Aimer『花の唄』歌詞考察・貴方のためなら私は散っても構わない

その日々は夢のように
臆病な微笑みと やさしい爪を
残して行った

退屈な花びらのように
くるしみを忘れて
貴方の背中でそっと
泣いて笑った

帰らぬ日々を思うような
奇妙な愛しさに満ちた
箱庭の中で 息をひそめ

季節が行くことを忘れ
静かな水底のような
時間にいた

冷たい花びら 夜に散り咲く
まるで白い雪のようだね 切なく
貴方の上に降った かなしみを全て
払いのけてあげたいだけ

貴方のこと傷つけるもの全て
私はきっと許すことは出来ない
優しい日々 涙が出るほど帰りたい
貴方と二人で 見上げた花びらが散った

月が雲に隠れて
貴方は道を失くして 泣き出しそうな
目をしてた

ぎざぎざなこころだって
ふたつ合わせてみれば
優しいものがきっと
生まれてくるわ

私を傷つけるものを
貴方は許さないでくれた
それだけでいいの

戯れに伸ばされた 貴方の手にしがみ付いた
諦めていた世界に
やがて温かな灯がともる

冷たい花びら 夜を切り裂く
私が摘んだ光をみんな束ねて
貴方の上に全部 よろこびのように
撒き散らしてあげたいだけ

わるいことをしたらきっと貴方が
起ってくれると約束したよね
だからきっともう一度
私を見つけてくれるよね
寂しいところに もういなくていいね
一人で見上げた 花びらが散った


はじめに

Aimerさんの『花の唄』は2017年10月発売のトリプルA面シングル『ONE/花の唄/六等星の夜 Magic Blue ver.』に収録されたナンバー。そして、大ヒットゲーム『Fate/stay night』の劇場版三部作における第一作目の主題歌としてご存知の方も多いのでは?

PVでは『先生! 、、、好きになってもいいですか?』三木孝浩氏が監督をつとめ、『君の膵臓をたべたい』主演の浜辺美波さんが出演。

幻想的な映像に、歌詞・アレンジ、そしてAimerさんの唯一無二の歌声が重なり、『Fate/stay night』のゲームおよびアニメーションの世界観と融合する見事な仕上がりとなっています。

そんな美しくも少し幻想的なAimerさんの『花の唄』の歌詞世界を、ゆりはるなが考察していこうと思います。

タイトル『花の唄』の意味とは

『花の唄』の中で「私」は「花」という言葉に、遠い想い出・現在・未来、そして自分自身を重ねています。

どれだけ美しく咲き誇ろうと必ず散る花は、希望や喜びだけでなく、

時に人生の儚さや死を象徴します。

遠い昔、幸せだった頃に見た花。どれだけ華美に見えようと退屈でつまらなく感じる花。美しすぎて冷たさすら漂う花。そして最期には散る花。

『花の唄』は、「私」を花になぞらえ、咲いて散るまでの美しくも短く儚い姿を、歌いあげます。


『花の唄』の世界にたった二人の「私」と「貴方」

『花の唄』には「私」と「貴方」の姿しか描かれません。

そして「私」と「貴方」がどういう関係なのかを具体的に描いた歌詞は一切ありません。

ただ『花の唄』の歌詞世界の中では、「私」にとって「貴方」は他の誰とも比べられないくらいの大切な存在であることがうかがえます。
それも、命を懸けても守りたいほど大切な存在なのです。

Aimer『花の唄』歌詞考察

不確かで幸せだった世界

その日々は夢のように
臆病な微笑みと やさしい爪を
残して行った

退屈な花びらのように
くるしみを忘れて
貴方の背中でそっと
泣いて笑った

「その日々は夢のよう」――確かに幸せなはずの世界に、どこかいつも歪な傷がつき、幸せに浸りきれない姿が描かれます。

本当は、その幸せを何も疑わずいたいのに、なぜか恐ろしくて本気で微笑むことが出来ない。

泣き笑いという行為に、わずかな狂気すら感じさせる不穏な物語の始まりが感じさせられます。


遮断された場所にて

帰らぬ日々を思うような
奇妙な愛しさに満ちた
箱庭の中で 息をひそめ

何か理由があって誰かから見つかるのを恐れているのか、それとも絶望のため自分から箱庭へと閉じこもったのか。

どちらにしろ、想い出だけに身を浸し、外部への接触を断っている姿です。

何が起こっているのかさえ分からない私

季節が行くことを忘れ
静かな水底のような
時間にいた

抽象的な描写が続き、状況の説明はありません。

ただ箱庭の中でとうとう、時間の流れさえどうでも良くなってしまっていることが分かるだけです。

水の底のような場所からは誰の声もどんな音も聞こえないかもしれません。
自分からそう望んだのでしょうか。
何も知らずそこから抜け出したいという考えに及ばなかったのか。
もしかしたら誰かに強いられたことなのか。

では一体誰が『花の唄』の主人公にそれを強いたのか。謎が深まっていきます。


貴方だけ、貴方だけ守りたい、それだけ

冷たい花びら 夜に散り咲く
まるで白い雪のようだね 切なく
貴方の上に降った かなしみを全て
払いのけてあげたいだけ

PVの中では箱庭のような場所にいる少女が花に囲まれています。

美しいはずの花が「冷たい」と表現され、哀しみの象徴になってしまった。

「私」は「貴方」を救い、苦しみから守りたいと願います。
水底のような箱庭で息を潜めていた「私」にとって「貴方」の存在だけが大切なのです。

戻らない日々、貴方が戻ることを夢見る日々

貴方のこと傷つけるもの全て
私はきっと許すことは出来ない
優しい日々 涙が出るほど帰りたい
貴方と二人で 見上げた花びらが散った

「貴方」を傷つけ悲しませる者へ全てへの強烈な憎悪が「私」に満ちています。

常軌を逸しているとすら感じる「私」の「貴方を守りたい」という想いは、果たして叶うのでしょうか。
そして過去に「私」と「貴方」には穏やかで温かな日々があったことが示唆されます。

その日々は、散ってしまった花びらのように、今はもうどこにも見つかりません。


いつの記憶が今見えている

月が雲に隠れて
貴方は道を失くして 泣き出しそうな
目をしてた

ここで描かれる「貴方」の姿は、想い出なのか、現在なのか。
哀しみにくれている「貴方」を見ることが、「私」にとっては最も辛いことだと言っているかのようです。

「私」が信じているもの

ぎざぎざなこころだって
ふたつ合わせてみれば
優しいものがきっと
生まれてくるわ

「私」と「貴方」を取り巻く世界が、二人の心にとって平穏な場所ではなさそうです。

生きているだけで、心が削り取られ、優しさや情けを持っている余裕などないのかもしれません。しかし、「私」は、今はもう過去になった優しい日々――優しい人の心を「貴方」の中に見出そうとします。

二人が心を重ね合わせることで、きっと昔のような安らぎや優しさは生まれるのだと信じています。

あなたがわたしのはな

私を傷つけるものを
貴方は許さないでくれた
それだけでいいの

「私」と「貴方」の二人にしか分かち合えない花――それはお互いの存在なのではないでしょうか。
互いに互いを、傷つけ枝を折り花びらを散らそうとする者を、許さないという絆に結び付けられている姿。

……もしくは「私」だけが「貴方」にそんな激情を抱いているのかもしれませんが。

儚く頼りない花のような灯にしがみつく

戯れに伸ばされた 貴方の手にしがみ付いた
諦めていた世界に
やがて温かな灯がともる

幻想のような表現。「私」が待ち望む世界は本当にやってくるのでしょうか。

「私」の「貴方」への想いは、「貴方」の「私」への想いと釣り合のでしょうか。

「戯れ」「しがみつく」という言葉には、「私の世界」の灯が、儚く、とても心もとない火である暗示がありそうです。

私はどうなってもいいから貴方を

冷たい花びら 夜を切り裂く
私が摘んだ光をみんな束ねて
貴方の上に全部 よろこびのように
撒き散らしてあげたいだけ

美しく抽象的な言葉の中に感じられるのは、『花の唄』の歌詞世界、PV、そして『Fate/stay night』という作品に共通した、重く残酷で自己犠牲を伴うような痛み。

自分が摘んだ光をすべて誰かのためにまき散らす――ここで「私」の摘んだ光とは一体なんなのでしょう。

その光を「貴方」にすべて捧げてしまって「私」は大丈夫なのでしょうか。
「それだけでいい」「~してあげたいだけ」――「私」の心はまっすぐに「貴方」へと向かいます。

どんな結果を迎えようとも構わずに。

この唄――花がどんな形で散ろうとも

わるいことをしたらきっと貴方が
起ってくれると約束したよね
だからきっともう一度
私を見つけてくれるよね
寂しいところに もういなくていいね
一人で見上げた 花びらが散った

『花の唄』の最後でも、「私」はひとりきり。

そして、注目に値すべきことに、「私」はしてはいけない「わるいこと」をしてしまっているというのです。
わるいことをすれば「貴方」が起こってくれる、叱ってくれる。

だから「私」は「わるいこと」をして「貴方」が叱りに来るのを待っている。「わるいこと」をしたのだから「貴方」にまたきっと逢えると信じています。

もしかしたら、それが身を滅ぼすような取り返しのつかないほど「わるいこと」だったとしても。

「私」には自分という花が散ることよりも「貴方」ともう一度逢うことの方がずっと大切だからです。


まとめ

Aimerさんの『花の唄』、今回はあえてPVや『Fate/stay night』の内容にはあまり触れず、歌詞から伝わってくるメッセージだけで考察記事を書かせていただきました!

とても抽象的な言葉が並び、聴く人によって色々なイメージやストーリーが出来上がりそうな『花の唄』。
もちろん、劇場版『Fate/stay night』、浜辺美波さんが出演PVもぜひご覧になって頂きたい!

この記事でAimerさんの『花の唄』の世界が皆さんの中で広がっていくお手伝いが出来たなら嬉しく思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 



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