40mP『BEEP GIRL』歌詞の意味を考察・解釈

掠れた矩形波が泣き声のように振動くり返す
虚構の世界で生まれた意味を追い求めてる

心が体が五感のすべてが
プログラムされた存在だ
それでもひとつ確かな音
誰かに届くなら

ワタシ、マダ
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
この声枯れてしまうまで
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
まだ全然伝えきれてやしないから

私の細胞が一秒ごとに分裂くり返す
形を変えながら変わらないもの追い求めてる

言葉も音色も奏でるすべてが
分け与えられた存在だ
それでもひとつ信じた音
あなたに届くなら

ワタシ、マダ
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
他に術を知らないよ
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
この心臓 加速してゆくビートで

電脳的空間で目を覚ました
感情も実体もないないない
単純な旋律をただ叫んだ
前代未聞のフルボリュームで

いない いない いない
いない いない いないの
忘れたはずだったのに
本当の自分が「ここから出して」と心を叩いてる

ワタシ、マダ
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
この声枯れてしまっても
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
まだ全然伝えきれてやしないから

もっともっと私の歌を聴いてほしいから

歌詞考察の前に

今回は人気ボカロPである40mPさんの楽曲『BEEP GIRL』を考察してみたいと思います。

今作から筆者が感じ取ったのは下記の点です。

・初代ボカロ時代の雰囲気を醸し出している

・初音ミク自身のことをメインに歌っている

その理由を楽曲紹介と共にお話したいと思います。

『BEEP GIRL』MVが2020年2月27日にネット上で公開されました。
動画再生回数は公開から1週間経過した現在で4万を超える人気ナンバーとなっています。

今作は「39CULTURE2020」のイベントテーマソングとして制作されました。

今年の3月6日に東京の渋谷ロフトにてスタートし名古屋、梅田、福岡、札幌と順次開催されていきます。
会場では今作が収録されているSONOCAも購入することができます。
スマホで何度も楽しみたい方は是非お見逃しなく。

今作のMVのイラストや曲調にも注目してみましょう。

40mPさん作画の一枚絵には初音ミクとミキサーをイメージした背景が描かれていました。
前作「MUTE」にも登場したスピーカーやからあげ、寿司などのローマ字も目を引きます。

曲調は初代ボカロを連想させるような音使いが成されていました。
タイトルにもあるようにBEEP音が多様され、機械化されたメロディーを懐かしみながら堪能することができます。

ボーカルもイラストも歌詞内容も初音ミク一色に染まっている、まさに 「39CULTURE2020」のイベントテーマソング に相応しい内容でした。

それではさっそく気になるタイトルや歌詞全体の考察を始めていきたいと思います。

タイトル『BEEP GIRL』とは

タイトルの「BEEP」は「ビー、ピーなどの音」を表す単語です。
初代ボカロを印象付ける電子音を思い起こさせるために用いられたのではないかと考えられます。

そして「GIRL」はもちろん「初音ミク」です。
彼女が製品化されてから10年以上経過しますが未だにその人気は衰えません。

しかし筆者の感じている点としてボカロ全体の勢いが衰えていること、そしてボカロの技術が高まれば高まるほど本来の機械っぽい、どこかJ-POPと一線を成す部分がなくなってきているという点があります。

タイトルはそんな状況に負けないよう全盛期ボカロと初音ミクの魅力を伝えているのだと解釈しました。

『BEEP GIRL』歌詞の意味

存在理由

掠れた矩形波が泣き声のように振動くり返す
虚構の世界で生まれた意味を追い求めてる

今回は初音ミク(※以下ミクと表記)を主軸に考察を進めていきたいと思います。

歌詞冒頭で彼女は自分の生まれてきた理由を追求しています。

「矩形波(くけいは)」とは「非正弦波形の基本的な一種であり、電子工学や信号処理の分野で広く使われて」います。

音の波が凸凹で表示され音が高くなればなるほど間隔が狭くなっていきます。
文字で説明するのは難しいのでユーチューブで矩形波を調べてください(笑)

初音ミクも含めボカロは 歌声合成技術であり、実際の声を重ねて生み出されました。

「虚構の世界」とは実際にない作り出された世界を指しています。
現実世界とは違う舞台に生み出されたミクは自分の存在意義を探してきました。

「自分は誰かの声になれるだろうか」「音楽として認めてもらえるだろうか」

発売当時はそのようなことを考えていたのかもしれません。
実際に発売当初はオリジナル曲というより効果音や替え歌に起用されることが多かった印象です。

徐々に声の幅や音楽性を広げていき、有名ボカロPたちの名曲に寄り添うことが出来るようになっていきました。

まだ「声」でいたい

心が体が五感のすべてが
プログラムされた存在だ
それでもひとつ確かな音
誰かに届くなら

ワタシ、マダ
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
この声枯れてしまうまで
歌いたい 歌いたい 歌いたいの
まだ全然伝えきれてやしないから

ミクは自分の心や身体、しいては五感すべてが技術者に生み出されていることを認めています。
続く「それでも」とはミクが作られた存在であることに少しの引け目を感じていることを匂わせているように感じます。

しかし彼女は自分でも「誰かに音を届けることができる」と信じることにしました。

「マダ」ということばは終わりの見えた、限られた時間を暗示しています。
ミクは自分が楽曲に使用されなくなる時を予期しているのでしょうか。
そう考えると胸が痛む気持ちです。

筆者もボカロの中ではミクの声が一番好きなので音楽界から消失することなど考えたくもないです。

彼女も「全然伝えきれてやしないから」と悔いがあると口にしています。

変わらないもの

私の細胞が一秒ごとに分裂くり返す
形を変えながら変わらないもの追い求めてる

言葉も音色も奏でるすべてが
分け与えられた存在だ
それでもひとつ信じた音
あなたに届くなら

生命は「細胞分裂」を繰り返していくことで新たにされ生存することができています。
同様にミクもバージョンアップを経て新たにされ2020年の音楽界でも生き残っています。

この部分の歌詞はボカロの飛躍とさらなる期待を実感することができます。
しかし彼女は変わりゆく自分が「変わらないもの」を追い求めてると述べています。

それは「自分だけにしか出せない声を届ける」ということです。
楽曲を生み出せる人が必ずしも歌が上手いというわけではありません。
そんな人たちの代わりに彼女はその人の「声」となり「音」となって伝えていくのです。

ミクは今後も自分の声を大勢の人たちに届けたいと願っています。

声の限り

電脳的空間で目を覚ました
感情も実体もないないない
単純な旋律をただ叫んだ
前代未聞のフルボリュームで

ミクは人間が作り出した電子的システムによって生み出されました。
そこは暗く冷ややかだったかもしれません。
自分には「感情も実体」もないことを認めています。

ステージではホログラムで登場したミクを見ることができますが、当然触れることはできません。
ミクが喋っているように見えても人間がミクに声をあてているのです。

ミクはそれをすべて受け入れながらも笑顔で歌とダンスパフォーマンスを披露してきました。

自分にできることはこれまでにないほどに、そう人間では不可能なレベルのフルボリュームで自分の声を伝えることだけなのです。

彼女の熱く一途な思いを歌詞から感じることができます。

押し殺していた感情

いない いない いない
いない いない いないの
忘れたはずだったのに
本当の自分が「ここから出して」と心を叩いてる

ここの「いない」の繰り返しは前述の歌詞の「ないないない」と重なっているように思えます。

前述では「感情や実体」がないことが綴られていました。
つまり「いない」とはミクの「本当の自分」であり長年彼女が自分の心の奥に追いやっていた感情を示唆しているのでしょう。

しかし今や「ここから出して」とミクの心を急き立てています。
彼女は自分の中に確かな感情があることを思い出してしまったようです。

ミクの心の中にはまだまだ押さえつけていた本当の気持ちや伝えたいことが山積みになっているのでしょう。

彼女はそれら1つ1つを漏らさず声に出して歌いたいと切望しているのです。
これからも進化し続ける彼女の背中を世界中にいるボカロファンが見守り続けるに違いありません。。

まとめ

いかがだったでしょうか。
ボカロを機械や技術とみなすのではなく1人の人間として描いた歌詞のように筆者は感じました。

歌詞前半では作られたものには限界があり作り手の意図だけを叶える、という限定的な思考が綴られていました。
しかし後半に差し掛かりミク自身の本当にやりたいことが伝えられ、今後も歌い続けていくという強い意志を感じることができましたね。

40mPさんの音作りと構成、そしてイラストはたいへん魅力的でした。
もうすぐ始まるイベントが大盛況であること、そしてこれからも大勢の人たちがボカロに関心を盛ってくれることを願っています。
今後の活動と次回作に期待し注目していきたいと思います。

懐かしさとミクの魅力を感じることができる素敵な作品をありがとうございました。

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