
ASKAさんの『星は何でも知っている』イントロのピアノ旋律が美しく、優しい歌唱がいつまでも耳に響く魅力的な楽曲です。
この少し不思議なタイトルの楽曲、その中にはとても深遠な世界観が描かれています。
ASKAの魅力がつまった楽曲『星は何でも知っている』の歌詞の意味をゆりはるなが解釈をしてみようと思います。
あくまで私の自己解釈ではありますが、歌詞の持つ奥深さに皆様がもっともっと親しんで頂ければ幸いです。
目次
タイトル『星は何でも知っている』の意味
この楽曲は2018年8月25日にWEB配信にて発売されました。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが
8月25日と言えば……そう、CHAGE&ASKAのデビューした日です。
1979年のデビューから、CHAGE&ASKAには様々なことがありました。
ありとあらゆる噂が飛び交い、メディアに色々と書かれていた時期もありました。
『星は何でも知っている』とは、人の噂や記事よりも、本当のことが分かっているのは空から見下ろしている星だけだ、ということです。
そして、CHAGE&ASKAだけでなく、すべての人にそのことは当てはまるのです。
『星は何でも知っている』のテーマ
この楽曲はとても優しくシンプルな反面、かなり人の痛みや苦しみといった本質をとらえた
ある意味、逆説的な人間賛歌です。
どこへも踏み出せない苦悩、いろいろな色眼鏡で見られてしまう悔しさ、それぞれに傷付きながらも、だからこそ生まれてきた価値がある、と語られます。
歌詞は最初から、とても独特な表現になっています。
まさにASKAの天才的な作詞能力の本領発揮といったところでしょうか。
それだけに、歌詞には書かれていない行間を読む楽しさも、この楽曲のテーマにふさわしいものとなっています。
『星は何でも知っている』登場人物の解説
この楽曲に登場するのは、歌詞の中にある「僕」と「君」「微笑む人」や「睨む人」
そして、見知らぬ人・すれ違っただけの人・どこかのお店の店員さん・動物たち。
嫌いな人・好きな人・草花。建物。
この地球で生きている、ありとあらゆるものが、見えない行間に登場しているのです。
そして、ASKAとCHAGEも勿論、含まれているのではないでしょうか。
歌詞の考察
まっさらなゼロになるために
とは言うものの それだけなんだろう
大切に思うなら 目をそらさずにいよう
始まらないのは 終わろうとしないからさ
懐かしいことにして 新しい服を着よう 歩こう
人が苦しみや痛みから抜け出せないのは、それを終わらせる勇気がないからです。
なぜならば、人は「不幸」よりも「不安」を選び、「不安」に依存してしまうことがあるから。
苦しみや痛みを我慢することを、努力や勤勉と言い換え自分をごまかしては、本当に大切だったはずのものを見ないようにしてしまいます。
人は、現状を変えるのがとても怖いのです。
現状を変えたら、もっと不幸で不安になるかもしれませんものね。
けれどもし、終わらせることができたならば、自分を痛めつけていた苦しみが懐かしいこと、それだけのこと、と言えるようになる可能性があります。
おろしたての服に袖を通し、ゼロからまた歩いていこうと思えるようになるのです。
行けない道、生きたい道を決めるのは何
行ってはいけないこの道を
もう行かずにいられない
行ってはいけない道なんて、どこにあるのでしょうか?
そして、それは誰が誰に対して決めることができるのでしょうか?
そんなものはどこにもなく、誰にも決めることができないはずです。
あると思い込み、決めつけているのは、実は自分自身に他なりません。
ASKAは2017年に自主レーベル「DADAレーベル」を立ち上げ、それ以降、精力的にたくさんの楽曲を発表しています。
しかし、2018年に腹膜炎で入院し緊急手術をするなど、身体的に無理をしていた部分があったのかもしれません。
ASKA自身は勿論、多くの人が行きたい(生きたい)道への邪魔となる問題を抱えています。
このフレーズは、そんな問題への挑戦状、宣戦布告、また、供に生きていくという固い決意と読み取れます。
本当のことは誰も何も知らない
何があっても 僕は僕のままさ
君はとても良い人で きっと僕は悪い人 酷い人
星は何でも知っている
僕が履いてたぼろ靴も
楽曲のタイトルであるフレーズ「星は何でも知っている」とは、裏を返せば、「人は何にも分かっていない」ということです。
この楽曲の発売日である2018年8月25日、ASKAは公式ブログにて、CHAGE&ASKAデビュー39周年をテーマに記事を掲載しています。
そこでは、CHAGEとASKAの関係について語られています。
あらゆる噂はあれど、CHAGEのことは誰より自分がよく知っており、ASKA自身は今も昔も、自分は何も変わっていないと言及しています。
誰かが誰かを悪く言ったり、良く言ったりしていても、言われた人が履いているくたびれた靴にさえ、噂好きな人々は気が付かないのです。
この歌詞では、様々な言葉が人の口に上ろうと、本当のことを知っているのは遠い空から地球を見下ろす星だけである、ということが表現されています。
決めつけては疑う、人の業
右から僕を微笑む人 左から僕を睨む人
みんな一緒に迷い子に なってるみたい
右から左から、ありとあらゆる方向から、他人が他人の顔を見ています。
本当に分かり合っているはずもなく、疑心暗鬼になり、「この人はこうだ」「この出来事はこうだ」と思うことで、自分を守ろうとします。
しかし同時に、そんな自分の勝手さに疑問を持っているのです。
人の持つ優柔不断さが、本当に大事なことや大事な人を見分けることを困難にしてしまいます。
生きることは甘い言葉で語れない
ひとつの涙も ひとつの傷も
知らずに生きるならば
この世に生まれた意味はないじゃないか
幸せになることは、人生の目的なのか?
大体、幸せとは何なのか?
歌詞の最後の部分では、漠然とした甘い言葉である幸せには価値は置かれず、涙と傷からしか教えてもらえないことが語られます。
ASKAの書く歌詞には、涙や傷といった、一見マイナスなイメージの言葉がよく出てきますが、決して屈するために用いられてはいません。
自分が本当に大切にしたいものを教えてくれるのは、涙や傷や苦しみや悔しさだけなのでしょう。
自分自身の大切なものを踏みにじられてしまった時に、人はそれらがどれだけ価値があるかを知るのです。
その価値は、他人からは見えず、理解されないかもしれません。
しかし、夜空の星が、傷ついた人々が少しずつ立ち上がり始めるのを見つめています。
この、大変哀しく美しい歌詞には、生きることへの賛歌が短い言葉で簡潔に歌われています。
まとめ
ASKA『星は何でも知っている』はトータル3分17秒という比較的短い楽曲ですが、歌詞の行間から様々なことを読み取ることができます。
過去・現在・未来にわたる、自分が自分であるための決意表明とも読み取れます。
立ち止まってしまった時、もう駄目だと思った時、ぜひ聞いてみてください。
「がんばれ」などという安易なことは一言も述べず、疲れた背中を撫で、己の力で立ち上がる勇気を思い出させてくれる楽曲です。
最後までお読みいただいてありがとうございました。