中におけるネガティブが、形を変えたり増え広がる様子が描かれているのだと思いました。

『ネガティブ進化論』歌詞の意味

知識と理解の欠落

「ねえ一緒なんじゃない?」 なんて信じられない
これは面倒くささと好奇心らの病みのバトル
“あなたのことが私は嫌い”
言葉が痛いほど視界をエグる

MVの主人公は「君の存在を意識する」の主人公である石崎ひすいです。
その他の登場人物も登場しています。

前述のあらすじからも彼女が「学習障害」を抱えていることを理解できます。
2分28秒あたりで彼女が本を前にして表情を歪めている点も観察することができます。

今回の考察ではまだ 「君の存在を意識する」 を読破していない方のために、あらすじ以上の内容をできるだけ含めないようにしたいと思います。

あくまでも歌詞中心に読み取れる内容を記述したいと考えています。

歌詞冒頭では「同様の障害を持つ人と持たない人」との摩擦について綴られています。

『「ねえ一緒なんじゃない?」なんて信じられない』とは障害を抱えた主人公たちに共通した叫びです。

学校の先生は平等の扱いを提唱しクラスメイトは輪を乱さないことに努め、特別と思える人たちを「一緒」にしようとします。

現実でも「みんな問題を抱えている」「あなたもたいへんだけどあのこもたいへん」と、特別な問題と向き合わず一緒くたにする人たちが増えていると感じます。

「面倒くささと好奇心らの病みのバトル」とは主人公たちの日常生活における感情のぶつかり合いを指していると読み取れます(闇のバトルも暗示)

障害を抱えながらみんなと同じことをしようとするのは「とても面倒」に思えます。
しかし「上達したいという好奇心」も持ち合わせておりそれらがぶつかり合うことになります。

別の解釈の仕方としては、障害を持つ人と持たない人の見方や考え方を示唆しているということです。

障害を持っている人は作品にもありましたが浮いている、または変わった行動に出ることがあります。
周囲の人たちの中にはそうした事柄を特別視して好奇心を膨らませることがあります。

筆者も学生時代に障害を持つ生徒を何人かの生徒が取り囲み、質問責めにしているのを目撃していました。

仲には悪気のない生徒もいるのですが質問されている側とすれば「たいへん面倒くさい事態」なのだと語っていました。

“あなたのことが私は嫌い”という胸痛む台詞にも幾つかの解釈があると思います。

1つには「周囲の人たちが障害を持つ人を嫌っている」という解釈です。

もう1つは「障害を持つ人ができない自分に向けて述べている」という解釈です。

特に子供は正直であり「好き嫌いを遠慮なく」伝えて相手を傷つけることがあります。
また人は何回やってもできない分野があると「自分を嫌いになる」ことがあります。

いずれにせよ、相手からであれ自分自身からであれ辛辣な言葉は心を深く傷つけ視界が揺らぐほどに精神にダメージを与えていきます。

地に落ちる言葉

想定の範囲内 自由なんてもんはない
どうせ届かないから言わないだけ バカにしてさ
秘密があれば私は無敵
流した涙でいい子になれるんだ

ここでは主人公たちが「誰も自分の語ることなど気に留めない」と綴っています。

作品の中でも学校の先生や生徒に自分の中の正義や正当性を訴えたり請願したりしています。
しかし聞いているように思えますが、たいていの場合なんなくあしらわれてしまいます。

そうした経験を重ねていく内にそれらは「想定の範囲内で言論の自由も行動の自由もない」ことを自覚させられてしまいます。

そしてだんだんと発言する気力も失せて行き押し黙ってしまいます。
周囲は自分の意見を言えない弱いものとして消極的に捉えだします。

このようにネガティブがネガティブを生み、次第にたくさんの人に広がり大きくなっていきました。

「流した涙」の分だけ「いい子になれる」という部分は、ネガティブに対する必死の抵抗であり、心折れないための決意だと推察できます。

言行不一致

死んじゃおっかこのまま なんてネガいも
生きたくってついつい言ってみただけ
どうか「いいよ」なんて答えないで まだ私じゃない

ここでは主人公の心情の奥底が綴られています。
(願いとネガティブがかかっていますね)

「死んじゃおっかこのまま なんてネガいも 生きたくってついつい言ってみただけ」とはとても考えさせられるフレーズです。

普通「死ぬ」と口にされれば聞いた人は心配になり本気にすることでしょう。
しかし当人のことばの趣旨は「生きるために吐き出した」ということです。

ですから周囲が真に受けて「いいよ」と楽になることを促したり、自身が自殺を「いいよ」と容認することも願っていないという歌詞だと解釈しました。

以上の点から「まだ私じゃない」と述べたのは「これは本来の自分ではない」という意味だと考えられます。

3文字の凶器

苦しくって昨日を呪う強さ 嬉しくって明日をネガう弱さ
「わかる」って言わないで わからないくせに
ねえ、そうじゃない?

ネガティブ思考を抱える主人公たちは複雑な感情を抱き続けています。
「昨日を呪う」ことに気力を使ってしまい、この先何も望めないと思っていても明日に期待してしまう自分の弱さに傷つています。

出来ないことで傷つき、少し出来るようになったことで喜び、これを繰り返していきます。

そして続く部分のフレーズは今作中でもっとも強烈で共感される部分だと筆者は感じました。

「わかる」って言わないで わからないくせに

筆者も「わかる」を口にして失敗したことも、相手から言われて苛立ったこともあります。

例え似たような経験をしていたり状況に置かれていたとしても「わかる」の3文字は相手を深く傷つける場合があるため注意が必要です。

「辛さをわかってあげられなくてごめんね」と伝えるほうが良い場合もあるでしょう。

この点でMVの 石崎ひすいが親指を下に向ける仕草が思い浮かびます。
「わからないくせにわかったふうな顔すんなよ」と吐き捨てているかのようでした。

憎しみは愛へと

生きたいってネガえばネガうほどに
死にたいって思うこと許してね
いつか私になる “愛したい”になる
ねえ、そうじゃない?
これは妄想じゃない

ここでも相反する気持ちについて綴られています。
そうした気持ちを許してね、つまり「受け入れてね」と述べているのだと考えられます。

主人公たちは「いつか私になる」つまりネガティブや障害を乗り越えて強く逞しい自分になることを願っています。

当初、障害があることに気づいて自分を憎んだことでしょう。
周囲から疎まれ馬鹿にされてよりいっそう自分を傷つけたに違いありません。

しかしだんだんと自分や障害、周囲の人たちと向き合い強くなっていく自分を受け入れていけると信じています。

そして最終的には自分を「愛する」ことができる確信しています。
最後に述べられた「これは妄想じゃない」というはっきりとした意見は、これまでのネガティブすべてがかき消されるほどポジティブなものです。

歌詞の中で主人公たちのネガティブがポジティブへと進化していったのを読み取れます。

途中、ネガティブが増え広がる様も綴られていましたが最終的に希望となる今作に感動しました。

障害や困難な状況と懸命に闘うすべての人たちにとって、今作が希望の光となり明日を照らすものになることを願って止みません。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
内容が重くたいへん考えさせられるものだったため、通常よりボリューミーになってしまいました。

本記事では「主人公たち」とまとめて内容も簡略化しました。
本来であれば登場人物1人1つの記事を作成したいほど、奥の深い歌詞です。

考察の途中で何度も、自分の他の人への接し方について考えさせられました。
1つのフレーズを追うたびに手が止まり、ときに思考も止まり胸が苦しくなりました。

それでも最後の部分で主人公たちの決意や温かな願いを感じることができ救われました。

MVの 石崎ひすいによるダンスも「親指を下に向けたり首を絞めたり」もしますが「拳を力強く握って天へと突き出す」しぐさも見せていました。
こうした部分からもネガティブからポジティブへと進化していく点が描写されているのかもしれませんね。

同時にDECO*27さんは「命」とか「生きる」ことに関していつも熟考しているんだなと実感できる歌詞でした。

今後の活動と次回作に期待し注目していきたいと思います。
素敵な作品をありがとうございました。

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