[みきとP/鏡音リン『ロキ』歌詞の意味・解釈・考察』]

中毒性たっぷりロックン・ロール


イナズマのような衝撃を与えるこの曲、ご堪能あれ。

2007年より爆発的に人気を獲得したボーカロイドは年月の経過とともに廃れたかのように思われた。

「ボカロ界隈も終わったな・・・」と思っていた最中、しばらくぬるま湯に浸かっていたボカロ好事家たちの脳天を突如として撃ち抜いたのがこのヒットチューン・ロキである。

鏡音リンの声質的にロック調な曲はぴったり型にハマるが、ロキは痺れるほどキマっている。

人間(みきとP)と鏡音リンのコラボレーションが織りなすロックン・ロールの歌詞を紐解いていこう。


冴えない少年少女が輝ける場所

現代人による現代人のための音楽

さあ 眠眠打破
みんみんだは
 
昼夜逆転
ちゅうやぎゃくてん
VOX AC
ボックスエイシー
30W
ワット

テレキャスター背負ったサブカルボーイが 
バンド仲間にやっほー 
アルバイトはネクラモード 
対バンにはAT
エーティー
フィールド 
“人見知り”宣言で逃げる気か BOY

ゆーて お坊ちゃん お嬢ちゃん お金も才能も 
なまじっかあるだけ厄介でやんす

情景として思い浮かぶのが、現代を象徴するかのような閉塞的な世の中と、そこに生きる少年少女たち。

SNSは必須、お日様が出ているときは元気が省エネでやる気が出ない。

だけども好きなこと(ロキの歌詞の中でいうならバンド活動)を前にすると水を得た魚のように、活発的に動き出す。

夢を追いかけるサブカルボーイ(なんとなく黒髪マッシュで口元を携帯で覆いながら自撮りしてそう)が輝ける場所、それはバンド活動の場所。

いわゆる、ライブハウスなのだ。

バンドマンとして感情をさらけ出す少年を、まぶしそうに眺めながら追いかける少女=ファンの関係がロキの歌詞からうかがえる。

いわば、ウィンウィンの世界の描写が描かれていると思う。

何者にだって成れるんだぜ、と言っている


ロキは現代を生き耐え抜く人々の「教祖」

ボーイズ ビー アンビシャス…
《はいはい》 
like this old man
ライク ディス オールド メン

長い前髪 君 誰の信者 
信者 信者 
勘違いすんな 教祖はオマエだ!!

ボーイズビーアンビシャスといえば有名なクラーク博士の言葉。

「少年よ、大志を抱け」というフレーズはかなり有名で耳慣れていると思う。

この歌詞から推測するにバンドマンとして活動している少年は、自分の教祖(=憧れの人・バンド)が存在している。

しかしみきとPは

勘違いすんな 教祖はオマエだ!!

というフレーズを掲げていることからわかるように、「憧れの人のようにお前だってなれるんだぜ!」と背中を押しているような感じがする。

その後に続く一回目のサビに、落雷のような衝撃を覚える。

ロキロキのロックンロックンロール 
かき鳴らすエレクトリックギターは 
Don’t Stop! Don’t Stop!

さあ君の全てを 曝け出してみせろよ 
ロキロキのロックンロックンロール


鬱屈とした毎日に不満を覚えながら、なんとなく生かされているような気がしている少年。

少年が「自分の足で生きているんだ」と実感できる瞬間、それは音楽をやっているとき。

エレクトリックギターをギュインギュインかき鳴らして、髪を振り乱しながら演奏する、バンドマンとしての生き生きした少年の情景が思い浮かんで来る。

現実世界にも『ロキノン』という音楽雑誌が実際にある。

雑誌に登場するアーティストはロキノン系なんて称されて、ライブキッズたちに好まれたりする。

ロキもロキノンを愛してやまない少年が奏でるロックン・ロールな曲なのだと解釈した。


大人になってちょっと現実見据えちゃった感じ

ひたすら夢を追っていたはずなのに・・・

さあ 日進月歩
 

いい曲書いてる? 動員ふえてる? 
「知名度あるけど人気はそんなにないから色々大変ですね。」 
はっきり言うなよ 匿名アイコン 
はっきり見せない 実写のアイコン 
いい歳こいて自意識 まだ BOY

ぶっちゃけどんだけ賢くあざとくやったって 
10年後にメイクは落ちてんだよ

冒頭から年月は経過して、少年は青年に成長を遂げている。

いい曲書いてる? 動員ふえてる? 

ある程度バンドとしての活動が続いて、知名度は上がりつつあるもライブでのお客さんの動員はイマイチ。

SNSで「名前は聞くけど人気ないよね」と暗に誹謗中傷されているリアルな感じを、歌詞からくみとることができる。

少年時代から自意識は成長していないものの、少年のような純真さだけでは音楽の世界で食っていけないことを、青年は悟っているのだ。

ぶっちゃけどんだけ賢くあざとくやったって 
10年後にメイクは落ちてんだよ

このフレーズを見たときふと思い浮かんだのがV系バンドマンのこと。

私にも実際に彼らを追いかけていた頃があった。

デビューしたての彼らはコテコテメイクにパンクファッションで、反社会的に思えた。

しかし年齢には抗(あらが)えず、V系やってた彼らも確かに10年経過した頃に化粧を落とした。

いわゆる世間一般に「ウケよう」としたわけだ。

リアルな音楽業界の事情を浮き彫りにする歌詞に、「やられた」と思った。

Boys be ambitious…
《はいはい》 
like this old man
《え?》

生き抜くためだ キメろ Take a “Selfy”

“Selfy” ”Selfy”

死ぬんじゃねぇぞ お互いにな!!

音楽に対する意識がより現実的でシビアになったからこその、この歌詞。

Boys be ambitious…
《はいはい》 

最初はでっかい希望があればうまくいくって、納得していたはずだった。

けれど心の中では「そんなわけないだろう」とやたら大人になってしまった自分がいて、

like this old man
《え?》

あの頃と同じ言葉を繰り返していても、自分の中でちょっと違和感を覚えるわけだ。

胸の突っかかりのようなものはあるものの、ここで立ち止まるわけにはいかない。

アイドルさながらに「Selfy(=自撮り)」して、ファンの注目を集めろ!

無心に自撮り・自撮り・自撮り。

死ぬんじゃねぇぞ、は青年の心の雄叫びに聞こえる。

かつて純真無垢だった少年に向けて。

ちょっと大人になった自分に言い聞かせる。

間違っていない、だから夢を捨ててはいけない。

青年にとっての「死」すなわち夢を投げ出すこと。

より高みを目指す今と、夢を抱いていた過去。

前向きに音楽を続けていこう、という決意表明の意味での

死ぬんじゃねぇぞ お互いにな!!

というフレーズな訳だ。アツい。現代風でいうなら「エモい」歌詞である。

この際生き残っていけるならなんだってアリ


手段を選ばないハイエナのようなフレーズ

ロキロキのロックンロックンロール 
薄っぺらいラブソングでもいい 
Don’t Stop! Don’t Stop!
 

さあ目の前のあの子を 撃ち抜いてみせろよ 
ロキロキのロックンロックンロール


ある程度のスパンで活動し続けているバンドが、ちょっと今までと違った方向性の曲を出すと「一般人に媚び出した」だとか「方向性変わった」だとか、ブー垂れるファンがいる。

その気持ちは痛いほどわかる。だって今までずっと応援してきたのだもの。

反社会派気取っていたのにある日突然動物愛護とか語られたら、戸惑っちゃうよね。

極端な話ですが・・・。

薄っぺらいラブソングでもいい 

現実見ちゃった青年がなんとか歌い続けていくために、音楽を続けていくために、もがいて試行錯誤しているフレーズな気がする。

大衆に響く音楽でなくちゃ、命は短いんだ!歌え!という魂のこもった歌詞である。

お茶を濁してちゃ 満足できない 
スタジオに運ばれた スロートコートは 
安心不安心 プレッシャーでいっぱい 
「実は昨夜
きのうから風邪で声が出ません」

は? は? は? は?

はぁ… 
寝言は寝て言え ベイビー(ベイビー) ベイビー(ベイビー)

死ぬんじゃねぇぞ お互いにな!!


また場面転換して、青年がさらに音楽を続けて年をとった日のことが描写されている。

安心不安心 プレッシャーでいっぱい 

今までとは規模の違うライブハウスで歌うことになって、緊張しているのかな?という印象を受ける。

体の不調も相まって、ライブが成功するかどうか不安・・・といった青年の心情が現れているようだ。

風邪引いてる?だから歌えない?甘ったれんな!ここまできたんだろ、ばやかろう!と心の声が飛び出して

寝言は寝て言え ベイビー(ベイビー) ベイビー(ベイビー)

という歌詞につながっているように思える。

歌詞が最後に近づけば近づくほど、少年が成長していく様子が描写されている、と私は推測する。

ロキロキのロックンロックンロール 
かき鳴らすエレクトリックギターは 
Don’t Stop! Don’t Stop!

 さあ君の全てを 曝け出してみせろよ 
ロキロキのロックンロックンロール

ロキロキのロックンロックンロール

死ぬんじゃねえぞ

死ぬんじゃねえぞ

死にたかねえのはお互い様!

最後は原点回帰。

無我夢中で音楽をかき鳴らす青年もとい少年の情景を想像させて、ロキはクローズする。

ある一人の少年・ここではロキと呼ぶことにしよう。

ロキの音楽人生がロキという曲に凝縮されているような、そんな気がする。



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